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第39話「夏休みのはじまり」

練習試合での活躍から数日。

僕――早見孝介は、

毎日の練習が前よりずっと楽しく感じていた。


(乃愛がそばにいるだけで、こんなに違うんだな)


練習の合間に水を飲むと、

乃愛がすぐに駆け寄ってくる。


「孝介、お疲れさま!

 今日も走りすごかったよ!」


「乃愛の声、ちゃんと聞こえてるよ」


「えっ……!

 そ、そんな……!」


乃愛は顔を赤くしながら、

ボトルを差し出してくれる。


その仕草が、

毎日の癒しになっていた。


乃愛は日を追うごとに、

マネージャーとしての動きが洗練されていった。


・選手の状態を見て水を渡すタイミング

・監督の指示をメモして伝える

・怪我の応急処置の準備

・練習メニューの把握


「白石、今日も完璧だな」

「ほんと助かってるよ」

「お前、もうプロのマネージャーだろ」


先輩たちに褒められるたび、

乃愛は嬉しそうに笑う。


(乃愛……本当にすごいよ)


そんな姿を見ると、

僕ももっと頑張りたいと思えた。


終業式の前日。

教室は夏休み前の浮かれた空気に包まれていた。


「海行こうぜ!」

「花火大会どうする?」

「夏祭り、今年もやるらしいぞ!」


そんな声が飛び交う中、

乃愛がそっと僕の席に来た。


「ねぇ孝介……

 夏休み、部活いっぱいあるけど……」


「うん?」


乃愛は胸の前で手をぎゅっと握った。


「それでも……

 時間あったら……

 またデートしたいな……」


(……可愛い)


「もちろん。

 夏休み、いっぱい会おうな」


乃愛は嬉しそうに微笑んだ。


夏休み前最後の練習は、

どこか特別な空気があった。


「夏休みは地獄の走り込みだぞー!」

「覚悟しとけよ!」

「白石、倒れたら水頼むな!」


「は、はいっ!」


乃愛は笑いながら返事をする。


練習が終わる頃には、

空はオレンジ色に染まっていた。


「孝介、今日もお疲れさま……!」


「乃愛もな。

 毎日ありがとう」


乃愛は照れながら、

タオルを差し出してくれた。


帰り道。

蝉の声が響く中、

乃愛がぽつりと言った。


「ねぇ孝介……

 夏休みって、なんか特別だよね」


「そうだな」


「だって……

 いつもより長く一緒にいられるし……

 いろんなことできるし……」


乃愛は少しだけ迷ってから、

僕の手をそっと握った。


「……孝介と過ごす夏休み、

 すごく楽しみなんだ」


「俺もだよ」


乃愛は嬉しそうに微笑んだ。


「じゃあ……

 夏休み、いっぱい思い出作ろうね」


「もちろん」


夕暮れの風が吹き抜け、

二人の影が寄り添うように伸びていった。

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