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監禁生活

夏未は、大型犬のハッピーを嫌がった。


予想どおりだった。


ハッピーを工房で飼えば夏未は近づきにくくなり、ロープや鎖も犬のためだと言い訳できる。


明人は地下室へ目を向けた。


和宏を座らせる椅子も必要だった。


簡単には動けず、長い時間座っていられる椅子。


おそらく、自分の最後の作品になるだろう。


明人は作業台に図面を広げた。


鉛筆を手に取り、最初の線を引く。


そのとき、ふと思いついた。


――そうだ。


――せっかくだから夏未にも手伝わせてやろう。


明人は、にやりと笑った。



監禁二日目。


和宏は地下室の床で、芋虫のようにうごめいていた。


手足を縛られ、起き上がることさえできない。


――夏未の旦那、完全に狂ってやがる。


そのとき、頭上で扉が開いた。


暗かった地下室へ、眩しい光が差し込む。


階段を、明人がゆっくりと下りてきた。


片手には、手斧を持っている。


「ひっ……」


和宏の身体が硬直した。


明人は何も言わず、手斧を床へ置いた。


そして和宏の身体を抱え、壁際へ座らせる。


「悪いな。殺風景で」


明人は地下室を見回した。


「でも、君のために特性の椅子を作ることにしたよ」


嬉しそうに笑う。


「楽しみにしてて」


「俺を……どうする気だ」


和宏は震える声で尋ねた。


「どうしようかな」


明人は楽しそうに答えた。


「ふざけるな!これは犯罪だぞ!」


和宏の叫び声が地下室に響く。


明人は気にする様子もなく、和宏の正面へ腰を下ろした。


「僕はね、あんたと話がしたいんだ」


「話……?」


「そう。たくさん話して、仲良くなりたい」


明人は和宏の目をまっすぐ見つめた。


「あんたが生き残る方法は、一つしかない」


笑顔が消える。


「僕と仲良くなって、生かしてもらうことだ」


和宏は力任せに腕を動かした。


「ぐっ……外せ! 外せよ!」


何度身体を捻っても、ロープは緩まない。


明人はその様子をしばらく眺めていた。


「もしかして、すぐに帰れるとか思っているのか?」


明人は鋭い目つきで和宏を見る。


「ど、どういうことだ」


「僕の気が済むまで何日でも、ここに閉じこめるってことだよ」


和宏の顔が青くなった。


「わかったら、家族に電話しろ」


明人は和宏のスマートフォンを取り出した。


「とうぶん帰れないって自分の口で言うんだ」


「少しでも疑われたら、斧で頭をかち割る」


和宏は明人を見る。


明人の鋭い目つき。


従わなければ本当に殺される。和宏はそう思った。


動けない和宏に代わり、明人が操作し電話をかける。


電話はすぐにつながった。


『もしもし、あなた?』


『ちょっと一晩帰らないなら連絡くらいしてよ』


「ああ、すまない。連絡しようと思ったんだが」


『今、どこにいるの?』


少しの沈黙。


明人が目で合図をする。


「実は、とうぶんの間、一人になりたいんだ」


『え?どういうこと』


「家にも会社にも戻りたくないんだ。……探さないでくれ」


少しの沈黙。


『ねえ、もしかして女がいるんじゃないの?』


『前々から怪しいとおもってたけど。そういうことでしょ?』


和宏は焦るように言った。


「違う。そんなんじゃない」


和宏の妻は返事をしない。


「……子どもたちを。子どもたちを宜しく頼む」


『はあ? 何、勝手なこと言ってるの!』


受話器の向こうで怒りに満ちた声が聞こえる。


『帰ってきたくないなら、好きにしなさいよ!』


相手から電話を切られた。


和宏は、しばらくスマートフォンを見つめていた。


明人が手斧を床に降ろす。


「なかなか鋭い奥さんだな」


明人はスマートフォンの電源を切りながら言った。


和宏は何も答えなかった。


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