勿論、能力があればこそ、なのだけれども。
飢饉問題、女王のお茶会、そしてお見合い――ダンテが走り回る中で、そちらに気付かれないように動かないといけないニュクスはそれなりに大変であった。
シグムンドも協力してくれて飢饉問題についてはカルミア公爵家を頼って良さそうだが、他に関してはなかなかに難しい。
(女王のお茶会は、開くって話が出たらメイドたちに参加者の名簿をもらえばいいけど……その席を設ける準備を、私に回させればいいのだから)
それに関しては策を思いついたしついでに良い感じにあちらが悔しがる顔まで見られるであろうことは少し楽しみである。
だが、それよりなにより問題はお見合いである。
(……教育の進捗が芳しくないってどういうこと?)
言語はまあいい、礼儀作法も……出来れば及第点に達していて欲しいが年齢を考えればある程度のことは許されるかもしれない。
あくまでかもしれない、だが。
(それにしたって言語は一向に進んでおらず、礼儀作法はその年齢の基準に達しておらず、周辺諸国に対する理解度も低いとはどういうことなの!!)
最初の人生のニュクスでも、その年齢では最低限教師から及第点をもらっていたはずだが? と頭を抱えざるを得ない。
そういう意味では女王も自分が女王だからこそ何でもしていいと思っている節があるため、それを他国の人間の前で披露されては困るのだ。
どちらか片方だけでも厄介だというのに、自国の王族が厄介だというのが本当に厄介で過ぎてたまらない。
「どう思います、カルミア公」
「いっそ馬脚を現していただいて、各国から笑われてもらえば自覚もしていただけるかもしれませんな」
「ええ、それで済むならそれで構いませんけれど……そうはいかないから問題でしょう?」
「然り」
「アトリアニ王子は今年で十四才。シグムンドと近い年齢ですが、プレティシャス王国は継承権争いが激しいのでしたね」
老公爵が静かに頷くのを見て、ニュクスは今世でも過去生と同じような状況なのだろうと察する。
プレティシャス王国は代々、子だくさんである。
それは一夫多妻制度もそうなのだが、王族はとにかく実力主義なのだという。
そのため継承権は生まれた順ではなく、子を多く儲け競い合わせて最も優秀な者を玉座に据えることらしいということはニュクスも聞き及んでいる。
(我が国では考えられないわね)
そもそもが女王がハーレムを築いたところで生む腹は一つなのだから、同じ方法はとれないわけだが……とどこか冷静に思いつつ、ニュクスはカルミア公に質問してみる。
「どうして衰退しないのかしら。継承権争いが激しい国って衰えやすそうなものなのに」
「血を流す手段は即刻除外対象となりますからな」
「まあ、そうなの?」
「国王は裁定者として、継承権争いに参加した我が子を常に見張っている……ということでしょう」
「有能だからって能力の使い道に問題がないのかしら……?」
思わずニュクスがそう言えば、老公爵は何も言わずひげを撫でるだけだった。




