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第37話「走り出す想い」

水族館デートの翌日。

放課後のグラウンドは、いつもよりざわついていた。


「早見、昨日の試合の動画見たぞ!」

「お前、マジで走り速いな!」

「監督も褒めてたぞ!」


僕――早見孝介は、

部室に入った瞬間から声をかけられた。


(……なんだ? 今日はやけに騒がしいな)


そこへキャプテンが近づいてきた。


「早見、ちょっと来い」


「はい?」


キャプテンは真剣な顔で言った。


「監督が、お前を“次の練習試合のスタメン候補”に挙げてる」


「……え?」


胸が跳ねた。


「走力、判断力、メンタル。

 全部評価されてる。

 このまま伸びれば、レギュラーも狙えるぞ」


(……マジか)


その瞬間――

フェンスの外から、

乃愛がこちらを見ているのに気づいた。


嬉しそうに、

でもどこか誇らしげに。


(……乃愛)


練習が始まると、

乃愛はいつも以上にテキパキ動いていた。


・水分補給の準備

・ビブスの管理

・メニューの確認

・怪我の応急セットのチェック


「白石、今日キレッキレだな」

「動きがプロのマネージャーみたいだぞ」

「やっぱり早見の影響か?」


乃愛は顔を赤くしながらも、

嬉しそうに笑っていた。


(……乃愛、頑張ってるな)


そんな乃愛の姿を見ると、

自然と力が湧いてくる。


練習後。

監督が僕を呼び止めた。


「早見。

 お前、最近いい顔してるな」


「え?」


「走りに迷いがない。

 判断も速くなった。

 何かあったか?」


(……そりゃあ、デートしたからとは言えないよな)


「まぁ……色々と」


監督はニヤッと笑った。


「いいことだ。

 中学生はそうでなくちゃな」


(……バレてる?)


帰り支度をしていると、

乃愛がそっと近づいてきた。


「孝介……今日、すごかったよ」


「そうか?」


「うん……

 監督さんに褒められてたし、

 先輩たちも“早見すげぇ”って言ってたし……」


乃愛は胸に手を当てて、

少し照れながら言った。


「なんかね……

 孝介が褒められると、

 私まで嬉しくなるの」


「乃愛……」


「だって……

 孝介の頑張ってる姿、

 ずっと見てきたから……」


その言葉に、胸が熱くなる。


そこへ、

七瀬真凛がひょこっと顔を出した。


「おーい、二人とも」


「真凛ちゃん?」


真凛はにやっと笑った。


「早見くん、今日めっちゃ調子よかったね。

 理由は……まぁ、言わなくてもわかるけど」


「な、なんだよ」


「恋すると強くなるって、ほんとなんだね」


乃愛は顔を真っ赤にした。


「ま、真凛ちゃんっ……!」


真凛は肩をすくめた。


「でもね、白石さん。

 あなたも今日すごかったよ。

 マネージャーとしての動き、完璧だった」


「えっ……ほんと?」


「うん。

 “好きな人を支えたい”って気持ちが、

 ちゃんと仕事に出てた」


乃愛は胸に手を当てて、

嬉しそうに微笑んだ。


帰り道。

夕暮れの中を歩きながら、

乃愛がぽつりと言った。


「ねぇ孝介……」


「ん?」


「孝介が頑張ってる姿を見るとね……

 私ももっと頑張りたいって思うの」


「乃愛……」


「だから……

 これからもずっと、そばで応援したい」


僕は乃愛の手をそっと握った。


「俺もだよ。

 乃愛がそばにいてくれると、

 もっと強くなれる気がする」


乃愛は嬉しそうに微笑んだ。


「じゃあ……

 二人で強くなろうね」


夕暮れの風が、

二人の未来を優しく照らしていた。

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