表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/61

第44話「夏合宿最終日」

夏合宿3日目の朝。

僕――早見孝介は、

布団から起き上がると同時に全身の筋肉が悲鳴を上げた。


(……やばい。足が棒だ)


でも、

廊下から聞こえる声が疲れを吹き飛ばす。


「孝介、おはよう……!」


乃愛がマネージャーバッグを抱えて、

少し眠そうな目で立っていた。


「乃愛、眠れてるか?」


「うん……孝介が頑張ってるから、

 私も頑張らなきゃって思って……」


(……ほんと、支えられてるな)


乃愛の笑顔を見るだけで、

体が自然と動き出す。


最終日のメニューは、

監督が「地獄の総仕上げ」と呼ぶほどのハードさだった。


「ラストだぞ!

 ここで手を抜くな!!」


炎天下の中、

走って、走って、走りまくる。


「孝介、ファイト!!

 あと少しだよ!!」


乃愛の声が響く。


汗で視界が滲んでも、

その声だけははっきり届いた。


(乃愛が見てる……

 だから、止まれない)


午後は合宿最後の紅白戦。


「早見、今日はお前が中心だ。

 チームを動かしてみろ」


監督の言葉に、

胸が熱くなる。


試合が始まると、

体は疲れているはずなのに、

不思議と軽かった。


「早見、ナイスラン!」

「パス出せ!」

「シュートいけ!!」


そして――


ドンッ!


ゴールネットが揺れた。


「孝介ーーー!!

 すごいよーー!!」


乃愛の声が、

グラウンド中に響いた。


(……聞こえてるよ)


その声が、

僕の背中を押してくれる。


試合後。

監督が僕を呼び止めた。


「早見」


「はい」


「お前……

 この三日間で一番伸びたぞ」


「……!」


「走力、判断力、メンタル。

 全部が一段階上がった。

 次の公式戦、スタメンでいく」


胸が熱くなる。


「ありがとうございます!」


監督は続けた。


「白石の存在も大きいな。

 あの子、いいマネージャーだ」


(……やっぱり見てたんだ)


合宿所に戻る前。

乃愛がそっと僕の袖を引いた。


「孝介……

 ちょっとだけ、歩かない?」


海沿いの道を並んで歩く。


夕日が海に沈み、

風が心地よく吹き抜ける。


「孝介……

 今日のゴール、すっごくかっこよかったよ」


「乃愛の声があったからだよ」


乃愛は照れながら、

胸の前で手をぎゅっと握った。


「ねぇ……

 合宿、終わっちゃうね」


「そうだな」


「なんか……

 ちょっと寂しいね」


乃愛は少しだけ迷ってから、

僕の手をそっと握った。


「……孝介と一緒にいられる時間、

 もっと欲しいなって思っちゃうの」


(……乃愛)


僕は乃愛の手を握り返した。


「帰っても、ずっと一緒だよ。

 乃愛がそばにいてくれるなら、

 俺はもっと強くなれる」


乃愛は嬉しそうに微笑んだ。


「……私もだよ。

 孝介のそばにいたい」


夕暮れの海風が、

二人の距離をさらに近づけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ