第30話:料理十傑との対決
3日後。
村の広場には、大勢の人が集まっていた。
「すごい人だな……」
村人だけでなく、噂を聞きつけた冒険者、商人、貴族まで来ている。
「ケント、準備はいいか」
クラウディアが現れた。
「はい」
「ルールを説明する」
運営委員が登場した。
「今回の料理対決、テーマは『肉料理』」
「制限時間は2時間」
「審査員は、観客全員。多数決で勝敗を決める」
「準備はいいか?」
「はい」
「では――開始!」
俺は迷わず、材料を集めた。
「作るのは――ビーフシチュー」
シンプルだけど、心を込められる料理。
牛肉をしっかり焼き目をつけて、野菜と一緒に煮込む。
赤ワイン、トマト、ブイヨン――
じっくり、時間をかけて煮込む。
『調理の祝福』を込めて――
一方、クラウディアは――
「牛フィレ肉のウェリントン風」
高度な技術を要する、フランスの伝統料理。
牛肉をパイ生地で包んで焼く。
完璧な火入れ、美しい盛り付け。
「さすが……」
見ているだけで、そのレベルの高さが分かる。
2時間後。
両者の料理が完成した。
まずは、クラウディアの料理から試食。
「これは……芸術だ……」
「完璧な火入れ……」
「こんな美味しい肉料理、初めて……」
観客たちは絶賛していた。
「やばい……これは強敵だ」
次に、俺のビーフシチュー。
「これは……シチュー?」
「シンプルだな……」
懐疑的な声。
でも――一口食べた瞬間。
「――!!」
全員が、黙り込んだ。
「なんだ……この温かさは……」
「心が……満たされる……」
「母の料理を思い出す……」
「懐かしい……幸せだった日々が……」
次々と、涙を流す人が現れた。
「これが……ケントの料理か……」
「技術じゃない……心だ……」
「こんな料理……初めてだ……」
投票の時間。
「それでは、クラウディアの料理が良かった人、手を挙げてください」
半数ほどが手を挙げた。
「次に、ケントの料理が良かった人」
残りの半数が――いや、少し多めが手を挙げた。
「勝者――ケント!」
「やった……!」
会場が、拍手に包まれた。
「ケント!すごい!」
「やったね、ケント!」
リナとユウが駆け寄ってくる。
クラウディアは――
「……負けた」
呆然としていた。
「まさか……私が負けるなんて……」
「クラウディアさん」
俺は彼女に近づいた。
「あなたの料理、本当に素晴らしかったです」
「……」
「技術も、味も、完璧でした」
「でも、負けた」
クラウディアは悔しそうに言った。
「なぜだ……なぜ、私の完璧な料理が負けた……」
「それは――」
俺は優しく言った。
「あなたの料理には、心がなかったからです」
「心……?」
「はい。料理は、技術だけじゃない」
「食べる人のことを想って作る。その心が、人を感動させるんです」
「……」
クラウディアは、しばらく考え込んだ。
そして――
「分かった」
彼女は俺に手を差し出した。
「お前の勝ちだ。認めよう」
「ありがとうございます」
「だが、次は負けない」
クラウディアは不敵に笑った。
「私も、心を込めた料理を作れるようになる」
「その時、また勝負しよう」
「はい。お待ちしてます」
こうして、料理十傑の第七位、クラウディアとの戦いは終わった。
ーー第31話に続く




