第28話:帰郷、そして未来へ
王都での仕事を全て終えて、俺たちは村に帰ってきた。
「ただいま!」
「おかえり、ケント!」
村人たちが出迎えてくれた。
「今回も色々やったらしいな」
「料理学校で講演したんだって?」
「魔法料理研究所にも協力したとか」
「すごいぞ、ケント!」
みんな、誇らしげに笑っている。
「ただいま、みんな」
「さあ、明日からまた店を開けよう」
リナとユウが言った。
「うん!」
「頑張ります!」
翌日、カフェを再開した。
「久しぶりの営業だな」
開店と同時に、お客さんが殺到した。
「ケント、オムレツセット!」
「俺はハンバーグ!」
「新作の料理はないの?」
嬉しい悲鳴だ。
「はい、ただいま作ります!」
厨房で料理を作りながら、俺は思った。
『ここが、俺の居場所だ』
王都での華やかな生活も楽しかった。
でも、この小さなカフェで、お客さんと向き合いながら料理を作る――
これが、一番幸せだ。
「ケントさん、野菜切り終わりました」
「ありがとう、ユウ」
「ケント、お客さん増えたよ」
「了解、リナ」
3人で協力して、次々と料理を提供する。
お客さんの笑顔を見るたびに、心が満たされる。
「これが、俺の料理だ」
その夜。
閉店後、3人で屋上に上がった。
星空が、綺麗だった。
「ねえ、ケント」
リナが言った。
「これからも、ずっとこうやって、一緒に店をやっていこうね」
「ああ、もちろん」
「僕も、ずっとここにいたいです」
ユウも言った。
「ありがとう、二人とも」
俺は空を見上げた。
前世では、ブラック企業で疲弊していた。
毎日が、苦痛だった。
でも――この世界に来て、全てが変わった。
料理を作る喜び。
大切な仲間。
お客さんの笑顔。
「幸せだな……」
「ケント、笑ってる」
「そりゃ、幸せだからね」
「えへへ、私も幸せ」
「僕も!」
3人で、笑い合った。
それから数ヶ月。
カフェ・ミルフォードは、ますます発展した。
村を訪れる旅人が増え、店は連日満席。
「ケントさん、支店出さないんですか?」
お客さんに聞かれることもあった。
「いや、ここだけで十分です」
「そうなんですか?」
「ええ。俺は、一人一人のお客さんと向き合いたいんです」
「支店を出したら、それができなくなる」
「なるほど……」
「だから、ここだけで、丁寧に料理を作り続けます」
それが、俺のスタイルだ。
ある日、ギルバートさんから手紙が届いた。
『ケント殿
お元気でしょうか。
来年の料理祭、ぜひ審査員として参加していただけませんか。
前回の優勝者として、後輩たちにアドバイスをいただきたいのです。
料理ギルド幹部
ギルバート』
「審査員か……」
これも、面白そうだ。
「行ってみようかな」
また別の日、セシリアさんから手紙。
『ケント
元気にしてる?
私、最近料理を習い始めたの。
いつか、あなたのカフェで働かせてもらえないかしら?
もちろん、給料はいらないわ。
料理を学びたいだけなの。
セシリア・フォン・アルトリア』
「セシリアさんが、うちで働く……?」
想像すると、面白い。
「返事、書いておこう」
そして、レオンさんからも手紙。
『ケント君
君の料理、また食べたくなった。
近々、そちらに遊びに行ってもいいかな?
今度は、君に私の料理も食べてもらいたい。
レオン・ヴァレンティーノ』
「レオンさんが来る……!」
楽しみだ。
こうして、俺の周りには、たくさんの繋がりができた。
村の仲間たち。
王都の知人たち。
竜国の友人たち。
そして――これから出会うであろう、新しい人たち。
「これから、どんな未来が待ってるんだろう」
分からない。
でも――一つだけ、確かなことがある。
『俺は、料理を作り続ける』
大切な人たちのために。
食べる人を幸せにするために。
それが、俺の生きる道だ。
「さあ、明日も頑張ろう」
リナとユウに声をかける。
「うん!」
「はい!」
3人で、明日への準備を始めた。
辺境の村の、小さなカフェ。
でも――ここには、たくさんの幸せが詰まっている。
これからも、この場所で、料理を作り続けていく。
お客さんの笑顔のために――
ーー第29話に続く




