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転生悪役令嬢はお茶漬けが食べたい【長編版】  作者: 藍銅 紅@『お姉様はずるい』コミカライズ連載中


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第38話 日本の原風景⁉


カイエン男爵家に使いを出して、その返事を待つ間は、ナイジェル様のご実家で待機です! 

待機というか、ご実家が経営するアンズー畑の見学です。

なんと! 畑だけではなく、アンズー酒を造るワイナリーもあるとか!

まあ、ワイナリーといっても、住まいの横にどでかい体育館みたいな建物があって、そこで、人力で酒作りをしているだけみたいだけど。


でも!

ワイナリー見学と言えば、試飲はつきものです!

うっふっふ。

こちらは水があんまりよくないから、子どもだってビールとかエールを飲む世界。

それにわたしももう学校は卒業したからね!

堂々とお酒が飲める年ですよ! 

こっちの世界ではだけどね!

飲むぞー!


ナイジェル様の話によれば、当然日本とかあっちの世界みたいな観光客向けの試飲付きワイナリーツアーとかは、こちらの世界にはないけれど。

商談に来た商人さんとか、長年付き合いのある商人さんとかに、今年のお酒の出来はこうですよー的に試飲してもらってはいるらしい。

新酒だけでなく、三年モノの酒、五年モノの酒、十年物の酒とかもあって、飲み比べとかもするみたい。


そういう感じのをわたしたちも体験させていただくの。


後は、ナイジェル様のご帰郷も数年ぶりということで、ちょっと親子の交流もしていただけたらいいなーって。


もちろんアンズーを買って帰ることもね! というか、そのために来たのだけれど!


そんな予定をこまごまと、ナイジェル様と相談の上、お手紙にして事前に送っていたのよねー。


事前アポイントは当然、こちらの世界でも必須だもの!


……なのにカイエン男爵には面識もないのに泊まらせてなんて、すんごい失礼なんだけどねー。

うん、お父様に言って、あとで迷惑料を支払っていただこう……。


でもまずは梅! じゃなくてアンズー!

再び馬車に乗って、訪れたナイジェル様のお家……というか、農村的集落のはずなんだけど……。


……ん? んん? んんん?

どうもなんか既視感が……。


「あ、あの……、ナイジェル様」

「はい。何でしょう?」

「ナイジェル様のお家、あれで、間違いないですよねえ……? というか、近隣の家、というか里全部のお家、みんな……あんな感じですか?」


似非ヨーロッパの石造りのお家とかじゃないんだよ!

日本昔話の風景とでも言いたげな世界が広がっていたんだよ!


かやぶき屋根の、合掌造りの家々が山間に広がる日本の原風景で、四季折々の絶景が楽しめる世界遺産でございます! なーんておもわず言いたくなる!

郷土資料館とか蔵とかかやぶき屋根の旧なんとか住宅とか温泉立ち寄り湯とかありそうなんですけど⁉

うわー、うわー、うわー!


エリンも「あら、まあ……、ずいぶんと変わっておりますね」なんて、周囲を見回している!


ナイジェル様は生まれ育った土地のせいか「はあ……、そう言えば、王都とはかなり異なっておりますね。こちらは田舎ですから」なんて、のほほんとしているけど。


「き、気が付いていないんですか、ナイジェル様っ! こちら、広がるのが梅林ではなくて、水田だったら、まんま白川郷ですよ!」


思わず叫んだわ。

ナイジェル様は「あー……」と低く唸り、エリンは「シーラカワゴーとは何ですか」みたいな顔でわたしを見ている。


「うっそでしょう⁉ まさか偶然の一致なんかじゃないでしょう⁉ 似非ヨーロッパ的世界に突如と現われた日本の原風景よ⁉」

「あー……田舎の里山って、どこも似ているものでは……」

「絶対に違う! だって、雪なんかほとんど降らないブラウンシュヴァイク=リューネブルク王国で、屋根の傾斜をあんなにもつける必要なんてないでしょ! 石造りのお家ばかりの国で、どうして木造かやぶき屋根!」

「あー……」


生まれ育ったところだから、ナイジェル様は不思議に思わなかったんでしょうけど。

似非ヨーロッパ世界にいきなり白川郷では絶対におかしいのよ!

誰かがわざと作ったに決まっている。

その誰かとは……絶対に、過去に、この地に、日本人転生者がいたに違いない!


居たら絶対に……絶対に……、米、求めているよね!


はっ! 今気が付いたけど! ブラウンシュヴァイク=リューネブルク王国の東隣の国、デヴォーン王国出身のラモン・A・ロス氏! 

彼のご実家が雑穀を扱っているのは……もしかして、ご先祖もしくはご先祖の知り合いに日本人転生者が居て、彼もしくは彼らがコメを求めて色々開発した結果、あわ・ひえ・きび・小豆、黒豆なんかの雑穀が収穫できるようになったの⁉ 元々のデヴォーン王国の特産品とかじゃなくて。

ナイジェル様の故郷であるカイエン男爵領も、そういうこと? 梅を求めてアンズー林?


いや、妄想が飛び過ぎだけど!

もしも過去に日本人転生者が居て、日本食を求めていたら!

この世界には米があるかもしれない!

それも、弥生時代とかのその辺に生えていたコメの原型ではなく!


ブランド米! ササニシキ・コシヒカリ・コシジワセ・ユメピリカ・ヒトメボレー‼

米をおかずに米が食えるというほどの! 素晴らしきコメが! この世界にあるかも⁉


うひょーっ!

高まる期待‼


だってねえ、今、ここに。わたしとナイジェル様という日本人転生者がいるんだから、三人四人といてもおかしくはないっ! 

過去にいた転生者がきっとこの風景を作ったんだわ!


そして、この考えは大きく間違ってはいなかった……。


そう!

ナイジェル様のお父様、お母様にご挨拶して、試飲をさせていただいて、アンズーが完熟したころにまた来ますーって言って。


そして、向かったカイエン男爵家。


そのお屋敷は……、お屋敷の屋根には……。


金色の、物体。

頭は龍または虎とも言われ、胴体は魚、空に向かってそり返る尾を持つ……、どこからどう見ても、名古屋城の天守に飾られているしゃちほこが……いた。


アンズー酒を飲み過ぎた幻覚……なんかじゃないよね……、アレ……。






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