第二章12「働かなくてもいい」
全面的に自己責任でお願いします。
翌朝。
優守は目覚ましより早く目を覚ました。
カーテンを開けると、朝の光が部屋へ差し込む。
いつものようにコーヒーを淹れようとして、ふと手が止まった。
「……今日は何しようかな」
自然と口から出た言葉だった。
作業部屋へ行ってもいい。
本を読んでもいい。
散歩へ出かけてもいい。
映画を見るのも悪くない。
どれを選んでも困らない。
そう思った瞬間、優守は少しだけ驚いた。
(そうか)
今までは違った。
毎日、「何をするか」ではなく、「何をしなければならないか」を考えていた。
仕事。
売上。
生活費。
将来への不安。
だから休んでいても、どこか落ち着かなかった。
だが今は違う。
教材は売れる。
講座にも申し込みが入る。
アプリの広告収益も毎日積み重なっていく。
収入は安定している。
資産も少しずつ増えている。
生活に困ることはない。
優守はスマホを手に取り、管理画面を開いた。
昨日の売上が反映されている。
数字を確認すると、そのまま画面を閉じる。
「まあ、大丈夫やな」
それだけだった。
昔なら、一日に何度も確認していた。
数字が少し落ちるだけで、不安になっていた。
今は違う。
確認はする。
だが、それだけで一日が左右されることはない。
コーヒーを片手にソファへ座る。
窓の外では、小学生が楽しそうに登校していた。
その様子をぼんやり眺めながら、優守は思う。
働かなければ生きていけない。
ずっと、そう思っていた。
会社員だった頃。
独立したばかりの頃。
だから必死だった。
だが、今は違う。
働かなくても生活はできる。
収入がある。
資産がある。
将来への備えもある。
もちろん、これからも働く。
新しい事業も考える。
本も読む。
勉強も続ける。
それは生活のためではない。
もっと面白いことをやりたいからだ。
(そういえば、こんなふうに朝を迎えられるようになったのは、いつからだろう)
「……これが、自由ってことなんやろな」
お金が増えたからではない。
時間を自分で選べるようになった。
やることを、自分で決められるようになった。
それが一番大きかった。
優守は立ち上がる。
今日は仕事をしてもいい。
休んでもいい。
その選択肢があること自体が、何より贅沢だった。
「さてと」
優守は笑みを浮かべながら、本棚へ向かった。
今日は、何を学ぼうか。
そんなことを考えられる毎日が、少しだけ誇らしかった。
読み終わってのクレームは、お止めください。
自己責任です。




