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愛をこの手に、弔い花を捧げましょう~死に戻り王女の幸せな復讐劇~  作者: 玉響なつめ
第三章

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なさねばならないことがある

 ニュクスとシグムンドの〝婚約〟が決まってからあっという間に半年が経った。


 その頃になると二人の成長はめざましく、ニュクスは王女として過不足ない知識を得ることができたし、シグムンドは貴族と遜色ない礼儀作法を身につけていたのである。


 ニュクスにとってもこれはとても嬉しい誤算であった。

 何故ならばシグムンドと共に机を並べ学べることが思った以上に楽しかったからである。


 これまでの三度の人生ではまともな(・・・・)教育は受けられず、辛うじて三度目をアンネローゼのおこぼれのような形で必死に食らいついていたようなものだ。

 おかげで〝自分自身の為に学べる〟喜びを今世になってから知ったわけだが、それもこれも隣で学ぶシグムンドがいてくれたからこそ、張り合いもあったのである。


 そしてシグムンドは元々の才覚の他にカルミア公爵家でしっかりとした食事と環境を与えたところ、体つきもしっかりしてなかなかどうして、貴公子然としてきたものであった。


 どこかの一族にとっては忌むべき色とは言うものの、それがほぼ迷信であることはすでに皆わかっている。

 ただ昔から言われているからつい(・・)……と言った感じなだけで、シグムンドが静かに礼儀正しく振る舞えば『王女の伴侶となる方だし』というニュクス効果もあって人々は次第に彼を受け入れるようになっていた。


(ふふふ……なんだか何もかもが上手く行っているわ!)


 相変わらず妹のアンネローゼは勉強を嫌い、母である女王がそれを許している。

 王配である父はそんな二人に手を焼いているものの、ニュクスという第一王女がいてそちらの評判が良いのであれば第二王女は好きにさせても……などとのんびりと構えているというのだから笑い話もいいところだ。


 少なくとも、ニュクスにとって……だが。


 大多数の貴族たちはニュクス・アキレギア・ロレアヌスという第一王女がいるからといって第二王女が奔放でいいのか? と思っている。

 何せ第二王女は第一王女のスペアとして本来は育てられるべきで、第一王女と変わらない程度には政務が行う能力を求められる。


 加えて第一王女が無事に王太女の座に就くのであれば、第二王女は嫁がねばならない。

 現状、女王の寵愛が第二王女にあることを考えれば国内貴族に嫁ぐ可能性が高いだろうことは想像に難くない。


 そして、現状のアンネローゼを考えれば如何に見た目が女王の好みの『可愛らしい』姿なのだとしても、無知蒙昧(もうまい)で権力を傘に着た振る舞いをする姫なのだ。

 今の王家と縁づいて、なんの得になるというのか!


「アンネローゼ様が王女として目覚めれば、あるいは」


 などという希望を抱くものも中にはいるようであるが、殆どの貴族たちがそれに対して否定的であることもニュクスとしてはおかしくてたまらない。


(どうしてこんな噂になっているのに、当の本人たちには伝わらないのかしらね?)


 これ見よがしとばかりに、アンネローゼと女王が住まう宮では毎日のように茶会が開かれ、大勢の令嬢が招かれていると聞く。

 そして大盤振る舞いで高価な茶と茶菓子が振る舞われているそうだが、別にニュクスはそれを羨ましいとは思わない。


 さぞ悔しがっているのだろうとあちらが勝手に思ってくれている今のうちに、ニュクスは自分の足場を固めなければならないのだ。

 まずは知識を得て、カルミア公爵家の周りにいる信頼おける貴族たちとの顔つなぎ、そしてシグムンドと関係が良好であることを知らしめる。


(やることはいっぱいあるのよ、茶会で遊んではいられないわ)


 いずれはきちんとした(・・・・・・)茶会を開く必要はあるだろうが、今はまだその時ではないのだ。


(もうじき、一度目の流行病がやってくる。それを最小限に留めるためにも、各貴族の協力を仰ぐだけの人脈を作らなければ……)

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