第44話 天茶漬けの誓い
「あ、美味しい……」
「イケますね! 魚の臭みもなく」
「サラサラと食べられる……」
カイエン男爵や料理人の皆様に試食をしていただいたら、わりと好評。
めっちゃ感動のうまさではないけれど。
「暑い日に、サラッと食べるのにいいですね」
ただ……ナイジェル様だけは、眉根を寄せていた。
「ナイジェル様?」
あら、イマイチだったかな?
そりゃあそうか。日本で冷やし刺身茶漬けとかも食べたことがあるだろうし。
それに比べたら、マズくはないけど、及第点そこそこという感じかしら。
「……トリクシー嬢」
「はい」
「この魚、いつかてんぷらにしましょう」
「は? てんぷら?」
「ええ。実が柔らかい点は良いのですが、やはり、刺身にするよりも、てんぷらのほうが合うと……」
「はあ……」
天ぷらねえ……。好きだけど。
「すぐにではなく、あのナマズの魚醤が成功した後の話ですが。このだし汁に、みりんとしょうゆを少量加えた濃い目の味にして、この魚のてんぷらと薬味野菜を乗せて……」
「そ、それは、まさか……」
「そう、天茶漬けです!」
うわあああああああ!
来たか、天茶漬け!
天ぷらやかき揚げをご飯に乗せ、ほうじ茶をかけて食べるお茶漬けの一種!
小麦、大麦はあるんだから、衣は作れる! 天ぷらは作れるのだ!
感動のあまり震えるわたしにナイジェル様は更に言う。
「こちらのだし汁をかけて食べる天茶漬けでもよろしいのですが……」
うんうん、でも、及第点ってところよね。満足ではなく。
「やはり! そこに少量の醤油があったほうが旨さは数倍に跳ね上がる!」
醤油……、その力はやはり計り知れないっ!
「天茶漬けはほうじ茶で食べるのが王道なのでしょうが……。ほうじ茶がない現状、だし汁に醤油を足すのがベストかと!」
わたしとナイジェル様は手を握り合った。
これ以上、言葉はいらない。
魂と魂で……いや、食欲で、わたしとナイジェル様は結び付いているかのようだった。
「ナイジェル様……」
「トリクシー嬢……」
手と手を取り合い、うっとりと見つめあい……。
そうしてわたしたちは誓い合ったの。
「「絶対にナマズ醤油を完成させて、食べますよ! 天茶漬け!」」
わたしたちの背後では、エリンが頭を抱えて嘆いていたけど、知ったこっちゃないのよほほほほほ~。




