カチコミ
俺は今、医師試験会場に来ていた。会場は大学に近いな。
(原作でも15歳で医師試験を満点で突破した化け物だからな…歴史上2人しか居ないらしい)
リーンゴーンガーンゴーン
試験開始の鐘の音が鳴り問題を見る。
問1 これは「ヒロパスの誓い」の一節である。文中の 【 A 】 および 【 B 】 に入る語句の組み合わせとして正しいものを一つ選べ。
「自身の能力と判断に従って、患者に利すると思う養生法を施し、 【 A 】と不正の企てを決して行わない。 求められても【 B 】を人に与えない。 またそのヒントを教えることもしない。」
① A:怠慢 ――― B:偽薬
② A:害遇 ――― B:劇薬
③ A:害遇 ――― B:致死薬
④ A:差別 ――― B:堕胎薬
⑤ A:不実 ――― B:致死薬
(これヒポクラテスの誓いだな、答えは③。簡単だ)
順調に問題を解き進めて行き全てを解き終わる。
(まだ後4つも試験がある、気張っていこう)
全ての試験が終了した時には18時になっていた。
(朝10時からだったし流石に疲れた、だがそんな事言ってる場合では
ない)
もうそろそろエフィドが一つ目の組織にカチコムとこだろう。
その推測を裏付けるように部下から〈念話〉が飛んできた。
『もうそろそろ麻薬組織〈ネクロス〉に突入します』
『報告ありがとう、すぐ行く』
即座に転移しエフィド達がアジトに近づく少し前のタイミングで俺は〈ネクロス〉のアジトのドアを蹴破る。扉や蝶番、周りの壁が爆ぜたように飛び散る。
「社会のゴミはやはりドブ臭いところに集まるな、掃除の手間が省けるのは助かるがな。どうやらゴミとしての自覚があるようだ」
嫌味な言葉を添えて。
「何じゃあ!! 」
「カチコミか!! 」
「舐めてんじゃねえぞ!クソガキ!! 」
そして構成員3人が剣やナイフ、銃を手に取って即座に飛び出す。後ろには20数名くらい続いている。
(多いな)
「数では俺相手にはどうしようもない」
蹴破って床に散らばっている破片を奴らに向かって蹴り飛ばす。
「ガゴォ! 」
「バァッ! 」
前にいる数名の顔が完全に跳ね上がるその隙に俺は拳を握り腕を振るう。
――ズウゥゥゥンッ!!!
巨大な鉄球が通り抜けたような轟音が鳴った後凄まじい拳圧で大の大人が10数名くらい後方に弾丸ライナーで吹っ飛び壁に激突する。
「はへ? 」
一瞬で人数が半分になった事で奴らの勢いが止まる。
その時、その轟音を聞いてエフィドとフーラが入ってきた。
「何だ!さっきの轟音は!…ってクルトくん? 」
「ん? エフィドか、ここに辿り着くとはな……」
(まあ知ってたんだけど、だから殺してない)
すると奥からムキムキのスキンヘッドでおでこに厳つい龍のタトゥーが入った身長190超の大男が現れる。
(あれは怪力のスヘドか)
「お前はクルト・ロテリー・ダクラス…ちっ、国の番犬のお出ましか」
だが俺は奴に対して無視を決め込みエフィドに問を投げかける。
「エフィド、あいつ譲るぞ」
すると奴は顔に青筋を浮かべ棍棒を抜いて俺に突進してくる。
「舐めてんじゃねえぞ」
だが
「遅いな、まるで亀だ」
そんなんに当たってたら、前世だと10歳くらいで死んでる。
「お前、これから『亀のスヘド』に改名したらどうだ? 」
俺が夢から目を覚まさせてあげる優しい言葉を言うと奴は更にブチ切れた。
「お前はコロス!! 」
さっきの3倍のスピードで突進し棍棒を振る。
奴の攻撃はまさに達人のようで鋭い軌道を描いている、だが俺はそれをひょいひょいっと躱し続けながらエフィドに話しかける。
「どうするんだ? やらないなら俺が倒すぞ」
「……い、いや僕がやるよ」
(この猛攻を受けて息一つ切らさずに、しかも話す余裕もあるなんて…凄い!)
フーラをチラリと見ると目を点にして固まっている。
(面白い反応するな)
「てな訳でお前の相手は急遽エフィドになった、だからあっち行け」
バチィィン
俺が強烈なビンタで奴の顔を叩くとあいつは錐揉み回転しながらエフィドに向かって吹き飛んでいく。
「お〜〜お!! 何と言う斬新な攻撃だ、その攻撃で俺を笑い転がせればもしかしたら当たってたかもな」
俺がニヤニヤと笑みを浮かべながらそう言うと
「……」
奴は最早一周回って黙っていた。でもブチ切れてるのは殺気から伝わってくる。
(意外とタフなんだな、手加減したとはいえあんまりダメージを負ってないな。さてエフィド、こいつをどうやって攻略するか見せてもらおう )
エフィドが彼に向かって落雷のような速度で踏み込む。
(また踏み込みの速度が上がったな、着々と強くなっているようだ)
そして辺りに凄まじい暴風域が巻き起こる。
「……」
キレにキレてブチ切れたスヘドの速度は凄まじく、棍棒を紙切れのように振るっていて当たれば一撃で塵になる威力をしている。だがそれは当たればの話で、着々とレベルアップを積み重ねたエフィドの前では当たりはしたない。そして攻撃の合間を縫って剣閃が奔り棍棒ごとスヘドを斬った。その様子を見た俺はエフィドに拍手を送る。
「やるな、エフィド」
そして剣を収めたエフィドが照れくさそうに笑う。
「うん! 僕も特訓してるからね」
そして屋敷を探し丁度いいとこで回収していた証拠をさも今見つけたかのように振る舞い彼に渡した。
「やるよ」
「えっ? 君の手柄にもなるし共同でいいんじゃ」
「別にいい、目立ちたい訳ではないしな」
「でも……」
(納得してないって顔だな)
「今日の事は黙っといてくれ、あまり目立つ訳にはいかないんだ」
「……分かったよ」
「それとフーラ、これを渡しておく」
俺はフーラに原作のクルトも持っていた第3の証拠を渡す。彼女なら今王国で起きてる内部分裂問題を知っている為、この証拠の重要性が分かるだろう。彼女が文書に目を通すと勢いよく驚いた顔を上げ俺を見てくる。
「えっ!! これって!! 」
(これは、貴族派の奴隷取引書!!いつの間に……これがあればお父様だけでなく貴族派を一気に壊滅に追いやれる!!)
(これも合わせる事で貴族派も消し飛ぶだろう、王国では奴隷の売買等は重罪だからな)
「その事についても他言無用だぞ、後詮索もするなよ……また困った事があれば頼るといい、力を貸してやらんこともない」
(彼らは主人公、メインヒロイン特有の真面目さを持ってる。口外はしないから〈契約〉はしなくていいだろう)
そう言って転移してその場を後にした。
(これでエフィドと同時に証拠を見つける事で進むルートを達成出来た。しかもこれでお助けキャラとして介入できるようになった、第二章も順調だ)




