消えた同僚
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ヘスペリアに一時帰還した。
六週間ぶりの大学都市。白壁の街並みは変わっていなかったが、カエルの目には——以前とは違うものが映っていた。図書館の塔、講義棟の回廊、石畳の広場。この街の中心にマグヌスの研究室がある。そしてその研究室の奥に——鍵のかかった部屋がある。
荷を自室に置き、すぐに動いた。
アウレリウスを探す。留学生寮の三階。扉をノックすると、見慣れた金髪の青年が開けた。
「カエル。帰ったのか」
アウレリウスの目が、カエルの顔を一瞥して曇った。何かの変化を——読み取ったのだろう。カエル自身、鏡を見ていないが、碑文の間で泣いた夜以来、自分の目が変わったことには気づいていた。
「入れ」
アウレリウスの部屋は質素だった。寮の標準的な個室に、西方ルクスの聖典が一冊、机の上に置かれている。それ以外に私物は少ない。
「頼みがある」
「言ってみろ」
「大学の人事記録にアクセスしたい。師匠の——マグヌス教授の過去の同僚について」
アウレリウスの眉が上がった。
「人事記録は教員と上位留学生にしかアクセス権がない。俺の留学生特権でなら——」
「借りる」
アウレリウスはしばらくカエルを見つめていた。何かを問いかけようとして——やめた。
「わかった。だが理由は後で聞くぞ」
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大学の管理棟。地下書庫。
アウレリウスの留学生証で閲覧室に入り、マグヌスの教員ファイルを引き出した。
カエルが探していたのは、マグヌスの空白期間——3155年から3170年——の行動記録だった。
ファイルを開く。
3155年以前の記録は詳細だった。講義担当、研究プロジェクト、共同研究者の名前。しかし3155年を境に——記録が途切れる。
——「3155年〜3170年:研究休暇。詳細:機密」
それだけだった。十五年分の活動が「研究休暇」と「機密」の二語で片付けられている。
カエルは次に、マグヌスの当時の同僚を調べた。3155年以前にマグヌスと同じ学部に在籍していた教員のリスト。
一人ずつ名前を追った。
ドレイク・ハーヴェスト——「3157年退職。転出先不明」
マリオン・グレイ——「3159年死亡。病死」
テオドール・ヴァン——「3161年転出。詳細不明」
リュシアン・ベイル——「3163年退職。理由:個人的事情」
一人、また一人。マグヌスの同僚たちが——消えていた。退職、転出、死亡。理由は曖昧で、転出先は不明。十年間で、マグヌスの周囲にいた学者のほぼ全員がいなくなっている。
偶然では——説明がつかない。同時に、五人もの学者が不自然に姿を消しながら、大学がいかなる組織的追及も行っていない事実にカエルは戦慄した。マグヌスの学内における特権的な権力が圧殺したのか、あるいは大学当局すら口を出せない裏機関の隠蔽工作か。
カエルは名簿の最後に、一つだけ具体的な転出先が記された名前を見つけた。
——ヴェリウス。3162年転出。転出先:鉄の教会カイロス研究棟。
「生きている」
声に出した。名簿の中で——唯一、現在の所在が確認できる人物。
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閲覧室を出て、アウレリウスと合流した。
「見つかったか」
「……ああ」
カエルは歩きながら、考えを巡らせていた。「フクロウ」の正体は、かつての母の同志であり、マグヌスの同僚の誰かなのではないか。しかし彼らは不自然に消失している。まるで——「フクロウ」の正体を知りすぎた人間が、一人ずつ排除されたかのようなパターン。
「アウレリウス」
「うん」
「——母さんの死について調べている」
足を止めた。アウレリウスも止まった。
「犯人の手がかりが——見えてきた」
アウレリウスの目が鋭くなった。西方ルクスの聖騎士候補生の目だ。
「誰だ」
「……まだ言えない。確定していない」
「カエル——」
「もう少しだけ時間をくれ。確かめなければならないことがある」
アウレリウスはカエルの目を見つめていた。何かを読み取ろうとしている。カエルの目の奥にある——あの「凍りつくような」ものを。
「わかった。だが——一人で抱えるなよ」
「ああ」
嘘だった。カエルはすでに一人で抱えていた。
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自室に戻り、次の行動を整理した。
ヴェリウス。鉄の教会カイロス研究棟。マグヌスの元同僚で——空白期間を知る唯一の生存者かもしれない。
この人物に会わなければならない。
証拠が消される前に——ヴェリウスまで「消される」前に。
カエルは机の上に地図を広げた。カイロスの鉄の教会研究棟は、鉄背山脈の東麓にある。ヘスペリアから隊商に合流すれば、十日で到着できる。
暗号メモ正本を隠し場所から取り出し、一度目を通した。「フクロウへ。渡せない」の文字が、蝋燭の光に浮かび上がる。
——ヴェリウスに会いに行く。急がなければ——証拠が消される。




