第73話 白米様……!
「さあさあさあさあ! ここまでたどり着いた元日本人よ! 思い存分食らうがいい!」
極東国の人たちに腕を引っ張られ、連れてこられたのは食堂。
そこには既に炊き立てのお米のほんわりとした甘い匂いが……。
ごくり……と、息をのむ。
「さささ、こっちに座れ!」
椅子に座らされると同時に、テーブルに乗っけられたのが……土鍋。
「オープン・ザ・土鍋の蓋~」
極東国の人が、そう言いながら、土鍋の蓋を取る。
瞬間、ふわりと立ち上る湯気と、ご飯の香り。
「ふおおおおおおおおお!」
「こ、これは……!」
わたしとナイジェル様の鼻から、ふんす! と鼻息が……!
だって!
艶やかでふっくらと炊きあがったご飯。
見ているだけでしあわせに気持ちになる炊き立ての土鍋のご飯。
そこから、極東国のお姉さんが、しゃもじを手に、お茶碗に炊き立てご飯をよそってくれる……!
「夢かしら……。わたし夢を見ているのかしら……」
「ああ……、夢であるのなら、白米を食するまでは覚めないでくれ……」
極東国の人たちが、わたしたちを見て微笑まし気に笑う。
そして、お茶碗に炊き立てご飯をよそってくれたお姉さんが、わたしとナイジェル様の前に、そのお茶碗を置いた。
すかさず別のお兄さんがお箸を用意してくれる。
「夢じゃないぞー。まず食え!」
わたしとナイジェル様は顔を見合わせて、言った。
「「いただきます!」」
がっ! と箸を手に、炊き立てご飯を口に含む。
口いっぱいに広がる甘味と旨味!
ふおおおおおおおおお!
心の中で叫びながら、もう一口。
ふひょおおおおおおお!
でんぷんが糊化されて、水分がすっかりと保たれ、甘みとみずみずしさが加わり、粘りと弾力があり……あ、あ、あああああああ!
なんという旨さ!
咀嚼した後にも残る旨味!
張りのある粒感!
口に入れると程よくほぐれ、そして、噛んだ時に跳ね返ってくるような弾力がある……!
あ、ああ……。
あああああ……。
夢にまで見た白米を、今、わたしは、実食している……!
「甘すぎず……、かといってあっさりしすぎないでんぷんの澄んだ自然な香り! 形はツヤがあって白く、透明感さえ感じる……。これぞ、日本の米!」
ナイジェル様は語りながらも、箸でご飯をかっこむ速度がものすごく速いです。
「お、お代わりを所望してもよろしいだろうか……?」
すっと差し出されるお茶碗。ご飯をよそってくれたお姉さんが、笑顔でナイジェル様のお茶碗を受け取る。
「白米もいいけど、そろそろウナギも焼き上がるよ」
何と⁉
「ウナギ、小葱、海苔、白ゴマ。それと日本茶とお出汁」
「ふほほほほほほほ⁉」
余りのパワーワードの、わたしの言語中枢が壊れそうになったわ!
「そのラインナップは、まさか……!」
「そう、ひつまぶし!」
「きゃあああああああああああああああああああああ♡」
「今日はねえ、鮭が取れなかったし、梅干しもあるんだけど。ウナギがちょうど脂がのっていい感じだったから、ひつまぶしができるようにしてみた」
「神様ですか、極東国の人は!」
「あははははは。日本人の魂を搭載しているただの転生者と転生者の子孫さ!」
一杯目はウナギ飯。
二杯目は薬味とウナギを乗せて。
三杯目はそこにお出汁をかけて。
「うんまー! うんまいっ!」
がつがつ食べるです。
「まだイケるなら、梅茶漬け。叩き梅にしてワサビもつけられる」
「梅ワサビ茶漬けええええええええええ! よろしくおねがいしまあああああああっす!」
大根の葉の浅漬けとちりめんじゃこ。その横に白みそと豆腐。
明太子。
シソの実。
箸休めにコリコリ食感の梅クラゲときゅうりの和え物。
食べて食べて食べまくった!
もうお腹がぱっつんぱっつんだというのに。
「あ、土鍋にご飯ちょっと残っているわね。卵雑炊にしちゃおうか!」
悪魔のささやきがああああああああああああ!
もちろん食しますよ。いただきますううううううう!




