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転生悪役令嬢はお茶漬けが食べたい【長編版】  作者: 藍銅 紅@『お姉様はずるい』コミカライズ連載中


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第49話 縁と運命

「日本人、武藤省吾としての記憶も持っているので、自分のやらかし故に両親との間に……その……他人行儀と言いますか、溝と言いますか、どうもうまくいかないのは理解できたのですけどね……」


苦笑するナイジェル様。


「普通の親子としてというのはもう難しいかもしれませんが、遠縁もしくは会社の上司と部下くらいの関係で付き合っていければと思っています」


うー……。親子なんだから、仲良しこよししたほうが良いよーなんて……言えないよねえ。どっちが悪いとかじゃなくて、仕方がない側面もあるだろうし。


「家族的なつながりは……、魔法の師匠とのほうがそれっぽい関係ですかねえ」

「あー、お師匠様?」


どんな人なのかなあ?


「そのうち会えるといいんですが。師匠はなんというか自由人で」

「自由人!」

「風来坊というか」

「風来坊!」

「あちこち気の向くままに赴いているので……。ああ、そうだ。今度会ったら師匠に『米』を見たことがないか、聞いてみましょう!」

「ぜひ! お願いします!」


会ってみたいなあ、ナイジェル様のお師匠様!

求む! コメ情報! というのもあるけど。

面白そうだもの、ナイジェル様の師匠様!


魔法で、お師匠様にお手紙飛ばして……って思ったけど、さすがのナイジェル様も相手の所在地が分からないとお手紙は飛ばせないみたい。


「ご縁があれば、いつか会えるでしょう……って感じですか?」

「はい。ご縁というと、なんとなく日本的な感じもしますけど……。ああ。トリクシー嬢に会えたのもそのご縁なのかもしれませんね」

「へ?」


ナイジェル様の表情が変わった。

懐かしむような、悔やむような……いろんな感情が入り混じった複雑な感情。


「鳥居クミさんに命を助けてもらったのは五歳のとき。だから、実際には何が起こったのか、私には理解が出来なかった話は以前にしたと思いますが……」

「ああ、はい」

「毎年鳥居クミさんのお墓参りに行って……、正直に申し上げますよ? 中学生くらいの頃の私は……お墓参りに行くのが面倒でして」

「そりゃあそうでしょうねぇ」


わたしはうんうんと頷く。


命を助けてもらった。でも五歳の時だ。中学生になれば……、そんな記憶は薄れているだろう。友達と過ごしたり、部活に勤しんだり……そんなことの方が絶対に楽しい。なのに毎年毎年両親とともにお墓参り。

うん、めんどくさいわよねえ。


「鳥居のおじさんやおばさんに会って、お小遣いをいただくのは嬉しかったですけどね」

「あはははははは! ナイジェル様、正直すぎ!」


そんなの言わなければ分からないのに。


「……鳥居クミさんのおかげで生きている。そのことを心から感謝したのは……私が社会人になってからのことです。父が事故死をしましてね……」

「ナイジェル様……」

「鳥居クミさんと同じように、子どもを助けて亡くなりました。子どもは怪我だけですみましたが、父は……」


偲ぶように、言葉をいったん止めた。


「まるで、過去の再体験なのでは……なんて、思ったのですよ。これが運命なのかなんて……」


運命。

縁。


そんなのは本当にあるのかどうか、分からないけど。


「それから、本当にいろいろ考えました。子どもの事故のニュースに敏感になったりもしました。もしも鳥居クミさんがあの時死ななくて、生きていたらどうだったとかなども。まあ、ありもしない未来の妄想みたいなものですが」

「妄想……」

「ええ。想像というより妄想でしょう。たとえば、鳥居クミさんと五歳の私は事故に遭った。もしも生き延びたのが逆だったら? 五歳の私が死ねば両親は恐ろしく悲しんだでしょう。父が事故死したときの母の嘆きは……今だに夢に見るほどです」

「そうですね……」

「私も死なず、鳥居クミさんも死ななかったらどうだろう? お姉さんありがとうなんて言いに行って、両家親しく交流できたかもしれないなんて」

「……妄想でも、それ、いいですね」


鳥居の両親とわたし。省吾君の両親と省吾君。みんなで仲良くなって、親戚みたいに付き合うの。


「はい。そんな思いが強かったから、こちらの世界でトリクシー嬢に出会えたのかもしれない……なんて、すごい妄想ですが」

「今じゃ現実ですけどねえ」


あははは。改めて思ってもすごいよね。

転生前、助けた相手とこっちでも再会。

お互い別な人間に生まれ変わって。


「もしも運命の女神様みたいな存在がいるとしたら。その存在が、私をトリクシー嬢の側に生まれ変わらせてくれたのかもしれないと」

「あー……、かもしれませんね」


だって、鳥居クミが死んだのが先。省吾君が五歳のとき。

省吾君は、今までのお話からすると、少なくとも社会人になるまでは生きてきた。

ずーっと後に死んだ省吾君が、私より先にこの世界に転生して、ナイジェル様になった。つまり、この世界に転生したのはわたしのほうが後。

日本とこちらの世界の時間の流れがどうなっているのか分からないけれど、先に死んだ私よりも、省吾君がナイジェル様に転生する方が早かったんだものねえ。


「……だから、ご縁というものがあると思うんですよね」

「へ?」

「……再会は運命だなんて、ロマンに過ぎますかね?」

「ほへ?」

「……生まれ変わって巡り合えた奇跡……なんて、まるで流行りの歌の歌詞のようですが」


えー、と? ナイジェル様の目が……なんか、熱いぞ?


「贖罪も運命も妄想も縁も食欲も……いろいろありますけど、とにかく私はトリクシー嬢と末永く仲良くしていきたいと思うんです」


末永く。

その言葉が、単に長く一緒に居ましょう以上の意味を含んでいるようで……。


何故だかわたしの体温が上がって、心臓がバクバクと忙しく鳴った。






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