第55話 やってまいりました! デヴォーン王国!
侯爵令嬢の身分で他国に向かえば社交があるし警備も必要!
めっちゃ面倒!
ペガサスで飛んで行っても一か月程度で往復なんて無理ー。
だがしかし、元平民の男爵家の養女であれば。
こっそりと行って、さくっと帰ることも可能です!
せっかくの他国なので、ガッツリ国中見て回りたいところだけれども……、アンズー干しも気になるしね!
というわけで、ラモン・A・ロス氏に商人さんを紹介してもらって、やってきたよ、デヴォーン王国の農業地帯!
麦とか雑穀とかを大々的に作っている、いくつかの場所を巡ってみたのだけれど……。
水田は、なかった。
なかったよ……。
まあ、ね。元々ね。そうあっさりお米様に出会うとは思ってはいなかった。
でも、水耕栽培をしているとか。
お米様に近い雑穀はないかなーくらいは期待していたのに。
「……冬小麦なら、ちょうど収穫の時期なのですが。雑穀も秋の収穫で……」
き、季節が悪かったー!
そりゃあそうよねえ。お米様も雑穀も、フツーに考えて収穫は秋!
今は梅の時期よ! 初夏だよ初夏!
がっくりと肩を落とすわたしに、農家の人が申し訳なさげに麦なら収穫時期だよと言ってくれましたが。
「う、う、う……。ありがとうございます。でも、麦なら小麦も大麦も、我が国にもあるんです……」
まあ、このあたりの国で、麦を作っていないところなんてないよね。
主食だし。麦からビールを作らないと、長期保存できる水分はない。
だから、麦は当たり前にある。
「あの、小麦でもなく、大麦でもない、別の種類の麦ありますけど……」
「へ?」
小麦でも、大麦でもない麦?
「そんなのあるの?」
「はあ……。腹持ちがいいもんで、貧しい者はよく食うんですがね。ただ、食いすぎると逆に腹が張ったり、腹が痛くなったりする厄介な麦で」
「へえ……?」
「保存するときも外皮を取り除いちまうとすぐに硬くなるんですが。とにかく少量でも腹が膨れるんで需要があるんですわ」
ん? んんん? 気になる。
「その麦を、見せてもらうことはできますか?」
「はい、こちらです」
農家の人に麦畑に連れて行ってもらった。
で……、麦の穂を見させて、試食もさせてもらったら……。
「あ、あああああああああ! これはもしや!」
お米に「うるち米」と「もち米」があるように。
大麦にも「うるち性」と「もち性」があのよね!
同じ大麦だけど、我が国の大麦とはちょっと違う感じの麦!
多分だけど、これ、「もち性」の大麦では?
だって、腹持ちがいいんだよね?
炊いた白米と、お餅だったら、お餅のほうが腹持ちはいいよね?
似てるけど、違う。
農業系の知識がもっとあれば、違いがはっきりと分かるんだろうけど。
でも、大麦だけど腹持ちが良くて、消化が悪いなら、もち性の大麦の可能性大!
「か、買わせてください、この大麦! ビール樽に目いっぱい詰めて、それでカイエン男爵領まで戻るわよ!」
デヴォーン王国まで来ても、残念ながらお米様はいらっしゃらなかった! だがしかし! 新たなる出会いがあった!
さあ、持ち帰って研究だ!
水分吸水率。
炊いたほうが良いのか蒸したほうが良いのか。
やることがいっぱいで踊り出しそうよ!
あとねえ、ウチの国から東の隣国にちょろっとやってきただけで、こんなに素晴らしい出会いがあったのだもの。
更に東へ東へと向かって、極東国まで行けば!
さらにもっと素晴らしい穀物様との出会いがあるに違いない!
いつかきっと! お米様に出会えるかも……。
ああ、よかった。希望が広がるわ……。
とりあえず、今回はさすがにもっと東の国までは行けないから。
せっかくの出会いであるもち性の大麦様を、買い付けて、カイエン男爵領まで帰ると致しますわ~。ふふふ!




