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愛をこの手に、弔い花を捧げましょう~死に戻り王女の幸せな復讐劇~  作者: 玉響なつめ
第五章

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ろくでなしに乾杯!

 案の定、メイドたちに頼めば招待状を送ったリストはすぐに手に入った。

 そもそもがロレアヌスの派閥しか呼んでいないところがなんとも姑息ではあるが、派閥の結束を求めるのであれば確かに間違いでもない。


 派閥の結束を盾にされれば確かに彼女たちに断るのは難しい。

 今代の女王が如何に愚かであろうとも、彼女が失脚しては困るのだ。

 他の派閥の人間も招かれているのであれば、適当な理由をつけて断るなり様子を見るなりできたであろうが、派閥の人間のみともなると今後のことを考えて参加せざるを得ないのが各家としても辛いところだろう。


 そうニュクスはそこまで考えてからそっと嗤った。


(愚かしいこと。泥船に乗って宴会したところでいつの間にか沈むだけよ)


 女王という泥船に、アンネローゼという重しを乗せているのだ。

 いつ瓦解してもおかしくないその状況を見極めきれない、あるいは幻想を捨てきれない人々が巻き添えになるのだ。

 別にそれはそれで構わないとニュクスは思っている。


 ただそれで、無辜(むこ)の民が巻き添えになるならば話は違ってくるのである。


(女王の席順のせいで諍いが起きて、そのしわ寄せが互いの領民を苦しめることになるなんて……本人たちはまだ起きてもいないことだから知る由もないけれど)


 女王の茶会に参加して起きた出来事は大変同情すべきことであったが、だがその先にある泥沼の争いに関しては全く関係のない人々が巻き添えになるのだからいただけない。


 そんな未来を見てきたニュクスとしては、今回は阻止しなければと心に誓う。


「……でもどうすればいいかしらねえ」


 今のところロレアヌスの派閥に対して、ニュクスは信頼はされこそすれ発言権はない状態だ。

 こっそりと忠告すれば、それなりに気をつけてはくれるだろうがそれはそれで物足りない。

 それに何かあった場合に最悪なことは、ニュクスがしっかり止めなかったから……と八つ当たりの矛先を向けられてしまうことだ。

 それはできる限り避けたい。

 これまで積み上げてきた信頼が、こんなことで瓦解しては困るのだ。


(……なんとかして参加できないかしら。そうね、忠告するのではなく小耳に挟んだ風に派閥の令嬢たちに声をかけて、働きかけさせましょうか)


 女王の茶会に渋々参加する人々は、厄介ごとが起きた際にそれに対応したくはないのだ。

 誰かがやってくれないと困るが、それが誰かによっては自分たちに不利になる……だがそこにニュクスがいればどうだ?


(そうよ、そうやって勝手に便利に考えるわよね、あの人たちなら)


 過去の三度の経験で導き出した答えにニュクスは満足して微笑んだ。

 以前ならば都合良く使われることに内心腹も立てたものだが、今はその安易な考えの人々がいるお陰で物事が速やかに解決しそうだ。


(ならばやることは簡単ね)


 シグムンドに会う時以外の時間を、ついでに(・・・・)ダンテの手伝いをして点数を稼いでおけばいい。

 その移動の際にでも世間話ついでに女王の茶会に触れて『誘われていない』ことをアピールすればいいだろう。


 なんだったら少しばかり不安を煽ってもいいかもしれないが、やり過ぎはなんだって余計な結末を招きかねないのでほどほどがいいだろう。


 ダンテの手伝いをするのは、単純にダンテの仕事のできなさを痛感したからでもあるし、世界情勢を知りたいからでもあるし、いずれ女王の座に就いた時のことを考えて実務を今のうちからになって引き継ぎをさっさと済ませ、新しい補佐官を据えたいものだ。


 別に王配が必ず補佐にならなければいけないという決まりはない。

 王配は女王を支える存在なのだ、それがどのような形でも構わないのであれば、ニュクスがシグムンドに望むのは彼が伸び伸びと働ける環境のままで国軍を担ってくれたらいいなと思う。


(……そうね、このまま補佐官を選ぶなら、エリオットにお願いしてもいいかもしれないわね)


 カルミア公爵家は次男が家を継ぐのだから、文官として優秀な彼が自分だけでなくシグムンドも支えてくれると思えば、悪くない案だ。

 とはいえ、偏りがあってはいけないので他に見るべき家門があるならば接触的に重用していきたいと思うし、そこに派閥を織り交ぜて均衡を取るのもまた女王が留意するべきところだろう。


 これまではそうしたことに気を配れなかったのがきっと敗因だったのだ。

 そもそもが、あの家族にいいようにされた自分が愚かだったからあのような結末を迎えたに違いない。


 もう少し上手いこと立ち回っていれば、シグムンドを巻き添えにせずに済んだはずだ。


「……シグムンド、私頑張るわ!」


「うん? 何をだ?」


「とにかく、なんでもよ!」


「……そうか。無理はしないでくれよ? おれは……ニュクス姫が辛いのは、嫌だから」


「うん。ありがとうシグムンド。シグムンドがいてくれたら私はもっと頑張れるからね」


「ッ、貴女は、またそういうことを簡単に言う……だめだろ、本当に無茶はしないで。おれを頼ってくれ」


「ええ。勿論よシグムンド」


 今日も私の婚約者は可愛いなあ、とニュクスは心の中で思う。

 今はまだ頼る内容が思いつかないので適当に濁しておいたが、いずれは狩猟大会やら武術大会といった、彼の得意分野を勝利を捧げてもらうのもいいかもしれないなと思った。


 シグムンドならば、きっと二位と大差をつけて優勝してくれるに違いない。

 彼にはそれほどの差違があると思うのだ。


 婚約者が勝利や獲物を婚約者である相手に捧げるのは一般的なことなので、シグムンドから捧げられるニュクスの姿を見て女王とアンネローゼはさぞかし悔しがってくれることだろう。


(その日が楽しみね。まずは茶会で踊ってもらいましょうか!)

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