表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生悪役令嬢はお茶漬けが食べたい【長編版】  作者: 藍銅 紅@『お姉様はずるい』コミカライズ連載中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
33/58

第33話 ラインシュ領に戻って来て、早くもひと月経過


ラインシュ領に戻って早くもひと月経過です。


お父様やお兄様たちはお忙しく暗躍……独立に向けてのアレやソレ。

魔法使いの皆様は……なんて言うのか……、ものすごーく生き生きと、ツヤツヤと、魔法の研究に勤しんでおります……。

王妃様係から解放され、すごく気が楽になった……ようです。ヨカッタネ。

商人さんたちの動きも活発。


それで……、ギュンターお兄様に頼んで……、お願いして……簡易トイレを作ってもらいました……。


いや……、ナイジェル様のペガサスに乗って、トイレに急行! て思っていたんだけど。切羽詰まっているときに、マッチョなペガサスに乗って空を飛んだら……目立つよねえ。

ペガサスで、どこかの場所に降り立った時、わらわらと村人に囲まれて……とかだったら、羞恥で死ぬわ……。


そこで! わたしのためにも! それから野外生活の人とか、軍備とかにも転用できるから! 持ち運び式簡易トイレ&簡易テントを開発していただきました!


簡易トイレ、つまり、フツーの椅子の座面に丸く穴をあけただけのもの。その下に壺を置くだけ。

で、その壺が……超ハイパー魔法の産物。

座って用をたした後、その……排泄物を、壺の中で原子分解して「無」状態に……できるのが理想だった。

だけど、さすがの魔法使いたちもそこまではできなかった。

ただ、壺の中で、排せつ物が砂とか灰の状態に瞬時に変わるところまでは完成したのよ。

わーい。

排泄後の臭いもなし、ブツも残らない! 

砂や灰なら土に埋めるだけだし、埋めるときに匂いもないから、羞恥は感じない。処理をする使用人さんたちも喜びます。


試作した簡易トイレは好評で。野外や旅行用に使うだけじゃなく、わたしや家族の部屋にも設置されました……! 

使用人たちの間にも広まる勢いです!

商人さんにサンプルをお渡ししたら……注文の数が偉いことになったらしいです……。ば、莫大な儲けが……。ラインシュ領の魔法使いたち、トイレで独立採算取れるって! 魔法使いさんたちの給料もアップするかなーって……。


無意識の知識チート発動しちゃった⁉

まあ、いい。わたしのトイレ事情が安心になれば、それでいいのだ!


あ、簡易テントはキャンプなんかでよく使うようなテント、そのまんまですね。

貴族のご婦人がドレス姿でも用が足せるように、幅広め、高さもあるけど。まあ、フツーのテントです。


これが出来たから、さあっ! 川に魚釣りにしゅっぱ――――――っ!


我がラインシュ領の北側は高い山。そこの雪解け水とかが溶けて流れて川になる……。で、国土の北から南まで、貫くようにして流れているでっかい川があるから、魚は確実に取れる!


……そう思ったのに。


何故だ……。


ほらね? 川だから淡水魚……っては予想していましたわよ?

鮭みたいに海から遡上する魚が居たらラッキーくらいな感じでね?

さすがにすんごく遠い南の海からラインシュ領までは遡ってきたりはしないかも……とは思っていましたよ? だいたい南の海に鮭っているの? 分からないけど北のイメージがあるのよね。いたとしても、南の海から他国を経て、ブラウンシュヴァイク=リューネブルク王国まで遡上するかなあ……。


無理かもね。

だったら、アユとか…イワナとかヤマメとか……そういう感じかしらって思っていたのに。


だけど、コレは……さすがに予想外。

いえ、釣果が皆無なんじゃあないの。

寧ろ釣れた。

釣れ過ぎた……。


釣れに釣れたその魚は……どう見ても、ナマズ。どうしてナマズ⁉ いや、ナマズに姿かたちが似ている異世界の魚なんだろうけど! 


雪が解けて、川になって、それが流れて……、ラインシュ領のあたりの川の水はまだきれいなはずなのに! どうしてナマズ! あ、アイツら用水路でも小規模河川でも大規模河川でも、沼でもどこにでもいるんだったっけ? すぐ釣れる初心者アングラーにも優しい釣りやすい奴! 雷魚やブラックバスを釣りに行ったのに、ナマズ釣っちゃったなんて良くある話らしけど。


あー……、うー……。


ナマズ……其れは、闇と泥に生きる者……なんて、ラノベ風に言ってもナマズはナマズ! 

口の周りの特徴的な長いひげ。うろこを持たない代わりに、粘液に覆われた皮膚があって……。う、ううううう……。ねん……え……き……。ぬるぬるは嫌……。


「……樽いっぱいのナマズをどうしたらいいのよおおおおおおぉ!」


わたしは大きな樽の横でへたり込んでしまった。

同行してくださったナイジェル様が考えながら言う。


「……かば焼きにしてみますか? ナマズはかば焼きにして食べたらウナギに似ていると……日本で聞いたことが……」


ウナギ……美味しいですよね。捌くのとか調理とか難しそうだけど。土用の丑の日にはウナギ食べたい。

……こっちの世界で土用の丑の日なんていつに該当するのか分からないけど。

ナマズは……ちゃんと調理すれば……ウナギに似ていないこともない……ハズ。うん、きっとおいしいよね、ナマズのかば焼き。

でも。


「……砂糖はともかく醤油がないです」


ナイジェル様は更に考えたのち、ぼそりと言った。


「魚醤……作りますか?」

「ナマズで⁉」

「はい」

「な、ナイジェル様、本気ですか?」

「うまくいけば……醤油的な何かができるかと……」

「下手したら、強烈に腐った恐ろしい醗酵物ですよ!」


腐った魚の醗酵物!

危険!

超危険!

その腐臭は死人が出るレベルでは⁉


「……その際は、魔法使いの名に懸けて、瞬時に焼却処分をさせていただきます」

「うー、ううううう……」


……気は進まないけれど、うまく魚醤が出来れば、オンリー塩味みたいな世界に革命が起きる。言い方は大げさだけど、醤油系の味ってものすごいインパクトよねえ。


別に異世界とかじゃなくても、アラスカとか? アメリカ北部でサバイバルの教官をしている日本人が居て、サバイバル訓練の時に日本製の醤油を持って行って、釣って焼いた魚に醤油を少々かけたものをアメリカの人に食べさせたら、目の色を変えて貪り食った……なんて、エッセイを読んだことがあったし。


今後のお茶漬けを考えれば……、醤油は欲しい。お茶漬け以外でも、醤油様のお力は絶大……!


わたしは釣りに釣ったナマズを入れている樽を見る。

バケツも持ってきたけど、木製の……ビールを作るためのでっかい樽も持ってきたのよね。

その中に皮の水を入れて、釣ったナマズをどんどん入れて……、気が付けば、満タン。

さばいて食べるにしても……量が多すぎ。

ならば……。


「やりますか……!」


とはいえ、すぐに魚醤作りに入れはしない。えーとナマズってね、川の底の泥とか食べちゃっているのよ……。

生きたまま、きれいな淡水に入れて、泥吐かせないとね……。臭いの……。泥吐きに三日から一週間……。生かし続けなくてはならない……!


えーと、とりあえず、ナマズ樽はラインシュ領の屋敷の調理場に運んだわ……。


もちろん人力で運ぶなんてできないから、ナイジェル様の魔法で!


馬をマッチョなペガサスにできる魔法使いであるナイジェル様の得意技は肉体強化らしいです。他にもいろいろできるみたいだけど、強化系が得意とのこと。


魚釣りに同行してくれた護衛の皆様が……、こう……、なんていうのかしら? 世紀末救世主な伝説に出てくる、マンガの作画からすると身長十メートルあるでしょみたいな兵士になってナマズ樽を運んでくれました。……ありがたい、と思うよりも、肉体強化中、髪の毛がとさかみたいにならなくてよかったわなんて思ったり、口の端から舌を出したままで「げへへ」とか喋らなくてよかったわとか……、余計なことを考えてしまった……。


気を取り直してナマズ!

樽の水は、毎日朝夕二回くらいな水の入れ替えをします……。本当は水道水なんかの流水で……と思うけど、この世界上下水道ないからなあ……。人力でがんばる。


一週間くらいして、泥を吐き終わった後は……ぬめり取りです。

がんばって、あら塩をふって……ぬめり取りを……。う、ううううう……。ぬめぬめするううううううう……! 嫌あああああああ……!


……わたし、自分で釣った魚だから、自分で処理せねば……ってがんばっていたんだけど。

あんまりにも悲壮感を漂わせていたものだから、見かねた料理人さんたちが手伝ってくれました。ありがとう……! あなたたちは神か!


処理が終わったナマズは、頭と内臓を取って、三センチくらいに切って、木製の樽に入れます。塩も入れます。割合は、ナマズが十だとしたら、塩は四。

樽に詰めて、空気が入らないように落し蓋をしてから密封します。あとは冷暗所……、調理場の隣の保存室の端っこに置いて、一年ほど待つ。忘れないようにメモをつけて置く。

一年経ったら、木綿の布とかで濾した液を、六十度くらいの温度で三十分間加熱。最後にもう一回濾したら出来上がり。


「ふう……。成功するといいですね」

「……失敗したら、焼却処分しますのでご安心を」

「その際はよろしくお願いします」


マジ顔で頭を下げるわたし。

やっぱり異世界転生でお茶漬けをもとめるのなら醤油が必要だ……。おかかとかもつくりたいし。

このナマズ醤油が成功したら、麦も混ぜたナマズ麦醤油も作ってみよう。

ホントは大豆と塩と麦で醤油を作りたいけど……麹菌がないわ……。ナマズではない別の魚で醗酵させるか……。

色々やってみよう。

成功したらいいなあ。

そうよ、成功すれば……かば焼きができるのよ!


「ナマズがある。醤油がある。そして、かば焼きが完成できれば……」

「『ひつまぶし』ができるのではないでしょうか」

「ナイジェル様っ! ナイスアイデアっ!」


ひつまぶし。それは、お櫃に入れたご飯の上に蒲焼にしたうなぎを細かく切ってのせた料理。三通りの食べ方で楽しむのが特徴ね!


まずは、そのままの味でうなぎとタレ、ご飯を楽しむの。はふはふ。

それから、刻み海苔、わさび、ネギなどの薬味を加えて味を変えて食べるのね。モリモリ食べるよ、薬味サイコー! 

子どもの時はネギとかすんごく嫌いっていうか、上ーって思っていたけど、大人になると「心の友よ」とか言いたくなるほど薬味大好きになるから不思議だわ。特に夏のそうめんとかのとき、薬味なしではちゃぶ台ひっくり返したい気分になるものね……って、ちゃぶ台なんてなかったけどさ。


で、三杯目! 出汁やお茶をかけてお茶漬けとして食べるのよっ! これがっ! なんというか、夢の三段階。飽きずに食べられる素晴らしき食の発明! ウナギのたれと出汁と薬味の夢の競演! はわわわわわ~。ひつまぶし茶漬け! サイコー以外の言葉が見つからない!


「ナマズはわりといつでも釣れるでしょうから……。魚醤が完成するまでの間、海苔の代用品と、ワサビの代用品と、ネギの代用品を探さないと……!」

「シソを探すとともに、そちらも探しましょう……」

「あー……、シソ……」


ナマズ釣りをした川の土手とかに……実はシソに似た葉が自生していたのよ。

対をなすように木から生えて、鋸歯状の細長い形をした葉っぱ。

見た目もメントールに似た香りもどう見てもシソで、こちらでの名前はブレンネッセルというらしい。

赤紫蘇ではなく、大葉っぽかったんだけど……。


エリンに鑑定してもらったら、食べられないって……。ちくせう。

茎や葉の表面には毛のような刺があって、そのとげとげが毒性を持っているって……。とげとげが皮膚に付着した場合には強い痛みや痺れを生じる……。


うーん、見た目はシソだったんだけどなあ。惜しい。


魚醤の完成を待っている間、本腰入れてシソ探しね!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ