第23話 お赤飯が出来ました☆
できました、できました、できました。お赤飯が出来ました。
わーい!
ゴマ塩掛けたら、外観は完璧なお赤飯!
超コーフンするわー。うっはー!
「ご、ゴマはあるかしら⁉ 黒ゴマは!」
白ゴマならありますが……との料理人さんたちからの返答……。
くっ!
惜しい!
でも、ラモン氏にお願いすれば、これからはアズキ的なヤブツルの豆はいつだって入手可能でしょう! 黒ゴマは次回までに買って置いてって、たのんでおく‼
わたしはゴマ塩たっぷり派なので! 次回のお赤飯時には、マジでよろしく!
「さて! 試食よ! 炊いたのと蒸したのと二種類作ってみたから食べ比べてね!」
わたし、料理人のみんな、ナイジェル様とギュンターお兄様、ラモン氏も料理場に呼んで、みんなで試食……。
まずは、炊いたほうから……。
「うわー、ちゃんとお赤飯!」
思わず叫んだわ! いや、見た目はね、黒ゴマはないけど、それ以外は完璧にお赤飯! 味もお赤飯! ふほーーーーーー!
料理人の皆さんとかは「あ、おいしいですねー」とかフツーの感想だけど。
ナイジェル様は……無言。一心不乱に食している。ぐがががががががっ! っと、実に気持ちのいい豪快な食べっぷり。あっという間に完食して「蒸したほうもいただけるだろうか」と、キリッとした真顔。
「はい、もちろんですわ」
お渡ししてから、わたしも蒸して作ったお赤飯を食す。
ウホホ――――――!
思わずゴリラ化するわ!
炊いたほうもきちんとお赤飯だったけど!
こちらの蒸して作ったほうは!
「もっちもちー! お赤飯がもっちもちよー!」
まるでちゃんともち米で作ったお赤飯のよう! う、うまー♡
「はー……」
食し終わって、感嘆のため息を吐く。
お赤飯がこんなにも大成功なら。
たとえば大麦にもちキビなんかを混ぜて、炊くのではなくて、蒸したら白米感が出るかもしれない。
……いやいや。今回の大成功は小豆様……ヤブツルの豆様の赤い色と存在感によるものだ、きっと。見た目からしてもお赤飯感度がアップした故の、この満足感にちがいない。うん、見た目大事だものねー。
ヤブツルの豆なしで、単に大麦ともちキビだけで蒸したら。
うーん……、白米感に近いかもだけど、今回のような感動はないかもなー。雑穀米くらいのレベルにはなるかなー。どうかなー。それでも、かなり白米様に近づいた感はあるから、一応は成功なんだけど。
……やっぱりササニシキ様やコシヒカリ様は至高の存在でいらっしゃる。
代用品ではなく、白米様の高みを目指したくなるわねえ。
ああ白米様ラブ。
そんなこんなで年末年始を過ごして……、過ごして……。
暇でございます。
学校……じゃなかった、貴族学園をサボっているので暇なのよねー。
いや、秋から冬にかけて、お茶漬け街道まっしぐらっ! に爆走してきたんだけど……。冬だからね……。できることはない。
温室の方も毎日水やりは欠かしていないけど。成長をして、いろいろ試せるようになるまでには、きっとあと二か月とか三か月は必要だ。それまでは水槍と雑草取りだけの日々。
じゃあ、この間に鮭とかマスとかに似た魚を物色しに行く……のも考えた。
でも、わたしは今、領地に籠っているという建前を取らないといけないのよ。うっかりどこかに行ったりしたら、卒業パーティで断罪を予定している王太子殿下に付け入るスキを与えるかもしれないしね。
わたしは、領地の屋敷から外へは出ていない。そのアリバイは王姉殿下が保証してくださる。
悪役令嬢的断罪をされるであろうと予想されている以上、これは崩してはいけないのだ。
まあ、今、外出しないのは、断罪対策だけではなく……。
もっと切実な問題として……。
この世界にはコンビニとか駅前とか、気軽に入れるトイレがない。
そう、トイレがないのだ。
旅をするときは、休憩場所や宿泊場所をきちんと決めて、そこできちんとご不浄を行う。
そうでないと、その辺の草むらで用を足すことになる。
嫌だ。
それは嫌だ。
お一人様で、そっと……というのなら、まあ、いたしちゃっても……と思うけど。
わたしはこれでも侯爵令嬢。
外で用をたすときにも護衛と侍女が付いてくる……。
寒い冬、野外で。しかも護衛と侍女に囲まれて、ドレス姿で用をたすなんて……。
いや、無理。
しかも今は冬。寒くて寒くて、トイレに行きたい頻度は増す。一日に、何度も野外で、なんて……羞恥心というものがあるのよわたしにも。
まあ、一応、どうしてももうこれ以上我慢できない漏らす……という場合には、優秀な魔法使いであるギュンターお兄様に頼んで、膀胱の内容物……、液体だけを魔法でどこか川にでも移転させていただくという手段もある。あることはある。
でも、それも……限りなく恥ずかしいんですけど。淑女としてどうかと思うし。
しかも内容物が、膀胱の液体ではなく、大腸から肛門に向かっている固形物だとしたら……。
羞恥飛び越えて、いっそ殺せ……っ! ってなるわ‼
兄妹といっても、超えてはいけないラインはあるのよ……!
というわけで、冬の野外は却下。
全てがすべて、春を待つ……。
「……仕方がない。暇つぶしに王太子殿下対策でもするかあ……」
ふう……。めんどくさい。あーはいはい、婚約破棄喜んでーって済ませられないかなあ。もう、このまま領地に居たいわー。卒業パーティ参加するのも面倒なんだけど。
だけど、王太子殿下は卒業パーティでの断罪がやりたいのよねえ。
やってあげないと婚約破棄できないとかになったら、あーあーあー……。
もう今から婚約破棄したいのになあ。
三月の卒業式まで待つのめんどくさーい!
あ、この世界、というか、この国も、日本と同じ三月が卒業です。
……そーゆー行事が日本と同じってことは、やっぱりこの世界悪役令嬢断罪モノのラノベとか乙女ゲームの世界なのかなあ? 知らんけど。
まさか、王太子殿下が卒業パーティで断罪するって、単に王太子殿下の都合ではなくて、いわゆる物語の強制力ってやつだったのかな?
あ、あらら……。
お茶漬け優先していたから、これまで考えなかったけど。
悪役令嬢モノでよくある物語の強制力とかによる卒業パーティでの断罪だったら。
うわー……。
脈絡もなく、根拠もなく、王太子とヒロインちゃんの証拠もない一方的な断罪で、悪役令嬢が断罪されるだけじゃなくて……実家、つまりラインシュ侯爵家が没落する可能性もあるの?
えええええええー⁉
さ、さすがの王姉殿下のご威光も、そんな物語の強制力様には勝てないかも。
……これは真面目に対策を打たないと。
うん。今まで、王太子なんてどーでもいーやー。そんなことよりお茶漬け大事! できたけれど。
対策を、したほうが、いい。多分。
冷や汗をかきそうになったとき、ノックの音がした。
「はーい?」
使用人がやって来た。ギュンターお兄様からのご伝言で、暇ならサロンでお茶でもしないかとのこと。
うん、せっかくだから、ギュンターお兄様にご助力願おうかしら。
わたしはお茶用の服に着替えて、いそいそとお兄様の待っているサロンに向かったのだ。




