Red-pen corrections/幕間
※本編幕間の短編です。
※時系列、第16話後。
「……四課に報告書を突き返されたのは、なんなんですか。アレ」
――深夜のファミレス。
(愚痴るんか、苺パフェ食べるんか……どっちかにしてくれん? 沙与)
その報告書を昼に秒で突き返されたんは俺やし。
まぁ……そんな野暮、明かす気ないけど。
ブラックコーヒーを一口飲む。
沙与にしてみれば、懸命に仕上げたもんやし、そら愚痴りたいわな……今回で二度目の提出やもん。
(あの記載量を秒で即却下は、そら凹む。
けどまぁ……)
四課係長の白井らしいのは否めない。
ソーサーへ置いたカップが、カチャと鳴った。
「もっとコンパクトにまとめな。沙与は、ありのままに書きすぎるんよ。もっと簡潔でええ」
「……あれでも削りました」
(その削り方が甘いんよ)
言葉で言うより、書くか。
ショルダーバッグから三色ボールペンを取り出し、紙ナフキンを広げる。
「ええか?」
そう言って、ペンを走らせた。
まずは、あの報告書の一文を書き出す。
「沙与、こう書いたやろ?」
「はい」
ボールペンを赤へ切り替え、そのまま修正版を書いていく。
時々解説を挟みつつ、彼女の反応を見る。
……沙与本人が納得してくれなきゃ、意味ないからな。
「短……」
「けど、こんくらい削って書け。状態じゃなくて、状況を書くんや」
一拍。
もう一枚、紙ナフキンを取って続きを書く。
そして――
「鑑識や一課へ出す見聞調書なら、沙与の書き方でええ。でも四課への報告書は、事実だけ書くの。ほい」
出来上がった二枚を並べて見せる。
向こう席の紫の瞳が、考えるように瞬きした。
「確かに……こうして見ると私、余分に書いてますね」
「うん。分かった?」
背もたれへ軽く沈む。
「沙与って、“見えた順”に書く癖あるねん。せやから情報量は多い。
でも四課は、“結論へ必要な順”しかいらん」
そう言い切って、ボールペンをしまう。
その傍ら。
懸命に咀嚼しようとする独り言が、小さく聞こえてきた。
……こういうとこが、この子の新卒時代からのええところや。




