第45話「公式戦へ ― 強くなる理由が、ここにある」
夏合宿が終わった翌日。
僕――早見孝介は、
グラウンドに立った瞬間に気づいた。
(……体が軽い)
疲労はあるはずなのに、
足が自然と前に出る。
「早見、動きキレてるな」
「合宿で覚醒したか?」
先輩たちが笑いながら声をかけてくる。
その横で――
「孝介、今日も調子いいね!」
乃愛がマネージャーバッグを抱えて駆け寄ってきた。
「乃愛の声があると、頑張れるんだよ」
「えっ……そ、そんな……!」
乃愛は顔を赤くしながら、
嬉しそうに笑った。
練習が始まると、
監督が僕を呼び止めた。
「早見。
お前には今日から別メニューをやらせる」
「別メニュー……?」
「公式戦のスタメンとして、
走力と判断力をさらに伸ばす。
お前ならできる」
胸が熱くなる。
(……認められてる)
乃愛が心配そうに近づいてきた。
「孝介、大丈夫……?
別メニューって、きつそう……」
「大丈夫。
乃愛が見ててくれるなら、頑張れる」
乃愛は胸の前で手をぎゅっと握った。
「……じゃあ、ずっと見てるね」
別メニューは想像以上にきつかった。
・インターバル走
・瞬発力ダッシュ
・判断トレーニング
・1対1の突破練習
汗が止まらず、
足が重くなっていく。
でも――
「孝介、ファイト!!
あと少しだよ!!」
乃愛の声が響く。
(……聞こえてるよ)
その声があるだけで、
足が自然と前に出る。
練習が終わると、
乃愛がタオルと水を持って駆け寄ってきた。
「孝介、お疲れさま……!
今日の動き、本当にすごかったよ」
「ありがとう。
乃愛が応援してくれるからだよ」
乃愛は少しだけ迷ってから、
僕の手をそっと握った。
「……ねぇ孝介。
私ね、最近気づいたの」
「何に?」
乃愛は胸に手を当てて、
少し照れながら言った。
「孝介が頑張ってる姿を見ると……
私まで嬉しくなるの。
“もっと支えたい”って思うの」
(乃愛……)
「だからね……
公式戦、絶対勝ってほしい。
孝介が輝くところ、見たいから」
その言葉は、
どんなエナジードリンクよりも効いた。
夕暮れの帰り道。
蝉の声が響く中、
乃愛がぽつりと言った。
「ねぇ孝介……
公式戦、緊張する?」
「少しはな」
「でも……
孝介なら絶対大丈夫だよ」
乃愛は僕の手を握りながら続けた。
「だって……
私が一番近くで見てきたもん。
孝介がどれだけ頑張ってるか」
胸が熱くなる。
「乃愛。
公式戦……勝つよ。
絶対に」
乃愛は嬉しそうに微笑んだ。
「うん……
私、ずっと応援してるから」




