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第85話:5年後の世界

それから、5年の月日が流れた。



カフェ・ミルフォードは――


今や世界中に知られる、料理の聖地となっていた。



「いらっしゃいませ!」



店内は、相変わらず満席。


予約は、半年待ちになっている。



厨房では――



「ケント、オムライス3つ!」



「了解!」



俺は、36歳になった。


でも、料理への情熱は変わらない。



「リナ、前菜お願い」



「はーい」



リナも、27歳。


氷竜の力を完璧に使いこなし、俺の最高のパートナーだ。



「ケント、新しいお客さん」


セシリアさんが教えてくれた。



「分かりました」



厨房から出ると――


見慣れない若者が、カウンターに座っていた。



20歳くらいだろうか。


料理人の服を着ている。



「いらっしゃいませ」



「あの……ケント師匠ですか?」



「師匠……?」



「はい。僕、カイと言います」



若者は、深く頭を下げた。



「ソラ師匠の弟子です」



「ソラの!?」



「はい。ソラ師匠から、よく話を聞いていて」



「ケント師匠のもとで、修行したいと思って来ました」



「……」



ソラの弟子か。



ソラは今、王都で『ミルフォード分店』を経営している。


大繁盛で、予約は3ヶ月待ちだと聞いている。



「ソラは、元気か?」



「はい。毎日、忙しそうですが」



「とても楽しそうです」



「そうか」



「ケント師匠から学んだ『心を込めた料理』を」


カイは続けた。



「僕も、学びたいんです」



「……分かった」



俺は頷いた。



「受け入れよう」



「本当ですか!?」


カイの顔が、輝いた。



「ただし、厳しいぞ」



「大丈夫です!覚悟はできてます!」



「よし」


---


**その日の夕方。**



閉店後、久しぶりの来客があった。



「ケント師匠!」



扉を開けて入ってきたのは――



「エマ!」



エマは、22歳になっていた。


立派な料理人に成長している。



「お久しぶりです!」



「エマ、元気だったか」



「はい!」



エマは今、帝国で『ミルフォード料理学校』を開いている。


生徒は100人以上。


帝国でも評判の学校だ。



「学校は、順調か?」



「はい。生徒たちが、みんな頑張ってくれています」



「そうか」



「でも――」


エマは、少し寂しそうに言った。



「やっぱり、ここに戻りたくなって」



「ケント師匠の料理が、食べたくて」



「そうか。じゃあ、何か作ろう」



「本当ですか!?」



俺は、厨房に入った。



エマのために、オムライスを作る。



5年前と同じ。


でも、心はもっと込めて。



エマの成長を、喜びながら。



「お待たせ」



オムライスを、エマの前に置く。



「いただきます」



一口。



「――」



エマの目から、涙が溢れた。



「美味しい……」



「やっぱり、ケント師匠の料理は最高です……」



「この味……忘れてなかった……」



エマは、泣きながら食べ続けた。



「ありがとうございます……」


---


**翌日。**



さらに懐かしい顔が訪れた。



「師匠、ただいま戻りました」



「リオ!」



リオは、25歳になっていた。


凛々しく、たくましくなっている。



「世界中を旅してきたんだろ?」



「はい」



リオは、卒業後5年間――


世界中を旅して、様々な料理を学んできた。



新大陸、東方の国、南の島々――



「たくさんのことを、学びました」



「そうか」



「でも――」


リオは、真剣な目で言った。



「やっぱり、ケント校長の料理が一番だと分かりました」



「技術じゃない」



「心だと」



「……」



「これから、僕――」


リオは宣言した。



「この村で、修行させてください」



「もう一度、基本から学び直したいんです」



「分かった」



俺は頷いた。



「一緒に、頑張ろう」



「はい!」


---


**その夜。**



店に、ソラ、エマ、リオ、そして新人のカイが集まった。



久しぶりの再会。



「みんな、元気そうだな」



「師匠も、全然変わってないですね」


ソラが笑った。



「そうですね。相変わらず、優しくて」


エマも。



「強くて」


リオも。



「かっこいいです」


カイも続けた。



「はは、褒めすぎだ」



みんなで、食卓を囲む。



リナが作った料理が、並んでいる。



「いただきます」



温かい雰囲気。



「ねえ、みんな」


リナが言った。



「これから、どうするの?」



「僕は――」


ソラが答えた。



「王都の店を続けます」



「でも、時々ここに戻ってきます」



「師匠の料理を、忘れないために」



「私も」


エマが続いた。



「帝国の学校を続けます」



「でも、ケント師匠の教えを、ずっと伝えていきます」



「僕は――」


リオが言った。



「しばらく、ここで修行します」



「そして、いつか――」



「新大陸に、『ミルフォード』の店を開きます」



「世界中に、ケント校長の教えを広めたいんです」



「みんな……」



俺の目に、涙が浮かんだ。



「ありがとう」



「みんなが、俺の教えを守ってくれて」



「世界中に、広めてくれて」



「嬉しい」



「当然です」


ソラが言った。



「師匠の教えは、宝物ですから」



「私たちの、誇りです」


エマも。



「これからも、ずっと」


リオも。



みんなで、笑い合った。



窓の外を見ると、満天の星空。



「俺の料理が、世界を変えていく」



5年前に見た夢が、現実になっている。



でも――



「俺は、ここにいる」



「この村で、料理を作り続ける」



「それが、俺の幸せだから」



「うん」


リナが、優しく微笑んだ。



「私も、ずっとケントの側にいるよ」



「ありがとう、リナ」



新たな世代が育ち、巣立っていく。



でも、俺たちの日常は変わらない。



料理で、人を幸せにする――



それが、俺たちの生きる道。


---


(続く)



**※次回予告※**


5年の時を経て、再び集まった弟子たち。



しかし、平穏な再会は長く続かなかった――



「師匠、大変です!」



世界料理連盟から、緊急の要請が。



「世界料理サミットが、開催されます」



「各国の料理の代表が集まり」



「新たな料理の未来を決める会議です」



ケントは、代表として招待されるが――



そこで待ち受けていたのは、


予想外の提案だった。



「世界料理大臣に、就任してほしい」



ケントの答えは――



次回、第86話「世界料理サミット」


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