表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/32

第8話「公認彼女と佐伯」

翌朝。

教室に入った瞬間、昨日とは違う空気が流れているのがわかった。


「白石さん、昨日すごかったよな……」

「早見くん、マジで勝ち組じゃん」

「いやでも、あれは本気だったよな……」


ざわつきはあるが、どこか祝福ムードが混じっている。


僕――早見孝介は席に着きながら、

昨日の乃愛の言葉を思い出していた。


「幼馴染としてじゃなくて……

 一人の男の子として、好きです」


胸が熱くなる。


そのとき、教室の扉が開いた。


白石乃愛が入ってくる。


昨日よりも自然体で、

でも僕を見ると、ほんの少しだけ頬を赤くした。


その一瞬を、クラスは見逃さない。


「おはよう、孝介」


乃愛は小さく、でもはっきりと僕に挨拶した。


周囲がざわつく。



そのとき、鋭い視線を感じた。


クラスの中心にいる男子――

佐伯が、僕を睨んでいた。


昨日、乃愛が僕を庇ったときから、

佐伯の態度は明らかに変わっていた。


(……面倒なことになりそうだな)


そう思った瞬間、佐伯が立ち上がった。


「早見。ちょっと来い」


低い声だった。


乃愛が不安そうに僕の袖をつまむ。


「孝介……」


「大丈夫。すぐ戻るよ」


僕は乃愛に微笑み、佐伯の後を追った。


屋上に着くと、佐伯は振り返り、

怒りを隠そうともしなかった。


「……お前、本気で白石さんと付き合うつもりか?」


「つもりっていうか……好きだから」


そう答えると、佐伯の拳が震えた。


「ふざけんなよ。

 白石さんは……俺がずっと好きだったんだ」


その言葉には、悔しさと嫉妬が混じっていた。


「でも、乃愛が選んだのは俺だ。

 それは……俺じゃなくて、乃愛が決めたことだろ」


佐伯は歯を食いしばった。


「……認めねぇからな。

 お前なんかに、白石さんは渡さねぇ」


その言葉を残し、佐伯は屋上を出ていった。


嫌な予感が胸に残った。


放課後。

乃愛は僕を見つけると、自然に隣へ並んだ。


「孝介……佐伯くん、何か言ってた?」


「まぁ、ちょっとな。でも大丈夫だよ」


乃愛は心配そうに僕の袖をつまむ。


「……ごめんね。

 私のせいで、孝介が嫌な思いしてる」


「乃愛のせいじゃない。

 俺が乃愛を好きになったんだから、当然だよ」


乃愛は目を丸くし、そして――

ふわりと笑った。


「……孝介、優しいね」


その笑顔だけで、胸が熱くなる。


家の近くの分かれ道。

乃愛は立ち止まり、僕の方へ向き直った。


「ねぇ、孝介」


「ん?」


乃愛は少しだけ頬を赤くしながら言った。


「私たち……その……

 ちゃんと“付き合ってる”ってことで、いいの?」


その言葉に、心臓が跳ねた。


「もちろん。

 俺は……乃愛と付き合いたい」


乃愛は目を潤ませながら、嬉しそうに笑った。


「……うん。

 私も、孝介と付き合いたい」


その瞬間、

僕たちは正式に恋人になった。


乃愛は僕の手をそっと握り、

指を絡めてきた。


「これからも……ずっと隣にいてね」


「当たり前だろ」


乃愛は幸せそうに微笑んだ。


しかし――

その背後の電柱の影から、

佐伯がこちらを睨んでいることに、僕たちは気づかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ