第27話:魔法料理研究所
講演から数日後。
王都に滞在している間に、別の依頼が舞い込んだ。
「ケント殿、お時間よろしいでしょうか」
訪ねてきたのは、白衣を着た老人。
「あなたは……?」
「私は、王立魔法料理研究所の所長、アルフレッドです」
「魔法料理研究所……?」
「はい。料理と魔法の関係を研究する、特殊な機関です」
アルフレッドさんは、興奮気味に言った。
「あなたの『調理の祝福』について、ぜひ研究させていただきたい!」
「研究……ですか」
「はい!あなたのスキルは、極めて稀有です」
「料理に魔法効果を付与できる――これは、料理学と魔法学の融合です」
アルフレッドさんは続けた。
「もし、あなたのスキルのメカニズムが解明できれば――」
「誰でも、魔法効果のある料理を作れるようになるかもしれません」
「誰でも……?」
「そうです。それは、料理界の革命です」
「……」
正直、迷った。
自分のスキルを研究される――
それは、少し怖い。
「大丈夫です。危険なことは一切しません」
アルフレッドさんは保証した。
「ただ、料理を作っている時の魔力の流れを測定するだけです」
「魔力の流れ……」
「はい。あなたが料理を作る時、特殊な魔力が発生しているはずです」
「それを測定して、分析したいのです」
「分かりました。協力します」
「本当ですか!ありがとうございます!」
翌日、魔法料理研究所を訪れた。
「こちらです」
案内されたのは、厨房のような実験室。
「ここで、普段通りに料理を作ってください」
「はい」
俺は、シンプルなオムレツを作り始めた。
周囲には、魔法測定器がたくさん設置されている。
「興味深い……」
アルフレッドさんが、測定器を見ながら呟いている。
「魔力が……こんなにも……」
オムレツを完成させると――
「すごい……!」
アルフレッドさんが叫んだ。
「あなたの料理、完成の瞬間に膨大な魔力が発生しています!」
「そうなんですか?」
「はい!しかも、この魔力は――愛情のエネルギーです」
「愛情のエネルギー……?」
「そうです。あなたが料理に込めた想いが、魔力に変換されているんです」
アルフレッドさんは興奮していた。
「これは……革命的な発見です」
「つまり、心を込めれば、誰でも魔法効果のある料理が作れる?」
「理論上は、可能です」
「ただし――」
アルフレッドさんは続けた。
「あなたほど強い想いを持っている人は、稀です」
「あなたの『調理の祝福』は、その想いを増幅するスキルなのでしょう」
「なるほど……」
「ケント殿、あなたは特別です」
アルフレッドさんは真剣に言った。
「あなたの料理は、魔法を超えています」
「……」
「これからも、その心を大切にしてください」
「はい」
研究所での測定は、1週間続いた。
様々な料理を作り、データを取った。
そして――
「ケント殿、ありがとうございました」
最終日、アルフレッドさんが言った。
「おかげで、貴重なデータが取れました」
「お役に立てて、よかったです」
「これをまとめて、論文にします」
「あなたの名前も、共著者として載せますね」
「え、いいんですか?」
「もちろんです。これは、あなたの功績です」
アルフレッドさんは微笑んだ。
「いつか、『魔法料理学』という新しい学問が生まれるかもしれません」
「その時、あなたは創始者の一人です」
「そんな、大げさな……」
「いいえ、本当です」
こうして、俺は魔法料理研究にも貢献することになった。
ーー第28話に続く




