第26話 そろそろ卒業パーティ。王都に向かいますよ!
わたしはお父様お母様お兄様たち、それから王姉殿下たち護衛たち侍女たちと共に、ペガサスがひく馬車に乗って、王都に帰ってきました。
すごいわペガサス。
しかも、ナイジェル様が、目立つようにって、わざと低空飛行&ゆっくり目で飛ぶものだから……。
平民、農民、途中の領地の貴族の皆様、空を見上げて「あれは何だ!」と大合唱ですよ。
新聞記事一面トップ飾っちゃうね!
せっかくなので、馬車の小窓を開けて、地面に向かって手を振ってみたりもしたけど……。あっちからこっちが見えているのかしら?
見えなくてもいいんだけどねー。
まあ、せっかく注目を浴びているので、ビラを撒いてみた。
何のビラかと言えば……。
まず、麦茶の作り方。レシピね! 大麦なんてうちの国にはいっぱいあるんだもの。平民の皆さんも夏の熱中症対策にガンガン作って飲んでねー……というチラシ? ビラ?
それからコーンノヒゲ茶の作り方。
もちろん効能も書いてあるよ!
捨てるだけだったトウモロコシのヒゲが美容にも健康にもよく、しかも、マズい生水を飲むんじゃなくて、ほのかに甘いお茶に生まれ変わる! ハラショー!
コーン茶とか……、コーンの実を取った後の軸? っていうのかしらね。あれも鍋で煮るとスープの良い出汁になるのよーとか。
まあ、いろんなレシピを書いたものを、わたしの魔法でどんどんコピーしてばらまくの。
もちろん、麦茶やコーン茶なんかの研究はラインシュ侯爵家の令嬢、トリクシーの研究の成果だから、安心安全……なんて、文言も盛りこんでおいた。
わざとらしく、日付も入れた。
わたしが秋に婚約破棄をしたいって王家に申し上げた後、ラインシュ侯爵家の領地へと帰り、領地での研究結果だとも書いたのだ。
はっはっは。何重にも重ねた所在地証明。
わたし、約半年間、王都に居なかったからね!
貴族学園は届け出も提出して休学したからね!
領地に籠って、食材研究していたからね!
王姉殿下もウチの領地に居らっしゃったからね! ずっと一緒に居たよ!
新聞社のインタビューもラインシュ侯爵領で受けたよ!
コッソリ王都に戻っていないですよ、こうやってペガサスに乗って、ビラ配りながら、卒業式の直前に王都にやってきたですよ!
こんだけやっていれば、言いがかりをつけられても大丈夫だろう。
乙女ゲームでよくある物語の強制力とかがない限り!
何はともあれ、大注目を浴びながら、王都のタウンハウスに帰ってきました。
ふう!
卒業パーティは明後日です。
今日一日、旅の疲れを癒してから、パーティ準備をいたしましょう。
さて……、わたし、トリクシーは金髪の長い髪をドリル状巻き髪にしておりましたが、最近はハーフアップ。ごく普通の髪型。集団に埋没するようにね!
ドレスもごく一般的な、ウエスト部分からスカートがふんわりと広がるAラインの形にしてみたよ!
とはいえ、侯爵令嬢なので……。あんまり地味にするのも令息や令嬢たちの失笑を買う。
だから、形はシンプル、生地は最高級シルク!
シンプルだけど、見る人が見ればわかる高級さ。
真っ白な一色だとさすがに地味すぎるので……、ウエストのベルト代わりのリボンは瞳の色と同じエメラルドの緑にした。
装飾品もネックレスとかイヤリングも全部エメラルド!
身につけている物の総額は、東京で豪邸が買えるくらいよ! お高いのっ! 見た目は地味だけどね!
そう……地味にしたのは、集団に埋没ラインを狙っただけではない。
悪役令嬢的な真っ赤で派手なドレスを避けるため!
ついでにアントン王太子殿下の髪の色も緋色だからね!
赤系統は絶対に身につけない。
はい、もちろんこの世界、似非ヨーロッパ的……と言ったら失礼だが、まあ、そんな感じの世界なので、当然、婚約者の色を纏うとかいう暗黙のルールがある。
が、成文化されていない、慣習みたいなものだから、敢えて、わたしは緋色を纏わない。
……婚約者の色を纏わないことで、関係はよくないですよと表すこともできるしね。
さー、サクッと婚約破棄して、自由の身になりましょー。
まず、ラモン氏が扱っているあわ・ひえ・きび・小豆、黒豆、雑穀などなどの研究。初夏になったら、アンズーを漬けてみる。
そしていつか。
ナイジェル様にペガサスを借りて、デヴォーン王国に向かうのだ。




