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愛をこの手に、弔い花を捧げましょう~死に戻り王女の幸せな復讐劇~  作者: 玉響なつめ
第四章

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まだまだ、これから?

 婚約から、一年が経っていた。

 ニュクスは十一才、シグムンドは十四才。

 いずれも才気煥発は二人として、すっかり評判になっていた。


 特にシグムンドの成長がめざましい。


 元々平民で、主要な貴族たちの派閥で嫌われる色合いを持っていると言うこともあり忌避すべき存在としてニュクスの婚約者に選ばれた少年は、最大の貴族であるカルミア公爵家の庇護の下で他の、生まれながらの貴族令息たちとも見劣りしないだけの作法を身につけていた。

 加えて元々の素養により、騎士としての強さはさらに磨きがかかっている。

 文武両道、色合いさえなければ完璧とさえ言えた。


 そしてその色合いについても、各派閥内で違う見方が生まれたのである。


 赤い目を拒む派閥は、彼の銀の髪は月のようだと褒め称え、肌の色が違うのも精悍だと称えた。

 銀の髪を疎む派閥は、彼の赤い目は紅玉(ルビー)のようで褐色の肌は逞しいと称えた。

 褐色の肌を疎む派閥は、彼の髪は狼の毛並みのようで、赤い目は石榴(ザクロ)のようだと称えた。


 いずれもカルミア公爵家の後見を受けた少年が頭角を現したことで、敵対しても良いことはないし、他派閥が疎む色を持っているならば自分のところは目を瞑って味方に引き入れる方が得策だ、と考えたようであった。


(愚かしいこと)


 ニュクスは淑女然として微笑みを絶やさないその心の内で、冷たく笑う。

 どいつもこいつも勝手なことだ、と。


 とはいえ、ニュクスとしては満足である。

 過去の三度の人生ではどうだったか定かではないが、シグムンドの〝価値〟は今や誰もが知るほどに高いものとなったのだから!


 そしてシグムンドの名声が高まれば高まるほど、女王が悔しがっていることもニュクスにとっては楽しくたまらない。

 屑石を渡して愉悦に浸っていたところ、それがとんでもない稀少な宝石の原石だった……と今更になって悔しがっているというのだからおかしくてたまらない。


 日々その報告をあちら(・・・)のメイドから聞く度に、笑いを堪えるのが大変である。

 勿論メイドたちが仕事を放棄しているというわけではなく、彼女たちは必要な情報はきちんと黙っているのだ。

 多少は愚痴の一つも言わないとあの女王とアンネローゼの相手は大変なのだろうと理解できているニュクスは、むしろ同情すらしている。


 女王が悔しがるだけではなく、アンネローゼもまた日々うるさくしているというのだ。

 シグムンド以上の男を自身の婚約者に据えてくれ、約束したではないか……と。

 文武両道で見た目も良く、また、家柄が優れていることが必要になるが、それに該当する人間はなかなかいない。


 いたとしても大抵は現王家に対して思うところがあるため、様々な口実で避けているようだ。

 これも女王だけでなく、アンネローゼの日ごろの行いが相変わらず良くないからであるのだが……本人は何故冴えない(・・・・)姉に婚約者がいて可愛い(・・・)自分には見つからないのかと日々嘆き、怒り、喚いているというのだから救えないとニュクスは思うばかりである。


(……でも、婚約者ねえ)


 第二王女という立場上、国外に嫁ぐこともあり得るだろう。普通なら。

 けれどこの国の女王は普通ではないから、婿を取ろうとするに違いない。


 できればニュクスを排除して、アンネローゼを跡取りに据えたいのだから。


(これまであの子にその手の話題はなかったけれど……今回の人生は、どうなのかしら?)


 たとえ誰が来ても、アンネローゼ相手に円満とは思えないとニュクスはそっと笑うのだった。

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