第63話:第二の試練
翌日。
第二の試練が始まった。
「私の番だ」
マスター・ウィリアムが前に出た。
穏やかな笑顔の男性。
でも、その目には深い知性が宿っている。
「ケント君」
「はい」
「私の試練は――」
ウィリアムさんは、テーブルの上に食材を並べた。
「この食材だけを使って、料理を作ってほしい」
見ると――
トマト、バジル、モッツァレラチーズ、オリーブオイル、塩、黒胡椒。
「これは……」
「カプレーゼの材料だね」
レオンさんが言った。
「そう」
ウィリアムさんは頷いた。
「カプレーゼは、イタリア料理の基本中の基本」
「シンプルだからこそ、誤魔化しが効かない」
「素材の良さを引き出し」
「バランスを整え」
「美しく盛り付ける」
「その全てが試される」
「制限時間は1時間」
「さあ、始めてくれ」
---
俺は、食材を見つめた。
トマト、バジル、モッツァレラチーズ――
確かに、シンプルすぎる。
でも――
「シンプルだからこそ、心を込められる」
俺は、丁寧に調理を始めた。
トマトを薄く切る。
一枚一枚、同じ厚さに。
モッツァレラチーズも、同じように。
バジルは、丁寧に洗って水気を取る。
そして――盛り付け。
トマトとチーズを、交互に並べる。
円を描くように、美しく。
バジルを散らして、彩りを加える。
オリーブオイルを回しかけ、塩と黒胡椒を振る。
最後に――
『調理の祝福』を込める。
```
【調理の祝福】が発動しました!
料理に『素材の輝き・大』『調和の美・中』『シンプルの極み・中』が付与されました。
```
「完成しました」
---
ウィリアムさんが、カプレーゼを見つめる。
「……美しい」
一口、食べる。
「――」
ウィリアムさんの目が、見開かれた。
「これは……」
「素材が、生きている……」
「トマトの甘み、チーズのまろやかさ、バジルの香り」
「全てが、完璧に調和している……」
他の賢人たちも、試食する。
「本当だ……」
「シンプルなのに、深い……」
「これが、素材を活かすということか……」
ウィリアムさんは、満足そうに微笑んだ。
「ケント君」
「はい」
「君は、素材の声を聞ける料理人だ」
「素材が何を求めているか」
「どうすれば輝くか」
「それを理解している」
「合格だ」
「ありがとうございます」
「第二の試練、クリア」
アルフォンスさんが宣言した。
---
**午後。**
休憩時間に、リナと二人で話していた。
「ケント、すごいよ」
「まだ二つ目だよ」
「でも、順調でしょ?」
「ああ。でも――」
俺は、残りの賢人たちを見た。
「まだ、五人残ってる」
「大丈夫だよ」
リナは、俺の手を握った。
「ケントなら、絶対できる」
「……ありがとう」
その時――
リナの体が、淡く光った。
「リナ!?」
「え……?」
リナ自身も、驚いている。
「何、これ……」
光は、すぐに消えた。
「大丈夫か?」
「うん……でも、なんだろう……」
「体の中で、何かが……動いてる気がする……」
「……」
嫌な予感がした。
でも、リナは平気そうだ。
「気のせいかも」
リナは笑った。
「うん、そうだね」
でも――
俺の不安は、消えなかった。
ーー第64話に続く




