第48話 デリケートな問題
ううーん。家族間のデリケートな問題だったらどうしよう……。
ナイジェル様が一方的に虐げられているという感じはないんだけど……。
……。
……。
……。
聞いちゃえ。
「ナイジェル様! ご家族と仲悪いんですか⁉」
ドストレートでいきなりすぎた……。
わたしの背後に常にいるエリンが頭を抱えております……。
ナイジェル様も目をまん丸くさせて、硬直している。
ご、ごめん……。一応、どうしようかとは考えたんだけど……。
「お・嬢・様……!」
「ご、ごめん、エリン……」
「謝るのはナイジェル様にですっ!」
「は、はいいいいいいいいいいい!」
へこへこと謝ったら、ナイジェル様は苦笑した。
「いえ……こちらこそ、いろいろご心配をおかけしてしまいましたか?」
「ええとー、お話したくないのなら聞きません! でも、ちょっと気になって……」
だってねえ、ラインシュ侯爵家って貴族にあるまじき仲のよさなのよ!
わたしが王太子殿下にブチ切れたら、お父様もお母様もお兄様たちもお義姉様たちも、国なんて見限って独立しちゃうぜ! ってくらいにわたしのことを、大事にしてくれているし。
それと比べるのはいけないかもだけど、ナイジェル様の故郷で、ナイジェル様のご家族にお会いして……あまりにも他人行儀。嫌いとか、虐げられているとかじゃなくて……。えーと、敬して遠ざけるって言うのが近いのかしら?
「……トリクシー嬢は、転生前の記憶はいつ思い出しましたか?」
「え? ええと、王城で王太子殿下に半日以上も待たされ続けるっていうのが何年も続いて」
「な、何年……」
「はい。でも、思い出す前は、わたし、ずーっと大人しく待っていたんですよね。でもあるとき、ものすごくお腹が空いて……」
「空腹?」
「それで、お茶漬け食べた―――――――い! って」
お茶漬け食べた―――――――い! って叫んだら、ナイジェル様が笑った。
「な、な、なるほど……。記憶を取り戻すほどの、空腹……」
なんとか笑いを押さえようとしているけど、どうしても肩が震えておりますよ、ナイジェル様。まあいいのよ、わたしのことは。
なんとか笑いを押さえた後、ナイジェル様はぼそっと言った。
「私は生まれた時から転生前の記憶がありました」
「あら……」
「これがよくある異世界転生か! と、赤子の頃の私はうっかり燃え上がりまして……」
「あ、あら……」
「ステータスオープンと唱えたり、魔法が使えるかどうかを試したり!」
「あ、ははははは……」
ナイジェル様……日本人だった頃の武藤省吾君はラノベとかアニメとか好きだったのかなー?
「ステータスオープンはともかく。魔法が発動できるとあらば、練習するのが当然……」
「……やっちまったんですか?」
「ええ。やっちまいましたよ。生まれて数か月の赤ん坊が、微風とはいえ風を起こせば……」
「驚きますね、ご両親」
「ポルターガイスト的に思われまして……」
あー……でも、転生して、赤ん坊の時からとか幼児の時からとか、魔法の練習するのはラノベでも結構よくある話……。
「魔法使いの家系などに生まれれば、この赤子には才能があるなどと持て囃されたかもしれませんが」
「アンズー農家では、魔法……というより……」
「ええ。私が魔法を使っているとは夢にも思わなかったのでしょう。何せここは田舎の農村。悪霊付き、呪われた赤子だとか思われまして……」
「あー……」
あちゃー……。
「成長した後、運よく私の師匠に当たる魔法使いがやってきまして……」
「運が良かったですね!」
「はい。師匠が居なければ、私が魔法使いになることもなく、呪われた子と誤解されたままだったかもしれません……」
「うわぁ……」
「幸いにして、誤解は解けた上に、つい先ほどまでは魔法省に勤める魔法使いとなりましたので……」
「あー……呪われた子が一転して地域の誉れかな?」
「男爵相当の身分もいただきましたからねえ……」
身分のある社会では、平民が男爵になるなんて、そりゃあもう、三日三晩祝いの宴が開かれてもおかしくはないレベル。
「まあ、そんなこんなで。こちらの世界の親たちから特に虐待をされたわけではないんですが……」
が……。「が」ですよね「が」。大事にされたわけでもないだろうし……。うん、よそよそしいのは納得かなあ……。




