第二章5「作る側になる」
全面的に自己責任でお願いします。
優守は、自室の机に向かっていた。
パソコンの画面にはフォルダが並んでいる。
メモ。
参考資料。
過去に作った資料。
AI関連の検証結果。
業務効率化の手順書。
どれも自分にとっては見慣れたものだ。
だが、今日は少し見方が違う。
使う側ではなく、教える側として見ている。
(さて、何を教えるかやな)
オンライン講師。
会社に居る頃から少しずつ準備していた。
だが、今回は本格的に形にするつもりだった。
もっとも。
優守にとって問題は教材を作ることではない。
何を教材にするかだった。
世の中には情報が溢れている。
無料動画。
無料記事。
AIによる回答。
知識だけなら、いくらでも手に入る時代だ。
そんな中で金を払ってもらう。
それは思った以上に難しい。
(知ってることを話すだけなら誰でもできる)
だからこそ考える。
何が必要とされているのか。
何に困っている人が多いのか。
どこなら自分が役に立てるのか。
優守は検索画面を開いた。
AI活用。
副業。
業務効率化。
オンライン講座。
関連する情報を集めていく。
スキルが働く。
大量の情報が頭の中で整理される。
広告。
体験談。
レビュー。
失敗談。
必要な情報だけが自然に残っていく。
(結局みんな同じことで悩んでるんやな)
情報が多すぎる。
何から始めればいいかわからない。
AIを触ったけど続かなかった。
便利そうやけど仕事に使えない。
そんな声が多かった。
逆に言えば。
高度な技術を教える必要はない。
必要なのは最初の一歩だった。
優守は新しいメモを開く。
【AIを使った業務効率化入門】
そう入力した。
プログラマー向けではない。
企業向けコンサルでもない。
普通の会社員向け。
パソコンが使える。
ネットも使える。
でも専門家ではない。
そんな人を対象にする。
(自分が最初に欲しかった教材にしたらええか)
それなら内容も分かる。
何につまずくかも分かる。
優守は教材構成を書き始めた。
第一章。
AIとは何か。
第二章。
実際に触ってみる。
第三章。
メール作成。
第四章。
資料作成補助。
第五章。
情報整理。
第六章。
失敗しやすい使い方。
第七章。
仕事で使う時の注意点。
気付けば、かなりの量になっていた。
だが難しい内容はない。
むしろ逆だった。
徹底的に簡単にする。
専門用語を減らす。
最初の成功体験を作る。
それが目的だ。
(これくらいなら、親父やお袋でも分かるか?)
そこまで考えて、少しだけ手を止める。
悪くない基準だった。
次に優守は販売方法を考えた。
最初から自前のシステムを作る気はない。
管理が増える。
トラブルも増える。
何より面倒だ。
まずは既存の講座販売サービスを利用する。
受講者管理。
決済。
動画配信。
そういった部分は既存システムに任せる。
小規模な講座なら、その方が合理的だった。
価格表も作ってみる。
安すぎれば信用されない。
高すぎれば売れない。
だから相場も確認した。
数千円から数万円。
内容によって大きく違う。
優守は悩んだ末に、一つの数字を書いた。
五千円。
高くもない。
安くもない。
まずは試してもらう価格だ。
(これで売れなかったら、それは内容の問題や)
値段のせいにはできない。
それでいい。
画面の中には、少しずつ形になっていく教材案が並んでいた。
派手なビジネスではない。
革命的なサービスでもない。
だが、自分の知識を整理し、それを必要とする人へ届ける。
それは確かに価値のある仕事だと思えた。
優守は背伸びをする。
窓の外は、すっかり夕方になっていた。
会社員として働く。
個人事業主として管理する。
異世界とも取引する。
やることは増えている。
それでも不思議と嫌ではなかった。
以前なら、知識は自分のためだけのものだった。
だが今は違う。
誰かの役に立つ形へ変えようとしている。
使う側から、作る側へ。
優守はもう一度キーボードに手を置いた。
そして新しいファイル名を入力する。
【第1講 AIを仕事で使う前に知っておくこと】
その瞬間。
少しだけ、自分が前へ進んだ気がした。
(これがうまく行けば、次は語学系に応用もできる。)
読み終わってのクレームは、お止めください。
自己責任です。




