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屈辱

美姫たち夫妻を家に招いた日。


明人を本気で怒らせてしまった。


美姫に浮気のことを話しただけで、ここまで怒られるとは思わなかった。


とにかく、今は明人を落ち着かせなければならない。


「お願いだから、落ち着いて」


「どんだけ人を馬鹿にすれば、気が済むんだよ!!」


そう叫び、明人は家を飛び出していった。


扉が大きな音を立てて閉まる。


「どうしよう……」


どうやら、明人のプライドをひどく傷つけてしまったらしい。


「もう……どうすればいいのよ」


夏未は呆れたように呟いた。



それから一時間ほどして、明人が帰ってきた。


夏未はすぐに駆け寄った。


しかし、明人はまともに夏未を見ようともしない。


夏未は、二人が謝ってたと伝える。


何を言えば明人が納得するのか。


どうすれば、この場を無事に終わらせられるのか。


夏未が考えていたのは、それだけだった。


「俺、これから好きに生きてもいいかな」


明人が引き捨てるように言う。


夏未には、その言葉の意味がよく分からなかった。


それでも、今は合わせておいた方ががいい。


「もちろん。明人の人生なんだから、好きにしていいよ」


夏未は安心させるように笑う。


「なんなら、明人が浮気したって、私はついていくから」


明人の顔が固まった。


「お前と一緒にしないでくれる?」


しまった。


さすがに今のは、言い方を間違えた。


「……ごめん」



それ以来、明人は好き嫌いをはっきり口にし、夏未に遠慮しなくなった。


まあ、子どもが拗ねているようなもの。そのうち元に戻るだろう。


数日後。


浮気を告白した日から、二週間が過ぎていた。


いろいろあったが、生活は少しずつ戻ってきている。


夏未には、そんな実感があった。


ある日、明人に陽介の写真を送ってほしいと頼まれた。


二人でスマートフォンを覗き込む。


顔が近い。


それだけで、夏未の胸は高鳴った。


そのまま明人の手をつかみ、胸へ顔を埋める。


明人は少し遅れて、夏未の背中へ腕を回す。。


明人に抱きしめられている。


やっとここまで戻れたんだ。


夏未はそう思っていた。



その日の夜。


夏未の方から明人をベッドに誘った。


ついにこの日が来た。


私を許した明人に抱かれる。


これで明人の愛が確認できる。


しかし、夏未の想像と現実は真逆のものとなった。


「……ごめん、夏未」


「反応しないんだ」


明人は、ため息を吐くように謝った。


夏未は一瞬、何を言われたのか分からなかった。


今までの人生で、こんなことは一度もなかった。


自分から誘って、拒まれる。


夫は、私で反応しない。


それは、抱きたくないっていってるのと同じこと。


『 屈辱 』


それ以外の言葉が思いつかなかった。


「仕方ないね」


夏未は笑ってみせた。


そう言わなければ、今度は自分の方が壊れてしまいそうだった。


「シャワーを浴びてくる」


そう言って、明人は寝室を出ていった。


夏未の目から涙がこぼれた。


いつになったら。


いつになったら、明人はもとに戻るのだろう。


もしかして、明人はもう私を愛していないのではないか。


夏未は慌てて、その考えを打ち消した。


明人が自分を求めなくなるなんて、ありえない。


しばらくして、明人がシャワーから戻ってきた。


夏未は寝たふりをした。


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