第35話:スキルの真実
ゴールドとの対決から3日後。
平和が戻った村で、俺は不思議な夢を見た。
『ケント……』
誰かが、俺の名を呼んでいる。
『お前の使命を、思い出せ』
「使命……?」
『調理の祝福は、ただのスキルではない』
「え……?」
『それは、この世界を救うための力だ』
「世界を救う……?」
夢の中で、光が溢れた。
そして――
目が覚めた。
「なんだ、今の夢……」
汗びっしょりだった。
「ケント、大丈夫?」
リナが心配そうに覗き込んでいる。
「ああ……夢を見ただけ」
「そう……」
でも、妙にリアルな夢だった。
「『調理の祝福』の真実……」
気になる。
その日の午後。
店に、見慣れない老人が訪れた。
白い髭、深い皺。
でも、その目は鋭く輝いている。
「お前が、ケントか」
「はい……」
「私は、賢者アルベルト」
「賢者……?」
「ああ。この世界の真理を探求する者だ」
アルベルトさんは席に座った。
「お前の『調理の祝福』について、話がある」
「俺のスキルが……?」
「そうだ。そのスキルは――」
アルベルトさんは真剣な目で言った。
「古代神が、この世界に残した『神器』の一つだ」
「神器……!?」
「ああ。かつて、この世界には7つの神器があった」
「戦いの剣、癒しの杖、知恵の書――」
「そして、『調理の祝福』」
「え……」
「古代神は、人々の幸せを願った」
「そのために、料理を通じて人を癒す力を残した」
「それが、お前のスキルだ」
アルベルトさんは続けた。
「だが、神器には使命がある」
「使命……?」
「ああ。世界の危機が訪れた時――」
「神器を持つ者は、世界を救わなければならない」
「世界の危機……」
「そうだ。そして、その危機が――」
アルベルトさんは声を落とした。
「近づいている」
「どういうことですか……」
「この世界の魔力バランスが、崩れつつある」
「このままでは、世界は滅びる」
「滅びる……!?」
「ああ。だが――」
アルベルトさんは俺を見た。
「お前の『調理の祝福』があれば、世界を救える」
「どうやって……?」
「究極の料理を作るんだ」
「神の祝福を受けた、完璧な料理」
「それを、世界の中心に捧げれば――」
「魔力バランスが回復する」
「……」
「ケント、お前には選択権がある」
アルベルトさんは言った。
「世界を救うか、それとも――」
「このまま平穏に暮らすか」
「でも、世界が滅びたら……」
「ああ。お前の大切な人たちも、消える」
「……」
「少し、考えさせてください」
「もちろんだ」
アルベルトさんは立ち上がった。
「3日後、また来る」
「その時、答えを聞かせてくれ」
その夜。
俺は、リナとユウに全てを話した。
「世界が……滅びる……?」
「そんな……」
二人は信じられない様子だった。
「でも、賢者が言ってたんだから、本当なんだと思う」
「ケント、どうするの?」
リナが聞いてきた。
「分からない……」
正直、迷っていた。
世界を救う――
それは、大きすぎる使命だ。
俺は、ただの料理人なのに。
「でも――」
ユウが言った。
「ケントさんなら、できると思います」
「ユウ……」
「だって、ケントさんの料理は、人を幸せにする」
「世界中の人を幸せにできたら、それが世界を救うことになるんじゃないですか?」
「……」
ユウの言葉が、心に響いた。
「そうだね……」
リナも頷いた。
「ケントの料理は、特別だから」
「みんな……」
「それに」
リナは笑った。
「私たちも手伝うよ」
「一緒に、世界を救おう」
「ありがとう……」
俺の心が、決まった。
「よし、やろう」
「世界を救う料理、作ってみせる」
ーー第36話へ続く




