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和宏との会話②

監禁四日目


自宅。


明人はスマートフォンのメモに、和宏へ聞くことを書き出していた。


「楽しみだな。今日は何を聞こうかな」


「ねえ、ちょっといい?」


突然、夏未に声をかけられた。


明人は身体を震わせ、慌てて画面を閉じる。


明人は待ち受け画面を夏未へ向けた。


「あ、そうそう、これ見てよ。かわいくない?」


画面には、ハッピーの写真が映っていた。


夏未は無表情のまま、それを見つめる。


「犬を飼えて嬉しいのは分かるんだけどさ」


「うん?」


「犬の世話ばかりしてないで、陽介の面倒も見てよ」


たしかに、この三日間は和宏のことで手いっぱいだった。


夏未が怒るのも無理はない。


「じゃあ、今日は一日、俺が見るよ。それでいいだろ?」


夏未は何も言い返さなかった。


明人は陽介を抱き上げ、そのまま外へ出た。


玄関の扉を閉める。


「悪いな、和宏」


陽介を抱いたまま、明人は小さく呟いた。


「今日は飯抜きだ」



監禁五日目。


地下室。


「昨日は悪かったな。夏未のやつが、子どもの世話をしろってさ」


和宏は、明人が差し出した水を一心不乱に飲んでいた。


「今日は、ゆっくり話せるぞ」


飲み終わると、明人は和宏の身体を起こした。


「よし。じゃあ、三つ目の質問」


和宏は冷や汗をかきながら俯いた。


「二人は、どのくらいの頻度で会ってた?」


「多いときで、二週間に一度くらいだ」


「会社の帰りに?」


「ああ」


「けっこう会ってるな」


「待ってくれ。ずっと続いていたわけじゃない」


和宏は慌てて続けた。


「別れたり、また会ったりを繰り返していたんだ。五年とはいっても、実際に会った回数は少ない」


「ふうん」


明人は、つまらなそうに和宏を見る。


「そうだ。明人君と結婚する前は会ってなかった。本当だ」


「……」


「お互い、結婚を機にやめようと話したんだ」


「なるほど」


明人はスマートフォンを置いた。


「じゃあ、聞くけどさ」


「なんだ?」


「どうして、僕と夏未の結婚式に来たんだ?」


和宏が黙る。


「しかも、スピーチまでして」


「それは……」


しばらくして、和宏は小さな声で答えた。


「夏未が幸せになるところを、見たかったからだ」


明人は天井を見上げた。


やがて、和宏へ視線を戻す。


「狂ってるのは、お前らの方かもな」


和宏は俯いた。


「まあ、いいや」


明人は笑顔で立ち上がった。


「楽しかったよ。また明日、話そう」


そう言うと、和宏の口元へドーナツを押しつけた。


和宏は無我夢中でかじりつく。


明人は地下室を出て、扉を閉めた。


工房の外へ出ると、ハッピーが駆け寄ってきた。


手についた砂糖を、ぺろぺろと舐める。


「やめろよ、ハッピー。くすぐったいって」


明人は笑いながら、ハッピーの頭を撫でた。


少し離れた場所から、夏未がその姿を見ていた。


「また、犬と遊んでるのね」


不満そうに鼻を鳴らすと、陽介を抱えて自宅へ戻っていった。


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