お父様
「よく来てくれた」
お父様、ファルド・ロテリー・ダクラスが優しい声でそう言った。
灰色の髪に黒い目で170後半くらいの身長、細身だが服の下にはガッチリとした筋肉が隠れている。歳は36らしい
「お久しぶりです、お父様」
クルトの話し方をコピーして話す。
「単刀直入に聞く、なぜ引きこもっている」
お父様が心を丸ごと見抜くような鋭い眼光を突き刺してくる。
(クルトの記憶と合わせて)
「…グラトに屈辱を受けたためです」
「それは分かっている。問題は引きこもっている事だ」
「腕や足を折られギリギリ気絶しないように調整されながら殴られ蹴られ挙句の果てにはお前は『公爵家の当主の器では無い』と言われました、普通はこうなるでしょう」
俺は少し声を荒げて言うと
「ああそうだ私も今思い出しても腸が煮え繰り返るしクルトの行動も分かる、私もその立場なら1か月どころか1年はそうしていたかもしれんな」
なんとお父様も賛同したのだ。
「…は?なら何故」
少し意表を突かれたがすぐ演技に戻る。
「お前の貴重な時間をそんな事で無駄にしてはほしくないからだ、お前は本当に才能がある。事実歴代当主が平均16年かかる試練を僅か10歳で突破したのだから」
お父様がゆるりと腰を上げ俺に近寄ってくる。
「だがそれでも私は彼に惨敗しました」
「そうだそれを知ってほしかった自分より上の人がいると、今までのお前は自分の才能に胡座をかき鍛錬の時間の4分の3をさぼっていた。
……お前は今回の敗北でどう思った」
「とても悔して、恥ずかしくて情けなかったです」
「そうだその気持ちがお前を更なる高みへと引き上げてくれる、私はお前とグラトの才能は遜色ないと見ている。だから今度戦う時はあいつをボコボコにしてやれ」
「…はい」
「それに彼が何と言おうとお前は私の大事な息子であり次期当主であることに変わりない。なら今燻って本当に次期当主に相応しくないと周りに言われるか、研鑽を積み国を陰から守り誇れる自分になり当主に相応しいと言われるかお前はどっちを選ぶ」
「…私は後者を選びます」
「ならば当代当主として言っておこう、お前はこれから裏の事業に関わっていくが私達が行っている暗殺は『善』か『悪』で言えば間違いなく『悪』だ。だから私達は標的を選び癌だと認識した者を確実に殺し、民を平和に近づけねればならぬ。あらゆる事に挑戦し、思考し、揺るぎない自信を持てクルト。さすればお前の魂がお前の体に流れる血が、更に力を与えてくれ当主としてより相応しくなれるだろう」
お父様が柔らかい笑みで俺を見つめてくる。その瞳と言葉は俺の脳裏に幼少の頃の在りし日が想起された。
『我々は北小路様に拾っていただいた恩義を、忠義として敵対者を暗殺するという『悪』の力でお返ししている。故に我らに受け継がれている技を無軌道に振るってはならぬ。そうしてしまうと最後の『善』は塗り潰され、『邪悪』へと堕ちてしまう。信念を持ち『邪悪』に堕ちないように使え』
(この人似ている、俺の父さんに)
それは俺がまだ幼少の頃父さんにボコボコにされた後に聞かされた話と似ていて最近は原点に帰るような話をしていなかったので俺の心に響いた。
「…はい!必ず強くなり立派な当主になってみせます」
俺は父さんと幼い頃話した事を思い出し少し懐かしい気分になり言葉に力が入ってしまった。




