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第38話「練習試合当日」

日曜日の朝。

私は――白石乃愛は、

マネージャーバッグを肩にかけながら深呼吸した。


(今日は孝介の試合……

 私、ちゃんと支えられるかな)


昨日の夜、孝介から届いたメッセージ。


孝介:

明日、乃愛の声があれば頑張れる。


その言葉が胸の奥でずっと響いている。


(……絶対、力になりたい)


グラウンドに着くと、

選手たちはすでにアップを始めていた。


私は急いで準備に取りかかる。


・水分補給のボトルを並べる

・テーピングの確認

・ビブスの整理

・応急セットのチェック


「白石、今日も頼むな!」

「水の準備助かる!」


先輩たちの声が飛ぶ。


「はいっ! 任せてください!」


(よし……大丈夫。落ち着いてやればできる)


そして――

孝介がこちらを見て、軽く手を振ってくれた。


「乃愛、今日よろしくな」


「うん……!

 孝介、全力で応援するから!」


胸が熱くなる。


試合が始まる。


私はベンチ横で、

ボトルを持ちながら選手たちを見守る。


孝介が走るたび、

相手をかわすたび、

胸がぎゅっとなる。


「孝介ーーー!!

 ナイスラン!!」


「早見、いいぞー!」

「白石、声出てるな!」


先輩たちが笑うけど、

そんなの気にしていられない。


(孝介……もっと走れるよ……!

 もっといける……!)


後半。

スコアは 0 - 0。


残り時間はわずか。


相手のパスミスから、

味方がボールを奪う。


「早見、前!!」


孝介が走り出す。


私は思わず叫んだ。


「孝介ーーー!!

 信じてるよーー!!」


その瞬間、

孝介が振り向いた気がした。


(届いた……?)


孝介は相手をかわし、

ゴール前へ。


右足を振り抜く。


ゴールネットが揺れた。


「やったぁぁぁ!!

 孝介ーーー!!」


気づけば私は涙を流していた。


試合が終わり、

孝介がベンチに戻ってくる。


「乃愛……見てたか?」


「見てたよ……!

 すごかった……!

 孝介、本当に……かっこよかった……!」


涙が止まらない。


孝介は少し照れながら笑った。


「乃愛の声、聞こえてたよ。

 あれで決められた」


「……ほんと?」


「ほんとだよ」


胸が熱くなり、

また涙がこぼれた。


監督が孝介の肩を叩く。


「早見。

 今日の動きは文句なしだ。

 次の公式戦、スタメンでいく」


「……っ!」


孝介の目が輝く。


私はその横で、

胸がいっぱいになった。


(孝介……すごいよ……

 私、こんなに誇らしい気持ちになるなんて……)


帰り道。

孝介と並んで歩きながら、

私はそっと言った。


「ねぇ孝介……

 今日ね……

 マネージャーやってて、すごく幸せだった」


「乃愛……」


「孝介が頑張ってる姿を近くで見られて……

 その力になれるのが……

 すごく嬉しいの」


孝介は優しく微笑んだ。


「乃愛がそばにいてくれると、

 ほんとに強くなれるんだよ」


「……私もだよ。

 孝介の頑張る姿を見ると、

 もっと支えたいって思うの」


夕暮れの風が、

二人の距離をさらに近づけた。

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