深淵
一旦は口外無用の〈契約〉の魔法で縛って客達を解放し、『お家ちゃん』も片付けて奴らのアジトへと向かった。
(あの客達も随分と汚かった、後で全員洗って刑務所《ブタ箱》にぶち込むか)
そうして一際異質な雰囲気を放つ古い2階建ての家が見えた。
「ここか、確かに外道特有の腐った臭いがする」
「ええ、とてもドブ臭く周りも迷惑しますわ」
「掃除《粛清》しないとな、でも今回は人死は無しだ」
「分かりましたわ」
俺が魔力錠をピッキングし扉を自然に開ける。
「邪魔するぞ」
(ここには前に3人、後ろに4人。後ろに3部屋あるな、多分横2つが構成員ので真ん中の部屋がボスかな?覇気が強い)
「うおっっ!! 誰だ、てめぇ!!」
「ここをどこや思うとるんじゃ!!」
「馬鹿は死に晒せ!!」
一斉に前の奴が銃弾を乱射してくる。
(どうやら数ある組織でもこの組織はプライドにかなり近いようだな、帝国製の銃を持っている。……帝国も迷惑な事してくれたよ、後できっちりと責任を取ってもらおう)
俺は銃弾を躱しながら指にワイヤーが付いている手首を軽く振る。するといきなり3人、奴らの体から腕が泣き別れた。
ズシャ
「へ??」
「後は好きにしていいぞ」
「お気遣いありがとうございます、ですが全て任せて下さっても良かったのに」
「次からそうするよ」
すると彼女がまた眼帯をとりその黒より黒い目を露わにしスカートを上品に捲る。すると白いドロワーズと黒いダガーベルトが見え、何かを引き抜いた時に白い反射光とダガーベルトが少し食い込みムチッとなっている健康的で扇情的な白い太腿が一瞬見える。
シャキン
彼女の手には地球では19世紀後半に誕生し、四肢の切断手術で使い世界大戦でも軍用の鋸として使用された芸術的で美しい医療用の鋸であるサッテルリー骨鋸があった。
「さあ、お楽しみの時間よ♪」
「舐めんじゃねえ!クソ女!!」
遅れて後ろの奴が勢いよく脳や心臓目掛け銃をぶっ放すが
「ふふっ、可愛らしい抵抗だこと」
その全ての銃弾をヒラリヒラリと蝶のように優雅に躱しながら前に出る。
「なっ!」
「うふふ、こんばんわ♪」
そして彼女が挨拶をした時には既に腕が消えていた。
「グギャーー!!」
「あら、醜い叫び声だこと。もう少し声を下げて上品にしてくださる?耳が腐ってしまうわ」
更に銃弾を乱射されるが
「丸分かりですわ」
あっさりと躱していき奴らの懐を取った次の瞬間、1人目の手首に骨鋸が深く減り込ませた。
「ギイィコ♪ギイィコ♡」
地獄の押し引きが始まる。無論それを食らってる男の手首が無事で済むはずがなく、手首が引きちぎれて地面に落ちる。そのイカれた具合を見た奴らはビビり散らかして尻をついた。よく見ると失禁してる。
「あらあら、粗相をしてはダメでしょ?」
そして鼻歌を歌いながら手際よく奴らの手首にワイヤー括り付け天井に一般魔法〈接着〉でワイヤーをくっ付ける。そしてまた手首に骨鋸を押し付ける。
「ギイィコ♪ギイィコ♡」
一番聴きたくない地獄の歌が歌われ始め奴らをぐちゃぐちゃに切り裂いていく。
「「ぎゃあぁぁぁ」」
この声に誘われて犠牲者《餌》がアリの巣から出てくる。
「そっちは任せたぞ〜」
五月蝿い叫び声と更に地獄になる場所を後にに俺は気配を消して奥の真ん中の部屋に入った。
「邪魔するぞ」
「邪魔するなら帰ってや〜」
「そうか、失礼しました〜……ってアホか」
「いいね!!最近このノリに付き合ってくれる奴が居なくて寂しかったんだわ」
そういう飄々として笑っている奴は裏社会でもトップクラスの戦闘力を持つ男、通り名は『切断魔マッドジェイ』
「外の悲鳴はお前の仕業か、嬉しいよ最近は俺に粉かける奴が少ないんだわ」
そう言いながらナイフとチャカを取り澱みなく構える。
「さあ!楽しい死闘にしようかぁぁ!!」
奴が快楽に取り憑かれた戦闘狂の獰猛な笑みを浮かべるが
「ならんと思うが、地力の差がありすぎる」
「この俺相手にそんなこと言った奴は初めてだ、こりゃあ楽しくなるぜ!!」
マッドジェイが常人なら認識も出来ず死んでしまう凄まじい早撃ち、俺はそれを横にズレてかわすがそこに向かって奴は爆発したかのような速度でスタートを切っている。
(優秀だな、だが余りに相手が悪い)
「遅い」
俺はその5倍の速度で踏み込んでる。その勢いのまま奴の心臓をぶち抜く。
「ガバァ!!」
(馬鹿…な、この俺が…あっさり心臓を)
(強いとは思っていたから少し魔力強化をして戦ってみたが……やり過ぎてしまった。これでは証拠の場所も証拠隠滅も出来なくなる)
即座に治療魔法で心臓を元に戻すと、彼の心臓が脈打つ音が復活した。
(……は???何だこの治療魔法の手際は!?余りにも早すぎる!?こんなの最早、神と言われたら方が納得できる……)
(もう少し早く出来た、この関門を乗り越えれば夢の0.1秒ギリを達成できる)
俺は少し悔しむが気持ちを切り替え質問に移る。
「プライドを探った証拠、何処にあるか教えてくれよ」
「う…お…」
(何故それも知っている!?……ダメだ、こいつにはどう足掻いても勝てねぇ)
裏社会でも名の馳せる猛者の心がポキンと折れた。そして奴が机の上にある招き猫の上がっている手を押すと引き出しが開きそこから証拠を持ってくる。
(原作通りだな、やはりこの世界はゲームでもある事を実感する)
「ふむ、これで全てのようだ」
(念の為魔法で真偽判定をしてみたが嘘はついていない、これでクリアだ)
外ではまだ陽気な「ギイィコ♪ギイィコ♡」が聞こえてくる為、外に出てフランチェに声をかける。
「もう終わっていいぞ」
「あら、もう終わってしまったのですね……まだお楽しみの最中だったのですが、ボスの頼みなら仕方ありません」
彼女の足元には手首が無くなり悶え苦しんでる構成員達が転がっている。
「その手首治してやる、代わりに明日も闇オークションを開催しろよ」
全員がコクコクと必死の形相で首を縦に振る。
「ならいい、この事も口外無用だ」
そう言いつつ俺は〈契約〉の魔法陣を展開する、それを見た奴らが同意して〈契約〉が成立する。契約通り俺が全員の千切れた手首を治すと奴ら顔が
驚愕に染まる。
「な、馬鹿な!複雑な傷口をいとも簡単に!!」
「よかった……ッ!もう俺悪いことしない」
全員が感涙に咽びくなか、フランチェがうっとりとした表情で俺を見つめてくる。
(流石はボスですわ、このグチャグチャの断面を縫合してみせるなんて……。私の趣味に付き合ってくださったのですね)
(何だろうか?俺の挑戦である、回復速度0.1秒ギリを達成する為の実験台にしてる事がバレたのか?)
若干のすれ違いがある気がするが、あまり重要ではないだろう。俺は思考を明日に切り替える。
「さて、後はこれをエフィドに押し付けるとしよう」




