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第47話「涙の理由を知っているのは、君だけ」

公式戦から一夜明けた朝。

僕――早見孝介は、

布団から起き上がる気力がなかった。


(……負けた)


あの瞬間が何度も頭に浮かぶ。


・最後のシュート

・指先で触れられたボール

・ポストに当たって外れた音

・試合終了の笛


(俺が決めてれば……勝てたのに)


胸の奥がずっと重い。


スマホが震えた。

乃愛からのメッセージ。


孝介、おはよう。

今日、部活あるけど……無理しないでね。

来られたらでいいから。


優しい言葉なのに、

胸が痛んだ。


(乃愛に……合わせる顔がない)


夕方。

重い足を引きずりながらグラウンドへ向かうと――


「孝介……!」


乃愛が駆け寄ってきた。


昨日と同じように、

マネージャーバッグを抱えて。


でも、

その目は僕の表情を見た瞬間に曇った。


「孝介……

 すごく落ち込んでる顔してる……」


「……まぁな」


「昨日のこと、まだ気にしてるの?」


「当たり前だろ。

 俺が決めてれば……勝てたんだ」


乃愛は首を振った。


「違うよ」


乃愛は僕の前に立ち、

真剣な目で言った。


「孝介、昨日ね……

 私、ずっと見てたよ」


「……」


「孝介、最後まで走ってた。

 苦しくても、諦めなかった。

 あのシュートだって……

 すっごく綺麗だったよ」


胸が熱くなる。


「結果は負けちゃったけど……

 孝介の頑張りは、

 絶対に無駄じゃないよ」


乃愛は胸の前で手をぎゅっと握った。


「ねぇ孝介……

 私ね、昨日の試合……

 負けたのに、すごく誇らしかったの」


「……なんでだよ」


「だって……

 孝介が一番輝いてたから」


その言葉は、

胸の奥に刺さっていた棘を

そっと抜いてくれるようだった。


気づけば、

視界が滲んでいた。


「……悔しいんだよ」


「うん」


「勝ちたかった……

 乃愛に……勝つところ見せたかった」


乃愛はそっと僕の手を握った。


「見せてくれたよ」


「……え?」


「勝ち負けじゃなくてね。

 孝介がどれだけ頑張ってるか、

 どれだけ本気でサッカーしてるか……

 全部、私に見せてくれた」


乃愛は優しく微笑んだ。


「だからね……

 泣いてもいいよ。

 悔しいって思えるのは、

 それだけ本気だった証拠だから」


その瞬間、

涙がこぼれた。


乃愛は何も言わず、

そっと僕の背中に手を添えてくれた。


練習が終わり、

夕暮れの帰り道。


乃愛がぽつりと言った。


「ねぇ孝介……

 次の大会、いつだっけ?」


「……来年の公式戦」


「そっか。

 じゃあ……

 そこに向けて、また一緒に頑張ろうね」


「一緒に……?」


「うん。

 孝介が頑張るなら、

 私も全力で支えるよ」


乃愛は僕の手を握りながら続けた。


「だって……

 孝介のこと、大好きだから」


胸の奥がじんわり温かくなる。


「……ありがとう、乃愛。

 次は……絶対勝つよ」


乃愛は嬉しそうに微笑んだ。


「うん。

 そのときも……

 私が一番近くで応援するから」


夕暮れの風が、

二人の影を優しく寄り添わせた。

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