第31話 茶番劇は終わりです!
いつまでも妄想女と身勝手王太子になんて構っていられないので、そろそろ茶番劇は締めましょう!
わたしはギュンターお兄様に再度目線を流す。すると、お兄様は頷いた。
よっし!
タイミングよく国王陛下とガブリエラ王姉殿下の登場でーっす!
「話しは聞いていたぞ、アントンよ! トリクシー嬢に冤罪などかけずとも、お前たちの婚約は破棄にしてやろう!」
何故ギュンターお兄様にも同行してもらったのかと言えば!
それは当然、控室でお待ちいただいているガブリエラ王姉殿下に、現在進行形で、現状の音声を伝えてもらうためなのだ!
魔法って便利ね。
ガブリエラ王姉殿下に伝わっているということは、当然、同じ部屋でお待ちいただいている国王陛下にも伝わっているということで……。
ちなみに王妃様がいないのは……アントン王太子殿下を庇っちゃうからね!
王妃様、失礼ですけどメチャメチャ邪魔なのよ!
事前にギュンターお兄様から魔法使いの元同僚たちに連絡を取って、今日の王妃係の皆様に、王妃様を引き付けてもらっています。卒業パーティに出てくんな! は、無理だけど、なるべくご入場を遅らせてねって。王妃様が来る前に、婚約破棄、片付けましょう。
国王陛下って、基本的には悪い人じゃないんだけど……。王妃様が居れば、王妃様の影響を受け、王姉殿下が居れば、王姉殿下の影響を受けるという……。
優柔不断というか、嫁と姑の間で右往左往しているダメ夫みたいな感じがあるのよね……。宰相とか側近とかに用意してもらったシナリオを威厳を持って読み上げることはできるんだけどねー。
ガブリエラ王姉殿下は一応常識人なので、弟夫婦に姉が口出しするのはあんまりよろしくないと分かっているので、一歩引いているんだけど。
……さすがに、アントン王太子が、王太子ではなく国王になることには……少々危惧を覚えていらっしゃる。
かといって、代わりがいるわけでもないし。側近を優秀な者で固めて、アントン王太子は……まあ、お飾り的な王にしちゃう? でも一応、親としての愛情もあるし、国王という立場から、アントン王太子では足りないのも分かっているし……と、ぐだぐだ悩んでいらっしゃる国王陛下。
この場でもぐだぐだされてはたまらないから、根回しは事前に完了しております! 主にお父様とお兄様と王姉殿下ががんばった!
と、いうわけで、サクサク巻きで進めますよ!
「アントン、お前とヘレン・フォン・シュルツ男爵令嬢の婚約も条件付きで認める! 両名はもう一度貴族学院にて授業を受けなおし、初年度から卒業までの定期試験に於いて、学年上位五位以内に入り続けること! 二度目の授業だ。復習であるから上位入りも簡単だろう!」
いやー……、わたしはね、無理だと思いますけどね。
わたしは常に学年トップの座をキープしてきましたけどね。
アントン王太子殿下も桃色頭さんも平均以下でしょ?
でも、わたしのお父様やお兄様たちは、そうやって国王陛下を説得したらしいです。建前って大事よねー……。
「父上正気ですか⁉ 今日が卒業パーティなのですよ? もう一度学院生活を初年度からやり直せと?」
だって、卒業だけど、貴族学院で身に着けるべき学習内容、二人とも身に付けていないでしょ?
卒業できるはずだったのは、教師の恩情です。決して、高水準で学習内容が身についたと証明されるものではないの。
「貴族学院で最低限身につけねばならなかったことも、まともに覚えられていないお前たちが何を言うかっ! 卒業したから終わりではないっ! 最低限国の歴史やマナーや文化、近隣諸国の言語は覚えろっ! 家庭教師などは雇わんぞ!」
家庭教師を雇って、王太子の再教育、桃色頭ちゃんへの王太子妃教育をすれば……莫大な費用が掛かる。学院に再入学させた方がコスト的にマシなのよ。
費用対効果的にどうかなー……だけど、初歩的な学習さえ身についていない二人に、専門家による高等教育何て受けさせるのは時間の無駄だし、素晴らしき家庭教師の皆様にストレスを与えるだけ。
「国税を無駄に使うことは許されん! だが、王太子として、そして王太子の婚約者として、必要な水準の教育は身につけてもらう! お前たちは卒業資格取り消しの上、初年度からのやり直し! 学院側とも話はつけてある!」
学院の先生たちにはご迷惑をかけるけど……、そもそも卒業基準に達していないのを、王太子だからって卒業させちゃう学院側にも非がある。
だからこその、この処置。
貴族学院に入学しなおして卒業まで最短三年間。せめて傀儡程度はできるくらいには勉強しなさいよーって……、まあ、無駄になるのは承知の上。
二回目だからできるって期待しているわけではないの。
つまり、これ、実は単なる時間稼ぎなのよ。
アントン王太子が、心を入れ替えて、学業にまい進して。上位五位は無理でも……せめて、傀儡の王程度はできるようになれば、そのまま王太子といたしましょう。
傀儡すらも無理なら……国王陛下もお覚悟をお決めください。
別の誰かを王太子に据えるか。
いっそ、国を王政から別の制度に変えるか。
そのあたりを検討いたしましょう……ってのは、ホントは建前なの。
三年もあれば、ラインシュ侯爵家が独立もできちゃうんですよ☆ えへ☆
そうっ! 実はお父様、国王も王太子もとっくに見限った!
従って、ラインシュ領、独立しまっす!
でも、いくら有能な我がお父様でも、半年程度で独立って、かなりの無理ゲー。
我がお兄様たちも有能で、王姉殿下という味方が居ても、わずかに半年では独立準備は完成しなかったわ! 当り前よね!
アントン王太子からのわたしへの仕打ちに、お父様たち、マジ切れモードで色々爆走したんだけどねえ。
いや、基本的な制度とか、法整備とか、いろいろがんばったのよ。
魔法使いの皆さんの受け入れも、着々と進んでいるんだけど。
特にねー、ブラウンシュヴァイク=リューネブルク王国の貴族の皆さんの受け入れをどうするかーってのがね、ちょっとなかなか秘密裏に進めているので、半年ではどうにもならなかったわ。
近隣の領地の貴族の皆様とか、かなり多くの皆様が、ブラウンシュヴァイク=リューネブルク王国を見限って、新ラインシュ王国の貴族になりますーって、こっそり申し出てくれてますけどね。
……きちんと契約書とか、交わさないとね。
もうちょっと時間が欲しいなーということで。
国王陛下と王妃様向けには、アントン王太子の再教育として三年ほどあれば、彼も王太子としての自覚をもって、進んでくれるでしょうとか何とか。
国王陛下も今スグに決断は難しいでしょうから、三年間の王太子の頑張りを見て、それから今後を考えては……とか。
優柔不断の国王陛下向けの甘言を少々……。
はっはっは。時間稼ぎの誤魔化しでっす! 王太子が三年程度で次代の王の自覚なんて持つわけないことは、お父様たちだってわかっているの。
国王陛下はご自分の息子に甘い夢を見ているだけよ。現実見てないよ。それは王妃様もだけどね。
お父様たち、おぬしも悪よのう……なんて、茶番劇を繰り広げたくなるけど終わりっ!
サクサク済ませて、お茶漬けプリーズ!




