死亡フラグ
その日の夜暗い路地を歩いていると前から杖をついたお爺さんがやって来た。
(そういえばここ、確か俺の第2章での死亡フラグがある場所だな)
この世界はかなりの分岐があり、エフィドやフーラなどの主要キャラにも死亡フラグがある程だ。
(この死亡フラグには下・中・上の3つの難易度があり襲撃は90%で発生する。でもお爺さんのアサシンは居なかった、外れたのか?)
そしてお爺さんとすれ違ったが、その時杖から刃が引き抜かれる。
(仕込み刃!?擬態が上手い、俺が気付かないなんて)
そして俺が直ぐ様躱すと、元いた場所に銀閃が奔った。
「あのタイミングであっしの袈裟を外しますかい」
「……ああ、鍛えてるしな」
(少し意識してたから気付けたが、気にしていなければそこそこ深手を負ってたな…すぐ治せるが、出来る限り貰いたくはない)
「流石はクルトさん、一筋縄とは行きませんな」
「思い出した、あんた『霧隠れのヘズ・アッシュド』だな。依頼人はプライドか貴族派の連中か」
「おやまあ、あっしの事を知ってるんですかい」
「長年裏社会で生き抜いて来た熟練の老兵だ、確か50年くらいか? そりゃあ知ってるだろうよ、裏社会でも伝説だからな」
「それはそれは光栄な事で」
「まあその伝説も今日終わる、かかってくるがいい」
「ではお言葉に甘えて、あっしから行かせてもらいあしょう」
奴がぬるりと動くといつの間にか懐に潜り込んでいた。
「…ほう、やるな」
(技か、俺の瞬きに合わせたか)
「貰いやした」
鋭い銀閃が夜闇を切り裂いたが俺は引いている。
「凄いな、ここまで洗練された剣撃はそうそうお目にかかれない」
「……」
(今奴さんの輪郭がブレた、そのせいで狙いが少し甘かったようじゃの)
「では今度はこちらから」
さらっとナイフを投げそれが正確に奴の眉間・喉・腹に吸い込まれるように飛ぶが、奴はそれに向かってゆるりと歩く。そしてナイフが当たった瞬間、まるで煙の中を通過したようにナイフが通り抜けた。
「ほう、貴様の固有か」
(煙、自在に煙を出したり煙になれる。暗殺者にはかなり便利な固有魔法だな)
そのまま接近してきた奴が閃光のような突きを放つが、それを俺は首を傾けて回避。唐竹割りが繋がるが、それも後ろに跳んで外しそのまま斬り合いに雪崩れ込む。
(この世界での戦闘は地球とは違う、出来る限り多くの武闘派と戦い戦闘経験を積む事でグラトを殺せる確率が上がる)
俺は経験値の塊と数秒斬り結び基礎的な行動の解析が終了する。
(俺のナイフの扱いが更に上がった、これで忍者刀が使えない時でもかなり戦えるようになったな)
俺が一旦距離を取ろうとバックステップを踏むと奴が煙を発生させた。
(目眩し)
そして炎と電気の槍が俺を襲ってくるが最小限の動きで躱す。奴が俺の回避先に刺突を放っているが皮一枚まで引き付けて躱しカウンターで奴を斬った。
「ゴハァッ」
多分奴はいつ斬られたかも分からなかっただろう。だが奴もプロ、勘で致命傷は外したらしい。
少し治癒した奴がまたぬるりと動くが
「同じ動きを見せるな」
ヒュン
「グッ」
意表を突かれた奴の回避が間に合わず肩にナイフが突き刺さる。痛みで鈍った隙を俺は見逃さない。一気に距離を潰しそのまま唐竹割りを奴に浴びせる。だが奴がニチャアと笑う。
「やっぱり若いのぉ」
(あっしは態と身体の輪郭を保った煙になりゆっくりとしか歩かなかっがのぉ、本当は身体を維持する必要はないし速くも動けるんでさぁ)
奴が煙状になって逃げ一瞬で俺の後ろに移動したが
「それを待ってた」
俺は後に向かって脚を思っいきり蹴り抜いた。
ドォン!!
轟音の後には凄まじい蹴圧が吹き荒れ煙を吹き飛ばした。
そして暴風が収まり静寂な夜に戻った時には地面には大型車に撥ねられたようにグジャグジャになった奴が倒れていた。
「伝説の終わりはいつも呆気ないものだ」
(貴様の技はこのクルトが貰い受けた、役立たせてもらう)
死体を処理してから、そう言い残して俺は帰路についた。




