第56話 いざ! 梅干し!
カイエン男爵領に戻り、もち麦(仮)を大麦と同じように脱穀です!
ウチの使用人だけではなく、カイエン男爵家の調理人の皆様にも手伝ってもらって、大量脱穀!
もち麦(仮)だけでも炊くけれど、大麦を混ぜたバージョンも試すのよ!
目指せ、白米のモチモチ感!
大麦だけで冷やし茶漬けを食したときはサラサラしすぎたからね!
いや、それはそれでいいんだけど。
こう……、もう少し、そこはかとないもちっと感が欲しいわけですよ。
というわけで、大麦ともち麦を脱穀・脱穀・脱穀……。
あとの手順は大麦茶漬けと同じね!
洗って、吸水四時間。その後、水分量二倍半くらいで炊いてみる。
吸水時間の間に梅を……じゃなかった、アンズーを見に行く。
さあて、デヴォーン王国に行っている間にうまく漬かっているかな……?
「こんにちはー! アンズー、見に来ましたー!」
わたし、ナイジェル様、エリン、使用人たち、それからカイエン男爵家の調理人さんたちも誘って大勢で、ぞろぞろと。
アンズー漬けを置いてある倉庫に向かいました。
興味津々な村人たちが、農作業の手を止めて、わたしたちの周りに集まってきます。
「そろそろいいかなーっと思って! 見に来たの! あと試食! 皆さんもお手すきだったらご一緒してください!
ナイジェル様のお父様、お母様、その他村人たちに声をかけつつ、心はアンズーに向かう。
さて……。
蓋を取って、アンズーを一つとってみる。
おおおおお! ちゃんと赤い! 染まっているよ!
「赤くなると、それだけで梅干しにみえますね」
「ですよね、ナイジェル様!」
ちょっと赤さが足りないような気がするけど。オレンジ色と赤の中間的な色。
もっと漬けていても、これ以上は赤くならないような気がするなあ……。
「とりあえず、試食を……」
アンズーをそのままパクリと食べてみる。
「あら!」
「……予想以上にまろやかですね。もっとすっぱいと思っていたのですが」
「これ、南高梅とかの高級梅干し様の味に似ていませんか⁉」
あのね、元々のアンズー自体が甘いせいか、すんごいフルーティーなのよ!
しかも、酸味はまろやか、果肉は厚い。
エリンやわたしの使用人たち、それからカイエン男爵家の調理人たち、ナイジェル様のご両親や農家の人たち。
一人一人に一個渡して、食べてもらった。
……外国人の人は梅干し駄目だって人も多いし、どうかなーっと思ったけど、おおむね好評。ただ、子どもたちは「うげ~」って言っていた。あはははは。
「すっぱいのとしょっぱいのと甘いのと……不思議な味ですねえ」と、ナイジェル様のお父様が言って。
「味は、アレでも。何か疲れが取れる感じね」と、ナイジェル様のお母様が言って。
周囲も「そうだね」なんて同意して。
そうしたらナイジェル様が「味が苦手な場合は、このアンズー干しをカップに入れて、お湯を注いで飲んでください」って提案して。
おお⁉ ちょっと親子の交流? それとも営業⁉
まあ、どちらでも。少し仲良くなれたらいいね。
早速試す、アンズー茶。
「ふわ~。アンズー干しにお湯を加えただけなのに、おいしー」
みんなと一緒にちょっとほっこりして。
子どもたちも「これなら飲める」ってぐいぐい飲んでいた。
でも、ナイジェル様は何か思案顔。
……やっぱり親子の確執は、そんな簡単に解消しないか……なんて、思ったのに!
「すみません、クリームチーズ、ありませんか⁉」
は、い? いきなり何を言い出すんですか、ナイジェル様!
でもカイエン男爵家の調理人さんたちが「ありますが……」と、氷室に向かって走って行きました。
「それから、ビールも! あればパンか、クラッカーも!」
農家の人が走ります。
え?
な、ナイジェル様?
何をするつもり?
調理人さんたちが持ってきてくれたクリームチーズ。それをボールに入れて、更にアンズー干しを混ぜていく。混ぜたものを、小さく切ったパンの上に塗って……カナッペですかい!
「叩き梅の冷ややっこ乗せ……を食したいところなのですが」
「ああ……。豆腐はないですもんね」
大豆は入手できるかもだけど、にがりってどうしたらいいの?
海側に行って、海水を入手すればできるかしら?
「梅果肉のクリームチーズあえも、飲み会の時によく注文してまして」
「あああああ! 飲み屋のメニュー!」
「クリームチーズがあればできる簡単料理。クラッカーやパンの上にのせて食べれば……」
「ビールが進むおつまみじゃないですか!」
何と言うことでしょう! ナイジェル様ってば!
早速、梅果肉のクリームチーズ乗せを試食してもらったら……、特に男性陣に大好評!
ビールをくいっくいと、みんなで爆飲してしまいました……。




