第71話:料理のデモンストレーション
中央のステージに、調理台が用意された。
「さあ、ケント」
アルフォンスさんが言った。
「何か一つ、料理を作ってくれ」
「お前の『心』が伝わる料理を」
「はい」
俺は、調理台に立った。
1000人以上の料理人が、見守っている。
「緊張するな……」
でも――
いつも通りでいい。
アルフォンスさんの言葉を思い出す。
「よし」
俺が作ることにしたのは――
オムライス。
シンプルだけど、俺が一番得意な料理。
リナに初めて作った、思い出の料理。
「まず、チキンライスから作ります」
鶏肉を切る。
玉ねぎを切る。
一つ一つ、丁寧に。
「料理は、準備が大切です」
「食材を、丁寧に扱う」
「それが、心を込めることの第一歩です」
観客たちが、真剣に見ている。
フライパンに油を引いて、鶏肉を炒める。
「火加減も大切です」
「強すぎると、焦げる」
「弱すぎると、旨みが出ない」
「適切な火加減で、丁寧に炒めます」
玉ねぎを加えて、さらに炒める。
ご飯を入れて、ケチャップで味付け。
「ケチャップは、少しずつ加えます」
「味を見ながら、調整する」
「これが、料理の基本です」
チキンライスが完成。
次に、卵を溶く。
「卵は、丁寧に混ぜます」
「空気を含ませるように」
フライパンにバターを溶かして、卵を流し込む。
「卵は、火加減が命です」
「強火だと、硬くなる」
「弱火だと、形が作れない」
「中火で、優しく混ぜながら」
半熟の状態で、チキンライスを包む。
「よし……」
綺麗な形のオムライスが、完成した。
ケチャップをかけて――
「完成です」
『調理の祝福』を込める。
```
【調理の祝福】が発動しました!
料理に『心の温もり・極大』『幸福感・大』『笑顔の力・中』『希望の光・微』が付与されました。
```
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「では、試食していただきます」
アルフォンスさんが、前に出た。
「私が、いただこう」
オムライスを一口。
「――」
アルフォンスさんの目が、見開かれた。
「これは……」
「美味しい……」
「シンプルなのに……」
「こんなに心が温かくなる……」
アルフォンスさんは、涙を流していた。
「これが……ケントの料理か……」
「技術も完璧だ」
「でも、それ以上に」
「心が、込められている」
アルフォンスさんは、観客に向かって叫んだ。
「みんな、見たか!」
「これが、本当の料理だ!」
「技術と心、両方が大切なんだ!」
会場が、拍手に包まれた。
その時――
観客席から、一人の男性が立ち上がった。
30代くらいだろうか。
鋭い目つき、自信に満ちた表情。
「待て」
その声に、会場が静まった。
「お前が、ケントか」
「はい……」
「俺は、カイザー」
男性は名乗った。
「新大陸の料理長だ」
「新大陸……」
新大陸――
この世界の、遥か西にある大陸。
未開の地で、独自の文化が発達しているという。
「お前の料理、確かに美味そうだ」
カイザーは、不敵に笑った。
「だが――」
「俺の料理の方が、上だ」
「……」
「料理対決をしよう、ケント」
「勝者が、真の料理人だ」
会場が、ざわめいた。
「カイザー様が……」
「新大陸最強の料理人が……」
「ケント、どうする?」
アルフォンスさんが聞いてきた。
「……」
俺は、カイザーを見た。
その目には、強い自信と――
料理への情熱があった。
「分かりました」
俺は答えた。
「受けます」
「よし」
カイザーは、満足そうに頷いた。
「明日、この会場で」
「テーマは『自由』」
「制限時間は3時間」
「お前の全力を、見せてもらうぜ」
そう言って、カイザーは去っていった。
「ケント……」
リナが、心配そうに見ている。
「大丈夫だよ」
俺は、笑顔で答えた。
「いつも通り、心を込めて作るだけだ」
でも――
内心、緊張していた。
カイザー――
新大陸最強の料理人。
どんな料理を作るのか。
明日、分かる。
---
**その夜。**
宿で、みんなと作戦会議。
「カイザーって、どんな人なんですか?」
ユウが聞いてきた。
「新大陸最強の料理人だ」
レオンさんが説明した。
「新大陸は、独自の食文化が発達している」
「この大陸にはない、珍しい食材や調理法がある」
「カイザーは、それを極めた料理人だ」
「強敵ですね……」
「ああ。だが――」
レオンさんは、微笑んだ。
「お前には、カイザーにないものがある」
「それは?」
「謙虚さと、優しさだ」
「カイザーは、自信家だ」
「自分の料理が最高だと信じている」
「でも、お前は違う」
「常に、食べる人のことを考えている」
「その違いが、勝敗を分けるかもしれない」
「……」
「ケント、頑張って」
リナが、励ましてくれた。
「私たちも、応援してるから」
「ありがとう」
「さあ、明日に備えて寝よう」
レイナさんが言った。
「はい」
でも――
なかなか眠れなかった。
明日の対決――
どうなるだろう。
「いや、考えすぎだ」
「いつも通りでいい」
「心を込めて、料理を作る」
「それだけだ」
そう自分に言い聞かせて、目を閉じた。
ーー第72話に続く




