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Uranus 第六特命巡視捜査隊  作者: サロ
第2章白きシロモノ
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15/22

第14話 湾岸の夜明け前

国道357号線。


東京湾岸警察署と保安臨海署の管轄が重なる湾岸道路を、603号車は流していた。

7時台の駐車場に止まる一台のネイビーブルー。


その車内は、コーヒーの香りに包まれていた。


「朝になっちゃったネ~」


「……朝だね」


私の返答に、廣目の眼鏡越しの視線がサイドミラーから運転席へと移る。


(……何よ)


「なんか毘乃木さんさぁ、ホッとしてるよね……?」


「してない」


「いいや絶対してるっ!

アタシは犯人見つけらんなくてメチャ残念なのに〜!!」


「してません!」


(……嘘。実はホッとしてる。

だって事件化まで行ったなら、あとは一課の仕事。

時と場合によっては逮捕まで手伝うこともあるけどぉ〜)


私は欠伸をひとつ。


エッグマフィンを口に運びながら言う。


「……偽造ナンバープレートでそこら辺走ってるなんて、日本じゃ珍しくもないよ」


一拍。


「それに……昨夜、廣目がナンバー見たっていったって一瞬でしょう」


「でも、覚えてるもん!

毘乃木さんだってエンジン音、覚えてるでしょ?」


「あてにしないの。

人の記憶なんか曖昧なんだから」


「え〜」




前日前夜——。


いつも通りに車両を走らせていた私は、スマートルームミラーを一瞥した。


(……うーん。やっぱり)


「後ろの車、アタシ達のこと煽ってるよね?」


助手席の廣目と、顔を見合わせた。


「うん。めっちゃ煽られてる。気にしない風にしてたんだけど……車間距離が近いなぁ」


「……こういう時って日本どうすんの?」


「先に行かせる」


「えっ!?」


(声がデカい……)


足が自然に減速へと入る。


「わざと行かせて、交通警ら隊にしょっ引いてもらった方が早い」


「え〜超消極的〜」


「いやむしろ超積極的!検挙率にちゃんと貢献してる!」


こう言って譲る。


煽っていた白い軽バンが通り過ぎた。


その側面へ、一瞬だけ青い英字が流れた。

……読めない。

でも、何かのロゴみたいだった。


続けて、後続の車列も追い抜いていく。


その時、隣から「ナンバー覚えた」の恨み節が聞こえた気がした。



《江東 お 12-58》



麻布警察署 取調室——。


「本当に?」


「ホントです〜、顔も車種も覚えてませんよ!! マジで疑い深い刑事さんだなぁ〜」


疑うのが俺らの仕事だよ。


心中でそう毒づきながら、麻布警察署捜査一課の諸橋(もろはし) 駿(ゆづる)は正面へ向き直った。



——沙与が以前逮捕した、あのヘラヘラする売人に。



「でも!車にアルファベットが書いてあって!!

会社名みたいな」


(アルファベット……?)




間もなく20時を過ぎる頃、沿岸付近を走行中の603号車。

不意に、

警務無線受信機の保安チャンネルがチカチカと光った。


『司令より各局。

臨海署管内、重傷傷害事案が入電中』


「「え?」」




湾岸エリアにある倉庫街。


飲食店が複数入るその一帯には、潮の匂いが漂う。


コンテナ群の隙間を抜ける夜風。

救急車の赤色灯が、濡れたアスファルトへ滲んでいた。


現着した時には、所轄の交番勤務が規制線を貼っているところで——その奥から、救急隊員がストレッチャーごとやって来た。


「道開けて!」

「通りまーすっ!!」


ヘッドギアで固定された男の顔は腫れ、口元に血が滲んでいた。


「……あ」


シューズカバーを付けるところへ、気づいた瑛梨が話しかける。


「ねぇ……この搬送者、夕方の煽り運転のヤツじゃない??」


「え。嘘……」


覗こうとしたその横から——



「——何、お前ら煽られたの?」


ヌッと現れた(さかき)先輩と、「現着。特視604、初動入ります」とイヤモニで通達する眼鏡姿の久世(くぜ)先輩。


私は榊先輩から視線を外して言い訳を探した。


「ほんのちょっとだけですよ。

ーー初動捜査、始めましょう……廣目」


呼ばれた瑛梨が私の方を向く。


「証言、取りに行こっか」

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