第58話 さて……、それでは!
梅干しならぬアンズー干し。
漬けただけ。
二日干したもの。
それから黒焼き。
その三点は、毎年継続してカイエン男爵領で特産品として作りつづけることとなり。
十数年後には特産品として、後のラインシュ王国で重宝されることとなるのですが。
まあ、それは、後々の話で。
とりあえず、今は毎年梅干しの安定供給を見込める安心感で、一度、ラインシュ侯爵領に戻ることになりました。
エリンは早速帰宅の采配を取っています。
わたしとしては、このまま東へ東へと向かい、お米様に出会えるまで旅を続けたい……と思うんだけどねえ。
ナマズの魚醤の完成までは、まだ半年ほどあるし。
そうなのよねー。
カイエン男爵領とデヴォーン王国での収穫は大きかった。
鰹節……というか、削り節によるお出汁。
梅干し代用品のアンズー。
大麦ともち麦を混ぜたお米代用品。
そりゃあねえ。あの炊き立ての白米様と、本物の南高梅様を、だし汁でいただくのとはランクは落ちる。
本物が百点満点だとすると、七十点……いや、八十点はいかないけど、七十八点くらいは……。
まあまあいいよね、のレベルには達したのよ!
多分、大麦ともち麦、削り節のお出汁、アンズー干し。この三点に、完成して成功したナマズ魚醤を加えれば、きっと八十五点……、いや、九十点くらいの満足度になるんじゃないのかなーって予測はしているのよ。
それにもしかしたら、アンズー干し出汁茶漬けではなくて、ナマズの天ぷらの天茶漬けだったら、九十五点くらいの満足度まで行くのでは……って。
ま、とりあえず、それはナマズ魚醤の成功か失敗かにかかっている。
それと……時期的に、今、東に行っても……お米様、ないよね?
青々とした水田……見つかるかしら?
どうかなあ……。
梅干しの時期だから、田植えの時期ではあるんだけど……。
ううむ……。
日本だって、田植えの時期は、都道府県ごとに異なるだろう。
同一地域だって、台風とかの被害を予想して、田植えの時期をずらしたりもするだろうし。
沖縄とかはお米様の二期作やっていて、八月頃にもう収穫って話も聞くし……。
九州なんかでは二毛作……、麦とか作物の収穫後に、お米様の田植えをするとか……。
日本の気候と農作物の育成状態と、異世界の農産物の状況を一緒くたにして考えるわけにはいかないけど……。
さらに東に東にと行くのなら……。もうちょっと色々準備して、計画を練っていかないと駄目かしら?
さすがにいつまでもトリクシー・フォン・カイエン男爵令嬢のままで、カイエン男爵にご面倒をかけるわけにはいかないし。
トリクシー・フォン・ラインシュ侯爵令嬢として、外国へ行く方法は……って、あ。
思いついた!
これならいいんじゃないかな?
言い訳が立つんじゃないのかな?
とりあえず、わたしの一存では決められないので……、ナイジェル様を探す。
「ナイジェル様―――――――――!」
一度ラインシュ侯爵領に戻るということで、ナイジェル様はご両親に帰宅のご挨拶に行っていると使用人たちに教えてもらったので!
急ぎ追いかけます。
だってちょうどいいもの! ナイジェル様のお父様とお母様がいらっしゃれば!
馬車の準備をしてもらって、向かいます。
「たのもー! じゃなかった、おじゃましまーっす」
突然のわたしの強襲に、ナイジェル様たちは驚いていたけど。
ナイジェル様のお母様は、アンズー干しにお湯を入れたアンズー湯を出してくれた。
お! お母様は気に入ってくれたのかしら。うっふっふ。
「いきなりどうしました、トリクシー嬢。出立の準備でも整いましたか?」
「いえ、そちらはまだなんですけど。わたし、急いでナイジェル様に確認が」
「確認?」
「はい! 意思の確認です! あと、ご両親がいらっしゃるのでちょうどいいかと!」
「えーと?」
きょとんと首をかしげている三人。そうしていると親子そっくりだわなんて。
「あのですね、ナイジェル様。ラインシュ領に戻ったら、わたしと結婚式を挙げましょう!」
そして、新婚旅行に出かけましょう! ひゃっはー!




