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第42話「夏合宿1日目」

夏休み中盤。

サッカー部の 2泊3日の夏合宿 当日。


僕――早見孝介は、

大きな荷物を肩にかけて学校に向かっていた。


(乃愛も一緒に来るんだよな……

 なんか、嬉しいな)


昨日の夏祭り。

花火の下で交わした初めてのキス。

その温度がまだ胸に残っている。


校門に着くと――


「孝介、おはよう……!」


乃愛がマネージャーバッグを抱えて立っていた。

浴衣のときとは違うけど、

今日はポニーテールで、

スポーティな格好がやけに似合っていた。


「おはよう、乃愛」


「えへへ……

 今日から三日間、よろしくね」


その笑顔だけで、

合宿の疲れなんて全部吹き飛びそうだった。


部員たちがバスに乗り込む。


「白石、こっち空いてるぞー!」

「マネージャー席確保しといた!」


先輩たちが声をかけてくれるが――


「孝介の隣、座ってもいい……?」


乃愛が小さく聞いてきた。


「もちろん」


乃愛は嬉しそうに座り、

シートベルトを締めながら言った。


「なんか……

 昨日のこと思い出しちゃうね……」


(……俺もだよ)


バスが動き出すと、

乃愛の肩が少し触れた。


そのたびに胸が熱くなる。


合宿所に着くと、

監督の声が響いた。


「よーし!

 今日から三日間、走り込みだ!!

 覚悟しろ!!」


「うわぁ……始まった……」

「死ぬ……」

「白石、倒れたら水頼む!」


「は、はいっ!」


乃愛は慌てながらも、

すぐに準備を始める。


(乃愛、頼もしいな)


練習が始まると、

炎天下の中での走り込みが続いた。


「孝介、がんばって!!

 あと少しだよ!!」


乃愛の声が響く。


その声があるだけで、

足が自然と前に出る。


練習の合間。

乃愛が冷えたタオルと水を持って駆け寄ってきた。


「孝介、お疲れさま……!

 すっごく頑張ってたよ!」


「乃愛の声、聞こえてたよ。

 あれで走れた」


「えっ……ほんと……?」


乃愛は顔を赤くして、

タオルを僕の首に当ててくれた。


「昨日の……キスのこと……

 思い出しちゃって……

 なんか……胸がドキドキするの……」


「俺もだよ」


乃愛は嬉しそうに微笑んだ。


夕食後。

部員たちは大広間で騒いでいた。


「白石、マッサージ頼む!」

「氷持ってきてー!」

「白石がいると助かるわ!」


「は、はいっ! すぐ行きます!」


乃愛は忙しそうに動き回っていた。


(……頑張りすぎてないかな)


僕はそっと乃愛の腕を引いた。


「孝介……?」


「少し休めよ。

 無理すんな」


乃愛は少し驚いたあと、

ふわっと笑った。


「……ありがとう。

 孝介が言ってくれると、

 すごく安心する」


二人で廊下のベンチに座る。


外からは虫の声と、

遠くの波の音が聞こえていた。


「ねぇ孝介……

 合宿、一緒に来られてよかった」


「俺もだよ」


乃愛は少しだけ迷ってから、

僕の手をそっと握った。


「……昨日のキス、

 忘れられないんだ」


「俺もだよ」


乃愛は顔を赤くしながら、

小さく笑った。


「明日も……がんばってね。

 私、ずっと応援してるから」


その言葉は、

どんな栄養ドリンクよりも効いた。

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