第3話 図面にいない三十四人
救助計画を立てるには、まず地下に何人いるのかを知る必要がある。
ところが、この王国は自分たちの城の下で働いている人間の数さえ、すぐには答えられなかった。
「百十二名だ」
王国地下迷宮守備隊長のガレンが答えると、その隣に立っていた小太りの男が、聞こえよがしに舌打ちした。
「百八名です。守備隊長殿は、退職した者まで数えておられる」
「退職したのは先月だ。後任が来ないから、そのまま働かせていると聞いたぞ」
「正式な雇用記録に名がなければ、勤務者とは認められません」
「だったら、あいつらは毎朝何をしに地下へ降りているんだ。散歩か?」
「現場の非正規な判断まで、管理局へ責任を押しつけられては困りますな」
崩落した大広間の西側にある控え室が、臨時の救助指揮所になっていた。
壁際には長机が三つ並べられ、その上へ地下迷宮の図面、負傷者名簿、灯り、縄、工具、水差しが雑然と置かれている。廊下では怪我人のうめき声と、資材を運ぶ兵士たちの怒鳴り声が絶えず、天井からは小さな砂粒が今も落ち続けていた。
ガレンと言い争っている男は、王立迷宮管理局長のバルガスと名乗った。
肩書だけ聞けば、この場で最も地下迷宮に詳しくなければならない人間だ。だが、仕立てのよい服には埃ひとつついておらず、救助の話より、誰が責任を負うかばかり気にしている。
「では、百八人ということでよろしいのですか」
俺が尋ねると、バルガスは不愉快そうに鼻を鳴らした。
「先ほどから無礼な口を利いている異界人か。君に管理局の情報を説明する義務はない」
「俺に説明する義務はなくても、地下に残された人たちを助ける義務はあるでしょう」
「もちろんだ。だからこそ、我々専門家が対応を協議している。素人は口を挟まず、勇者としての務めに備えていればよろしい」
「俺は勇者ではなく、役立たずの事故鑑定だそうです」
「ならば、なおさらだ」
「その役立たずに二次崩落を止められたガレンさんは、どう思います?」
話を振ると、ガレンが露骨に嫌な顔をした。
「俺を巻き込むな」
「助けたのに冷たいですね」
「三分待てと言われた間、俺がどんな気分だったと思っている。感謝はしているが、まだ腹も立っている。人間はそんなに簡単に気持ちを整理できん」
「それで構いません。俺も好かれるために止めたわけではないので」
「そういう言い方が、また腹立つんだ」
ガレンは苛立たしげに頭をかいたが、やがてバルガスへ向き直った。
「現場の指揮は俺が執る。こいつの意見も聞く。文句があるなら、陛下から俺を解任する命令書をもらってこい」
「守備隊長風情が、管理局長である私に――」
「地下に残っている連中のうち、四十九人は俺の部下だ。その名前を一人も言えないおまえに、いまだけは指図されたくない」
「管理する立場の者間が、全職員の名前を覚えている必要はない」
「そうだな。だが、人数くらいは覚えておけ」
バルガスの顔が赤くなった。
言い返しかけたところへ、控え室の扉が勢いよく開く。
「失礼いたします!」
入ってきたのは、俺が吊り燭台から助けた侍女のマルタだった。
傷は白石の魔法で治ったらしく、手には包帯もない。ただ、顔から血の気が引き、息を切らしていた。
「マルタさん、負傷者の確認は終わりましたか」
「上にいた者の確認は、ほとんど終わりました。でも、あの……地下に、弟がいるんです」
声が震えていた。
「名前は?」
「ルカ・フェルナーです。十九歳で、三か月前から運搬夫として働いています。今朝も夜明け前に家を出ました。今日は西側の採掘場へ行くと言っていて……」
ガレンが名簿を引き寄せ、指で名前を追った。
途中で手を止め、最初からもう一度確認する。
「ルカ・フェルナーという名前はない」
「そんなはずありません。毎日働いています。昨日だって、給金が安いと文句を言いながら帰ってきました」
「所属する組は分かるか?」
「第三運搬組です。親方はボロスさんという、左の耳が半分ない方で……」
「ボロスも名簿にはいない」
ガレンの表情が険しくなる。
バルガスが大げさにため息をついた。
「娘、よく聞け。地下迷宮へ立ち入るには、管理局への登録が必要だ。名簿にない人間が中にいるはずはない」
「でも、弟はいます」
「おまえの弟が家族へ嘘をついていた可能性もあるだろう。若者が仕事へ行くふりをして、賭博場や娼館へ通う話など珍しくもない」
「弟は、そういうことができるほど器用ではありません」
「身内だからそう思いたいだけだ」
マルタは唇を震わせた。
泣くかと思ったが、彼女は泣かなかった。代わりにバルガスの前まで歩き、机を両手で叩いた。
「弟は馬鹿です」
控え室が静まった。
「計算も苦手ですし、酒を飲めば同じ話を三回します。働き始めて最初のお給金で、母に贈ると言って、母が大嫌いな黄色い襟巻きを買ってきました。私が地下は危ないからやめなさいと言っても、『姉さんのほうが王城で皿を割って殺されそうだ』と笑うような馬鹿です。でも、仕事へ行くふりをして遊び歩けるほど、上手に嘘をつける人ではありません」
「家族の思い込みを、救助活動の根拠にはできん」
「でしたら、弟が死んだとき、あなたは母に何と説明なさるのですか」
「なに?」
「名簿にいなかったから、あなたの息子は地下にはいませんでした。ですから、死んでもいませんとおっしゃるのですか」
バルガスは一瞬、言葉に詰まった。
それを誤魔化すように机の図面を整え、冷たい声で言う。
「無登録で立ち入ったのなら、規則を破った本人の責任だ」
「規則を破れば、助けなくてよいのですか」
「そうは言っていない」
「いま、そうおっしゃいました」
「感情的な言いがかりはやめろ!」
「感情的にもなります! 家族が下にいるんです!」
マルタの声が裏返った。
ガレンが二人の間へ入ろうとしたが、俺は片手で制した。
ここで「落ち着いてください」と言うのは簡単だ。だが、弟が生き埋めになっている人間へ落ち着けと言うのは、状況を受け止める面倒を相手へ押しつける行為でもある。
いま必要なのは、感情を消すことではない。
感情があるままでも、使える情報を拾うことだ。
「マルタさん。弟さんは、なぜ無登録で働いていたんですか」
彼女は机へ手をついたまま、荒い呼吸を整えた。
「登録料が払えなかったんです。父が亡くなって、母の薬代もかかっていて……正式に登録すると、最初の三か月は給金から保証金を引かれるそうです。ボロスさんの組なら、名前を出さなくても日払いで雇ってもらえると」
「一緒に働いていた人数は分かりますか」
「弟は、三十人くらいだと言っていました。王都の人だけではなく、南から来た出稼ぎの方もいると。寝る場所がないので、夜も地下に残っている人がいるそうです」
ガレンがバルガスを振り返った。
「聞いていないぞ」
「非正規の請負業者が、勝手に人を入れていたのだろう。管理局が把握できるはずがない」
「地下へ入る門には、おまえの部下がいる。三十人もの人間が毎日、見えない体にでもなって通ったのか?」
「門番が金を受け取っていた可能性もある」
「ずいぶん都合よく、部下だけが腐る組織だな。長はさぞ清廉なのだろう」
「ガレン、言葉には気をつけたまえ!」
「俺の部下は、いま地下で潰されかけている。気をつけてほしければ、まず人数を正直に話せ!」
二人がにらみ合う。
俺は三枚の図面を机へ並べた。
一枚目は管理局が持ってきた正式図面。羊皮紙もインクも新しく、通路が美しい直線で描かれている。
二枚目はガレンの部下が普段使っている巡回図。何度も折り畳まれ、汗と泥で汚れ、壁が崩れた場所や水の染み出す場所が細かく書き足されていた。
三枚目は、崩落現場から運び出された古い工事図面。端が破れ、血がついている。
「同じ迷宮の図面には見えませんね」
俺が言うと、ガレンが正式図面の一点を指した。
「ここだ。正式図面では直線だが、実際には大岩を避けて通路が曲がっている。五年前からそうなっている」
「直さないんですか」
「管理局へ三度報告した。返事は『図面に間違いはない』だ」
「現場が図面に合わせて曲がれというわけですか」
「管理局の連中なら、本気でそう考えていても驚かん」
バルガスが机を叩いた。
「地下迷宮は魔力の影響で形を変えることがある! 細かな差異をすべて反映するなど不可能だ!」
「なら、なぜ更新日だけは毎年新しくなっているんです?」
正式図面の右下には、今年の日付と管理局の印がある。
だが、書かれている通路は五年以上前のままだ。
「毎年調査したのではなく、日付だけ書き換えているように見えます」
「異世界から来たばかりの男が、我が国の書類について知ったような口を利くな」
「書類の嘘は、世界が違っても似たようなものですよ」
俺が答えると、背後から真田が小さく吹き出した。
振り返ると、召喚された四人が扉の近くに立っていた。
「何かおかしいですか」
「すみません。黒部さん、異世界に来たのに、会社で嫌な上司と話してるみたいだなと思って」
「真田さんは、こういう上司に会ったことが?」
「大学生なんで、本格的にはないです。でも、ラグビー部の監督がミスを全部一年生のせいにする人でした」
「それは上司ではなく、ただの卑怯者です」
「やっぱり容赦ないですね」
真田は苦笑したあと、真剣な顔で机の図面を見た。
「俺たちにも手伝わせてください」
「駄目です」
「まだ何をするかも言ってませんよ」
「地下へ行くつもりでしょう」
「俺は《聖剣》をもらいました。どれくらい使えるかは分かりませんけど、普通の人より力も強くなっているみたいです。さっきだって、鎧を着た兵士を簡単に動かせた。瓦礫をどかすくらいなら――」
「その聖剣で、支柱の耐荷重が分かりますか」
「分かりません」
「崩れた天井を、どこから除けば安全か判断できますか」
「それも分かりません。でも、行ってみなければ――」
「行ってみてから考える人間を、救助隊へ入れるわけにはいきません」
真田の顔がこわばった。
少し言いすぎたと思ったが、もう遅い。
「黒部さんは、自分だけ何でも分かっているつもりですか」
「そんなつもりはありません」
「でも、俺たちには何も分からないから黙っていろって言ってますよね。下で人が助けを待っているのに、安全な場所から見ていろと」
「今日手に入れたばかりの能力を、説明書もなしに地下で試すのは救助ではありません。実験です。実験台になるのは、あなたではなく、助けを待っている人たちです」
「じゃあ、黒部さんの《事故鑑定》はどうなんですか」
その言葉に、俺は黙った。
真田は引かなかった。
「黒部さんだって、今日手に入れたばかりでしょう。それなのに何度も使っている。頭を押さえて、立っているのもつらそうなのに、自分だけは大丈夫だと思ってるんですか」
「俺には事故調査の経験があります」
「異世界の魔法を使った事故調査の経験も?」
「それは……ありません」
「だったら同じじゃないですか」
腹が立った。
同時に、正しいとも思った。
正しい指摘ほど、腹が立つ。それはリディアと出会ってからも、何度となく思い知らされることになるのだが、このときの俺はまだ知らない。
「黒部さん」
白石が口を開いた。
「私たちを地下へ連れていきたくないのは分かります。足手まといになるかもしれないし、怖くないと言ったら嘘になります。でも、自分だけは壊れてもいいみたいな顔をされるのも困ります。私たちは、あなたを犠牲にするため一緒に呼ばれたわけではありません」
「別に、犠牲になるつもりは――」
「さっき鼻血が出ていました」
反射的に鼻の下へ触れる。
指先に赤いものがついた。
「これは、埃のせいです」
「私、《神癒》なんです。怪我をした人がつく嘘くらい分かります」
「今日手に入れた能力なのに、ずいぶん便利ですね」
「能力ではなく、看護師だから分かるんです」
「看護師?」
「はい。東京の病院で五年働いています。だから、まったく役に立たないとは思いません」
白石は迷いながらも、俺の目を正面から見た。
「何ができるか分からないなら、確認してください。役に立たないと決めつけて置いていくのではなく、何を任せられるか調べてください。それが事故を防ぐ人のやり方じゃないんですか」
今度こそ、反論できなかった。
俺は一度目を閉じ、鼻血を袖で拭った。
「分かりました。能力を確認します。ただし、地下へ入るかどうかは、その後で決めます」
「はい」
「白石さんは負傷者の選別と治療。回復魔法を使う前に、何を治せて何を治せないか確認してください。意識のある軽傷者から試し、いきなり重傷者へ使わない。滝沢さんは結界を出せる時間と広さを測る。岸本さんは……」
制服姿の少女、岸本澪が肩を震わせた。
「私は、火とか雷みたいな魔法が使えるそうです」
「地下では使わないでください」
「やっぱり役に立ちませんか」
「逆です。威力が分からない火や雷を、空気の薄い地下で使われると全員死ぬ可能性があります。上で瓦礫を砕く実験をして、使える強さを確認してください。ただし、粉々にはしない。運べる大きさに割るんです」
「……はい」
「怖いなら、怖いと言って構いません」
岸本はしばらく黙っていた。
やがて、俯いたまま小さな声で言う。
「怖いです。帰りたいし、地下にも行きたくない。でも、みんなが勇者って呼ぶから、怖いと言ったら駄目な気がして……」
「怖くない人間を救助現場へ入れるほうが危険です。怖ければ確認する。逃げ道を探す。それでいい」
「黒部さんも怖いんですか」
「ずっと怖いですよ」
「そう見えません」
「見せるのが下手なんです」
岸本は、少しだけ笑った。
「真田さんは、地上で瓦礫の運搬をお願いします。力が本当に強くなっているなら、地下へ入るより多くの人を助けられます」
「俺も下へ行きたいと言ったら?」
「止めます」
「殴ってでも?」
「四十一歳に、ラグビー部の若者を殴らせないでください。たぶん俺の手首が折れます」
「そこは現実的なんですね」
真田は納得し切れない顔をしていたが、最後にはうなずいた。
「分かりました。ただ、黒部さんが倒れたら、俺が勝手に止めますからね」
「勝手な行動は困ります」
「お互い様です」
その言い方に、白石と岸本が笑った。
ほんの一瞬だが、張り詰めていた空気が緩む。
その間に、ガレンの部下がひしゃげた兜を持ってきた。
「隊長。二次崩落の前に上がってきた兵士の物です。本人は意識を失っていますが、第五休憩所の近くで落石を受けたようです」
兜の右側が大きく潰れ、隙間に白い石粉が詰まっている。
俺は手を伸ばしかけ、白石を見た。
「触っても?」
「私に聞くんですか」
「一応」
「使った直後に気分が悪くなったら、すぐ言ってください。勝手に我慢したら、次から触らせません」
「俺の能力なんですが」
「患者はみんなそう言います。自分の体だから好きにさせろと。好きにして壊したあと、治すのは他人なんです」
「面倒な人ですね」
「黒部さんにだけは言われたくありません」
白石の許可を得て、兜へ触れる。
衝撃とともに、暗い通路の光景が流れ込んできた。
走る兵士。
背後から追ってくる崩壊音。
壁際に身を寄せる作業員たち。
誰かが叫ぶ。
――正規坑道は塞がった! 第三採掘場を抜けろ!
――あそこは図面にないぞ!
――図面より、目の前の穴を信じろ!
鼻を刺す油の臭い。足首まで溜まった冷たい水。右から吹いてくるわずかな風。
そして、兜へ石が当たる直前、壁に描かれていた白い矢印。
視界が戻る。
俺は机へ両手をつき、吐き気をこらえた。
「正規の階段は使えません。第三採掘場から回り込める道があります。水が流れ込んでいますが、風もある。まだ完全には塞がっていない」
ガレンが図面をのぞき込む。
「第三採掘場? そんな区画はないぞ」
「現場では、そう呼んでいました」
「待て」
ガレンが巡回図を指でたどり、南西側の余白で止めた。
「ここに、昔の排水路がある。四年前に閉鎖されたはずだが、この先なら第五休憩所の裏へ出られる」
「この正式図面では、その排水路が途中で切れています」
「管理局が埋めたと言っていたからな」
俺とガレンは、同時にバルガスを見た。
「何だ、その目は」
「排水路を本当に埋めましたか」
「当然だ。閉鎖工事は完了している」
「誰が確認したんです?」
「担当部署だ」
「担当者の名前は?」
「いちいち覚えておらん!」
「便利な組織ですね。何を聞いても、あなた以外の誰かが決めている」
「貴様……!」
そのとき、控え室の隅から、かすかな金属音が聞こえた。
ガレンが振り返り、壁際へ走る。
そこには真鍮製の細い管が通っていた。彼は管の蓋を外し、耳を当てる。
音は途切れ途切れだった。
短く三回。間を置いて、長く一回。さらに短く四回。
「地下の伝声管ですか」
「ああ。非常時は叩いて、数字を送る。古すぎて使えないと思っていたが……静かにしてくれ」
全員が息を潜める。
管の向こうから、再び音が届いた。
三。四。西。
ガレンが机の紙へ数字を書きつける。
「西側区画。生存者、三十四名」
マルタが両手を口元へ当てた。
「ルカ……」
続いて、別の打音が響く。
ガレンの顔色が変わった。
「水位上昇。空気、悪化。猶予――」
最後の数字を聞き取ろうと、管へ耳を押しつける。
だが、伝声管の向こうで大きな雑音が響き、通信は途切れた。
「三十四名だと?」
バルガスが呟いた。
「あり得ん。名簿の人数とは合わない」
「名簿にはいない人たちです」
マルタが男をにらんだ。
ガレンは正式図面の西側を指した。
そこには通路も、採掘場も、休憩所もない。ただ何も描かれていない空白だけが広がっている。
「この区画へ通じる道は?」
俺が尋ねると、バルガスは唇を引き結んだ。
「存在しない区画へ通じる道など、あるはずがない」
「それでは、地下から返事をした三十四人は何なんです。全員で壁の中に隠れているとでも?」
「知らん。伝声管の故障だ。音を数字と聞き間違えただけかもしれない」
「では、第三採掘場という名前にも心当たりはない?」
「ないと言っている!」
声が大きすぎた。
知らない人間の怒り方ではない。
知られたくない人間の怒り方だった。
俺は正式図面の空白と、閉鎖されたはずの排水路を見比べた。
「ガレンさん。救助隊は何人まで絞れますか」
「俺を含めて六人。これより減らせば、負傷者を運べない」
「その六人に俺を加えてください。正規階段ではなく、排水路から第三採掘場へ入ります」
「閉鎖されているぞ」
「本当に閉鎖されているなら、そこで引き返します。ただし、閉鎖されたことになっているだけなら――」
俺は図面の空白を指で叩いた。
「この先に、存在しては困る採掘場があります」
存在しない区画。
名簿にいない三十四人。
埋められたはずなのに、風と水が通る排水路。
地下に閉じ込められた人々を救うためには、まず王国が隠した穴へ入らなければならなかった。




