第22話 シソ科の植物。そして正月なので!
……転生前の日本と、転生後のこちらの国の植物の名称が同じかどうかはわからないけれど。
薬師、調理人、商人などなど、野草とか農作物とかに詳しそうな人にいろいろ相談しているうちにそろそろ年末です。
何種類ものシソに似た感じの植物が集まったんだけど、苗ではなくて、ぜーんぶ種。
まあ、仕方がないわよねー。だっていま冬だし。これはアレだわね、温室作ってもらって正解だった。温室がなかったら、春の終わりくらいになるまで、種をまけないし。
というわけで、どんな葉っぱが生えてくるか分からないけど各種植えてみる。
バジル系五種類くらい。
その中でわたしが一番赤紫蘇に似ているんじゃないかなって思っているのが、ヴァイオレット・アロマティコというバジル。
これ、紫色のバジルなんですって!
商人さんから聞いた限りでは、色目からして、赤紫蘇っぽい。
問題は味と香りだけど、これは葉っぱが生えてからのお楽しみかなー。
それからシソというよりもエゴマ的なのが三種類くらい。
シソっぽくなるといいなー。
あと何故だかパプリカ的な実のなる苗も届いたわ!
可食の葉っぱってことで届いたのか、単に商人の売り込みか。
なんでもほうれん草みたいに柔らかい葉っぱなんだって。実も赤や黄色やオレンジって。……収穫して、色素として使えるんじゃないかなーって。
シソとは全然違っても、パプリカ的な実は料理につけるでしょ。
とにかく育てて実験。
できたものがお腹を下すような危ないものかどうかはエリンに鑑定してもらえばいいし。
集めた種を育てて、どれもシソっぽくなかったら。
仕方がない。着色なしのアンズーで、薄オレンジの実で妥協。
やっぱり梅干しは見た目が赤くないとねーとかも思うけど。
こればっかりは異世界なので、仕方がない。見た目よりも味を追求したほうが良いかもしれないな……。
ともかく植えて、そして発芽する春を待ちましょう~。
……って、待っている間は何もすることがないわ。暇だわ。久しぶりに貴族のご令嬢らしく刺繍でもしようかしら……と思っていたら。
「トリクシー嬢!」
「あら、ナイジェル様」
ナイジェル様はこのところギュンターお兄様や、王都の魔法省から引き抜いてきた他の魔法使いさんたちと一緒に何やらいろいろ研究にまい進していたようなのだけど……。
「ちょうどよかった、彼をトリクシー嬢に紹介したくて」
「彼?」
誰を紹介と思ったら、ナイジェル様の後ろに小柄で赤い髪の男性がいた。その男性がぺこりと頭を下げる。
「初めまして。祖父の代にデヴォーン王国からこちらの国に移住した者で、名をラモン・A・ロスと言います」
「トリクシーですわ。初めまして」
まずはご挨拶。
確かに、ミドルネームが一文字というのは異国風のお名前ね。
ご紹介というからには何かあるのでしょうか?
「彼の実家はデヴォーン王国特産の雑穀を作っているらしくてね」
「そうなんですよ。あちらでは当たり前に食しているモノですが、こちらの国では、珍しいのと健康や美容に良いのとで、貴族のご婦人たちに評判の良い穀物なのです」
「まあ! 穀物!」
まさかお米様ではないですわよね?
お米様ならナイジェル様がその旨すぐに教えてくれるでしょうし。
「お近づきの印に、こちらを……」
「ありがとうございます。拝見しても……?」
小分けにされた布の小袋が……一、二、三袋。
まず一つ目を見る。
そこに入っていたのは、鮮やかな黄色い雑穀。アワやヒエよりは少し大きいような……。
「これ、もしかして、もちキビ?」
「えーと、もちキビというのはわかりませんが、デヴォーン王国エッグミレットと呼んでいます。茹でると粘り気があってもっちりとした食感になります。卵料理によく使うものです。」
ゆでるともっちり……やはり、これはもちキビもしくはもちキビに近い雑穀に違いない。
向こうの世界では、キビは新石器時代に、欧州からアジアを含むユーラシア大陸全域の文明を支えた穀物。こちらの世界にも似たようなものがあってもおかしくはない。
二つ目の袋は、もちキビよりも小粒な雑穀。えーと白っぽい色だからヒエかしら?
試しに今度炊いてみよう。ヒエならあっさりぱらっとした感じになるはず。
三つめは……。
「え、え、え! これ、アズキ⁉」
見間違うはずはない、赤い豆。お赤飯に入れてよく炊いて食べたわねー。あ、あと砂糖と一緒に煮てぜんざいにするとか。
「この赤い豆は、ヤブツルの豆でして。畑の近くとかに勝手に生えて、近くの植物に巻き付く厄介なつる植物なんですが」
「つる……?」
アズキって、茎が直立してなかったっけ? やっぱり違う種類かな?
でも、この赤い豆はアズキに似ている。敢えて言うのなら、少し小粒。
うーん。もしかして、アズキの原種とかかしらねえ。
「とにかくせっかくいただいた豆ですから、炊いてみたいですわ」
もらった雑穀三種類を持って、いそいそと厨房に向かう。
まずヤブツルの豆を洗う。吸水八時間……ではなく、たっぷりの水でまず煮る。
中火にかけて、沸騰直前まで煮たら、弱火にして三分くらい煮る。
そうしたら、火からおろして、ゆでこぼしをする。
豆の皮は急激に冷やすと皺が寄っちゃうから、ちょろちょろと水を細く流しいれるのだ。そうね、五分くらい。でも、水道のないこの世界で流水で冷ますのは大変。水がめからコップにお水を入れて、ちょろーちょろーとすこーしずつ流しいれるしかない。
魔法?
できるかもしれないけど、料理人に魔法を使える人はいない。
ギュンターお兄様たちにお頼みする……のもできるけど、そうしたら、料理人たちだけで、今後豆のゆでこぼしはできなくなってしまう。
だから、大変だけど人力よ!
料理人さんたちがんばってー。
で、豆をゆでこぼししたら、今度はまた鍋に豆を入れる。たっぷりの水を入れて再び煮ますよー。中火でコトコト。沸騰しないように、コトコト。沸騰しかけたら、弱火にしてしばらくに続ける。
食べられるけれど、少し硬めってくらいまで煮る。
……たまに、食べて、硬さを確認。おー、ちゃんとアズキっぽい。よしよし。
さて、ちょうどいい硬さになったら、豆とゆで汁を分けておく。
ゆで汁は、冷ます。
冷めたら、このゆで汁でまずコップ一杯分くらい避けて、そこに塩を入れておく。
残りのゆで汁は捨てないよ! このゆで汁で大麦を吸水させるから! そうすると大麦がうっすらと赤い色になるのよ!
はい、ここまでが、前日の作業ですよ!
お赤飯を炊いてみるのは、ここまでの作業を行った次の日ですよ!
朝になったら、エッグミレットも二十分くらい吸水させてから炊くのよ! あ、蒸したほうが良いかな? 迷うわー。
ふっふっふ。
うまくいけば、大麦にエッグミレットのモチモチ感が加わりもち米的な感じになる……はず。
ふっふっふ。
わたしが何を作ろうとしているのかはお分かりですね?
そうっ!
これはお赤飯!
きっとお赤飯的なものになるに違いないっ!
お茶漬けからはちょっと脱線するんだけど、やっぱりねえ、祝いの日にはお赤飯! ひゃっはー☆ 楽しみ!
今6月ですが、作中は年末ですm(__)m




