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胸糞の告白

シャワーが終わり二階の寝室へ上がる。


夏未はベッドに入り、明人の隣に横になった。


テレビでは誰かが笑っている。


けれど、内容は何も頭に入らなかった。


和宏とは終わったんだ。


後は、このまま黙っていればいい。


そうすれば、明日からは何事もなかったように暮らせる。


そう思った。


それでも、胸の奥に芽生えた欲求は消えなかった。


知りたい。


明人は、私を許すほど愛しているのか。


それとも…。


「テレビ、消していい?」


明人が言った。


「うん。見てないから消して」


テレビが消え、部屋が静かになる。


―― 今なら、まだやめられる。


―― 言っちゃダメ。


「ねぇ」


「もし私が、浮気してたらどうする?」



気がついた時には、すべてを話してしまっていた。


今日、嘘をついて浮気相手とホテルへ行ったこと。


何年も前から不倫していたこと。


もう二度と会わないと決めたこと。


言ってしまった。


明人の表情が、絶望へ変わっていく。


明人が私を責める。


当然だった。


そして、和宏のことを何度も尋ねてくる。


誰なんだ。名前は。今どこにいる。


怒り狂う明人。


私を抱いた男が許せないのだ。


それほど、明人は私を愛してくれている。


そう思うと、夏未の胸は締めつけられた。


申し訳ないなんて気持ちは一粒もなかった。


明人が可哀想……。


私のためにこんなに傷ついている。


今すぐ抱きしめてあげたいくらい切ない。


「もう二度としない」


「明人の方が好き」


それでも、明人の表情は変わらなかった。


夏未は、もっと伝えなければと思った。


「私は、明人に抱かれてる方が好き」


どんな言葉を重ねても、明人は喜んでくれなかった。


やがて明人は、低い声で言った。


「一人になりたい」


夏未が名前を呼んでも、明人は振り返らなかった。


寝室の扉が閉まる。


夏未はしばらく、その扉を見つめていた。


静かになった部屋で、ようやく自分の呼吸が荒くなっていることに気づく。


どうしよう…。


夏未は両手で顔を覆った。


何で私は言ってしまったんだ。


そんな後悔が、初めて胸に浮かんだ。


今さら追いかけても、もっと怒らせるだけかもしれない。


今は、一人にしておいた方がいい。


絶体に大丈夫。


明人が私から離れてしまう事なんてありえない。


夏未は、そう自分に言い聞かせた。



数時間後


明人が戻ってきたのは、夜が明ける少し前だった。


寝室のドアを叩く音に、夏未は身体を起こす。


よかった。帰ってきた。


その事実だけで、胸の奥に張りつめていたものが少し緩んだ。


けれど、ドアを開けた明人の顔を見て、何も言えなくなる。


ひどく疲れていた。


目は赤く、いつもの優しさも消えている。


「……話そうか」


夏未は小さく頷く。


二人はテーブルを挟んで座った。


黙ったまま目を伏せている明人を見ていると、本当に自分から離れていくような気がした。


「私は……明人が許してくれるなら、今までどおり一緒にいたい」


違う。今までどおりで済むとは思っていない。


それでも、ほかに何と言えばいいのか分からなかった。


明人の目から涙が落ちた。


それを見て、夏未の胸が痛む。


夏未は席を立ち、明人の腕にしがみつく。


「ごめん。ごめんね」


しばらくして、明人が小さな声で言った。


「許すよ……」


その言葉を聞いた瞬間、身体から力が抜ける。


ーーよかった。


やっぱり明人は、自分を許してくれた。


夏未は強く抱きつく。


「ありがとう……本当にごめんなさい」


安堵のあまり、言葉が口からこぼれる。


「明人なら、そう言ってくれるって信じてた」


しかしそれは、今の明人に言ってはいけない言葉。


夏未にはそれに気づくことはできなかった。



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