第29話:十傑からの挑戦状
半年後。
カフェ・ミルフォードは、ますます繁栄していた。
リナとユウの料理の腕も上がり、俺が不在でも店を回せるようになった。
「ケント、今日は俺たちに任せて休んでいいよ」
リナが自信満々に言う。
「本当に?」
「うん。私たち、もう一人前だから」
「僕も頑張ります!」
ユウも張り切っている。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
久しぶりに、午前中から休むことにした。
村を散歩していると、見慣れない人物が立っていた。
長身の女性。
黒い革のコート、鋭い目つき。
「お前が、ケントか」
「はい……どなたですか?」
「私の名はクラウディア。『料理十傑』の第七位だ」
「料理十傑……?」
「知らないのか?」
クラウディアは呆れた顔をした。
「世界最強の料理人、10人の集まりだ」
「世界最強……」
「ああ。そして、私はお前に挑戦しに来た」
「挑戦……?」
クラウディアは、一通の手紙を差し出した。
「これは、美食結社からの正式な挑戦状だ」
「美食結社……ゼンさんの?」
「そうだ。お前は以前、ゼンを破った」
「それは……」
「だから、今度は私が来た」
クラウディアは不敵に笑った。
「料理対決をしよう。3日後、この村で」
「勝者は――世界最高の料理人として認められる」
「え……」
「断るなら、お前の店の評判は地に落ちる」
「美食結社が、『ケントは臆病者』と世界中に宣伝する」
「それは……」
俺は困った。
正直、面倒だ。
でも、店の評判が落ちるのは避けたい。
「分かりました。受けます」
「賢明な判断だ」
クラウディアは満足そうに頷いた。
「3日後、朝10時。準備しておけ」
そう言い残して、去っていった。
「料理十傑か……」
また、厄介なことになった。
その日の夜。
店でリナとユウに相談した。
「料理十傑の第七位……?」
「すごい人なんですか?」
「多分ね。世界最強の10人だって」
「ケント、大丈夫?」
リナが心配そうに聞いてきた。
「大丈夫……だと思う」
「不安そうだね」
「まあ、正直、プレッシャーはあるよ」
その時――
店の扉が開いた。
「やあ、ケント君」
入ってきたのは――レオンさんだった。
「レオンさん!?」
「手紙で言っていた通り、遊びに来たよ」
「よかった……ちょうど良かったです」
「どうかしたのかい?」
俺は、クラウディアのことを説明した。
「なるほど……料理十傑のクラウディアか」
「ご存知なんですか?」
「ああ。彼女は、フランス料理の天才だ」
レオンさんは真剣な顔をした。
「技術は完璧。味も完璧。そして、プレッシャーに強い」
「強敵ですね……」
「ああ。でも――」
レオンさんは微笑んだ。
「君には、彼女にないものがある」
「それは?」
「心だよ」
レオンさんは俺の肩を叩いた。
「クラウディアの料理は完璧だが、冷たい」
「技術の見せ物に過ぎない」
「でも、君の料理は違う。温かい」
「……」
「だから、自信を持て」
「ありがとうございます」
「さあ、準備を手伝おう」
レオンさんの協力で、3日間みっちりと練習した。
ーー第30話に続く




