第41話 念願の冷やし出汁茶漬け
「はい、構いませんが……。定期購入……よろしいのですか?」
「ええ! ぜひともにお願いいたしたく!」
「スープは確かに美味しいと思いますが……、田舎料理の田舎スープの素でしかないですが……」
カイエン男爵は困惑顔だ。
単なる田舎の特産品としか思っていないのかしら? でも、鰹節っていうかお出汁の元はわたしが心から求めるものの一つなのよっ!
この素晴らしさが分からないなんて!
カイエン男爵のおじい様の素晴らしさを一晩中讃えられるほどにはわたしの心は踊っているというのに!
はっ!
もしや、カイエン男爵領では鰹節……じゃなくて削り節か……を、きしめんスープの素としてしか使っていないの⁉
なんてもったいないっ!
「いいえ、そんなことはございません! この鰹節……ケーズリブシの秘めた力を皆様はまだ知らないだけ!」
だって、削り節があれば! そして香味野菜と合わせてこんなにも美味しいスープが作れるのなら! 料理の幅なんて、いくらでも広がるわ―――――――!
ま、わたしが欲しいのは出汁茶漬けなんだけど。
「カイエン男爵。このスープを薄めずに冷やすことは可能ですか?」
「はあ……、我が家にも一応氷室がありますので」
「まあ! 氷室があるのね!」
「ええ、生前祖父が『生活には冷蔵庫だけは必須!』と叫びまして……。レーイゾウコとは何かはよくわからなかったのですが、氷室でも大丈夫と……」
せ、生前⁉
あああああ、おじい様はご存命ではいらっしゃらなかったのか⁉
ショック! 残念に過ぎる。
でも、あなたの功績は忘れない!
食の賢者その一として、わたしの心の手帳に記しておきましょう……。
「それから新鮮なお魚を入手していただきたいのだけれど、可能かしら?」
「はあ……我が領に流れている川には魚が豊富です。どのような魚がよろしいでしょうか?」
「白身のお魚ね。で、釣ったらまずきれいな塩水ですぐ洗って、氷と一緒に保存しておいてほしいの。ああ……、そうね、わたくしも魚釣りに同行して、直接指示をします。鮮度が命ですから!」
出汁があり、新鮮な魚がある。そして、麦は主食だ。大麦もきっとあるだろう。
そして、食材の鑑定ができるエリンもいる。
つまり。
「ではまずは大麦を脱穀して、吸水して……、うふふふふ。冷やし出汁茶漬け、ご賞味していただきましょう!」
ふっふっふ! あーっはっは!
梅を求めてアンズー畑にやってきたのに!
それより先に冷やし出汁茶漬けが食べられそうだわ!
なんて素敵♡ 出会いに乾杯♡
もう、わたし、頭の中が冷やし出汁茶漬けでいっぱいよ――――――――!
……とはいえ麦ごはんはすぐにはできない。
カイエン男爵に頼んで大麦を用意してもらった。
「大麦……? エールを作る以外は家畜の餌ですが……」
そんなものをどうして侯爵令嬢が……と、ものすごーく疑問顔のカイエン男爵&男爵家の料理人さんたち。
「ふっふっふ。あなた方は削り節同様、大麦に秘められたポテンシャルをまだご存じないのですわ……」
ふっふっふ。
さあ、作りますわよ! 念願の冷やし出汁茶漬けをおおおおおおおお!




