第49話:帝国への旅立ち
翌朝。
村の入り口には、豪華な馬車が停まっていた。
「すごい……」
純白の馬車。
金の装飾。
6頭立ての、立派な馬。
「これが、帝国の宰相専用馬車です」
オズワルドさんが説明してくれる。
「内装も、最高級の素材を使っています」
「恐縮です……」
「いえいえ。あなた方は、帝国の恩人になるのですから」
馬車の中を見ると――
柔らかいソファ、豪華な絨毯。
小さなテーブルまである。
「6人でも、ゆったり座れますね」
「ええ。帝国までは10日の旅ですから」
「快適に過ごしていただきたい」
---
「行ってきます、みんな!」
村人たちが、見送りに集まってくれた。
「ケント、頑張れよ!」
「皇帝を救ってこい!」
「必ず戻ってこいよ!」
「ケント師匠、絶対帰ってきてください!」
ソラが、手を振っている。
「ああ、必ず帰ってくる!」
馬車が動き出した。
村が、だんだん小さくなっていく。
「また、帰ってくるからな……」
心の中で、呟いた。
---
**馬車の中。**
「帝国について、教えていただけますか?」
ユウが、オズワルドさんに聞いた。
「もちろんです」
オズワルドさんは、地図を広げた。
「帝国は、大陸最大の国家です」
「東西2000キロ、南北1500キロ」
「広い……」
「人口は5000万人。首都アウグストには、100万人が住んでいます」
「100万人……」
リナが驚いている。
「軍事力も強大です」
「騎士団が10万人、魔法兵団が2万人」
「すごい戦力だな……」
レイナさんが唸った。
「ええ。ですが――」
オズワルドさんは、表情を曇らせた。
「今、帝国は内部から崩壊しつつあります」
「内部から……?」
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「皇帝陛下が倒れてから、派閥争いが激化しました」
オズワルドさんは説明を続けた。
「皇帝派――つまり、私たちの派閥」
「そして、第一皇子派」
「第二皇子派」
「貴族連合派」
「4つの派閥が、権力を争っているのです」
「複雑ですね……」
セシリアさんが言った。
「ええ。特に――」
「第一皇子派が、最も危険です」
「どういうことですか?」
「彼らは、皇帝陛下が亡くなることを望んでいます」
「そうすれば、第一皇子が即位できますから」
「……」
「つまり――」
オズワルドさんは、真剣な目で言った。
「皇帝陛下を救おうとする、あなた方を――」
「彼らは、妨害するでしょう」
「暗殺の危険性も?」
レイナさんが聞いた。
「ええ。十分にあり得ます」
重い空気が流れた。
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「でも、大丈夫です」
オズワルドさんは言った。
「私は、精鋭の護衛を用意しました」
「この馬車には、見えない場所に10人の騎士が随行しています」
「10人も……」
「それでも、油断はできません」
「帝国に着くまで、警戒を怠らないでください」
「分かりました」
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**1日目の夜。**
森の中で、野営することになった。
「テントは、私たちが張ります」
護衛の騎士たちが、手際よく準備する。
「夕食は、俺が作るよ」
「いいんですか?」
「ああ。せっかくだから」
俺は、持ってきた食材で料理を作った。
野菜のスープ。
肉のグリル。
簡単なサラダ。
でも、全てに『調理の祝福』を込めて――
「できたぞ、みんな」
「わあ、美味しそう……」
騎士たちも一緒に、食事を囲む。
「うまい……!」
「こんな美味しいスープ、初めて食べた」
「体が温まる……」
「疲れが取れていく……」
騎士たちが、感動している。
「これが、ケント殿の料理か……」
「噂以上だ……」
「ありがとうございます」
食事を通じて、騎士たちとも打ち解けることができた。
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**2日目。**
順調に旅は進んでいた。
昼過ぎ、街道沿いの町で休憩。
「少し、町を見て回ってもいいですか?」
リナが聞いてきた。
「ああ、でも護衛をつけて」
「はい」
リナとユウは、騎士2人と一緒に町へ。
俺とレオンさん、セシリアさんは――
町の市場を見て回った。
「この地方の食材、珍しいものが多いですね」
レオンさんが興味津々。
「ああ、帝国は広いから、地域ごとに特産品が違う」
「これは……山羊のチーズ?」
「ええ。この地方の名物です」
試食させてもらうと――
濃厚で、独特の風味。
「美味しい。これ、料理に使えそうだ」
「買っていきましょうか」
いくつか食材を買い込んだ。
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町の中央広場で――
何か騒ぎが起きていた。
「何だろう?」
「行ってみましょう」
人だかりの中心には――
一人の老人が倒れていた。
「大丈夫ですか!」
俺は駆け寄った。
「う……う……」
老人は、苦しそうに呼吸している。
「これは……魔力中毒だ」
セシリアさんが診断した。
「魔力中毒?」
「ええ。魔力を帯びた食べ物を、間違って食べたのでしょう」
「治せますか?」
「普通の治癒魔法では、無理です」
「でも――」
俺は考えた。
「料理で、治せるかもしれない」
「本当ですか!?」
「やってみる」
近くの店で、材料を借りた。
解毒作用のある薬草。
浄化の水。
魔力を中和する鉱石の粉末。
これらを混ぜて、スープを作る。
『調理の祝福』を込めて――
```
【調理の祝福】が発動しました。
料理に『解毒・極大』『魔力浄化・大』『生命回復・中』が付与されました。
```
「できた」
老人に、スープを飲ませる。
すると――
みるみる顔色が良くなっていった。
「おお……」
「治った……!」
周囲が、どよめいた。
「すごい……」
「魔力中毒が、こんなに早く……」
老人は、ゆっくりと起き上がった。
「あ、ありがとうございます……」
「いえ、お大事に」
この出来事が――
後に、帝国で大きな話題になるとは、まだ知らなかった。
ーー第50話に続く




