第25話「初めての部活 ― それぞれの選択」
中間テストが終わった翌週。
教室はどこか浮かれた空気に包まれていた。
「終わったー!」
「もう勉強したくねぇ!」
「部活体験期間だってよ!」
僕――早見孝介は、
答案返却の紙を見ながら小さく息をついた。
(……よかった。全部平均以上だ)
乃愛の両親に胸を張れる結果だった。
「孝介、お疲れさま!」
白石乃愛が駆け寄ってくる。
「テスト、どうだった?」
「まぁまぁかな。乃愛は?」
「えへへ……がんばったよ」
乃愛は嬉しそうに笑った。
担任が黒板に大きく書く。
『部活体験期間:1週間』
「一年生は、入りたい部活を見つけるチャンスだぞー。
運動部でも文化部でも、好きなところに行っていい」
クラスがざわつく。
「サッカー部行く?」
「バスケも楽しそう」
「帰宅部も魅力的だよな」
乃愛が僕の袖をつまんだ。
「孝介……
サッカー部、体験するんだよね?」
「うん。
昔ちょっとやってたし、興味あるからな」
乃愛は一瞬だけ視線を落とした。
「そっか……」
放課後。
グラウンドではサッカー部が準備をしていた。
「お、体験の一年か?」
「早見くんだよな。体育祭のリレー見たぞ!」
先輩たちが気さくに声をかけてくれる。
「よろしくお願いします」
僕は軽く頭を下げ、
ボールを受け取った。
(……久しぶりだな)
パス練習、ドリブル、シュート。
体が自然に動く。
「早見、うまいじゃん!」
「経験者か?」
「少しだけです」
汗が心地よかった。
校舎の影から、
乃愛がグラウンドをじっと見つめていた。
友達が声をかける。
「乃愛、どうするの?
マネージャー体験、行ってみる?」
「……うん。
行ってみたい、かも」
「え、珍しい!
乃愛って運動部興味なかったよね?」
乃愛は小さく首を振った。
「違うの……
孝介がサッカー部に入るなら……
私、そばで支えたいなって……」
友達はにやにや笑った。
「なるほどね〜。
“好きな人を支えたい”ってやつだ!」
「ち、違っ……!
いや……違わないけど……!」
乃愛は顔を真っ赤にした。
練習が終わり、
僕はタオルで汗を拭きながら校舎へ戻った。
すると――
「孝介!」
乃愛が駆け寄ってきた。
「サッカー部、どうだった?」
「楽しかったよ。
先輩たちも優しいし、雰囲気もいい」
「そっか……よかった……!」
乃愛は胸を撫でおろした。
「乃愛は?
どこ体験するんだ?」
乃愛は少しだけ迷ってから言った。
「……サッカー部のマネージャー、
体験してみようかなって」
「え?」
「だ、だって……
孝介がサッカー部に入るなら……
私、そばで応援したいし……
支えたいし……」
乃愛は指を絡めながら、
恥ずかしそうに続けた。
「……孝介の頑張ってる姿、
一番近くで見たいの」
胸が熱くなる。
「乃愛……
そんなふうに思ってくれてたのか」
「う、うん……」
僕は乃愛の頭をそっと撫でた。
「ありがとう。
乃愛がいてくれたら、
どんな練習でも頑張れるよ」
乃愛は顔を真っ赤にして、
僕の胸に額を寄せた。
「……じゃあ、がんばるね。
マネージャー、やってみる」
帰り道。
夕焼けの中、乃愛が言った。
「孝介……
部活って、なんか青春って感じだね」
「そうだな。
これから忙しくなるかもな」
「うん……でもね」
乃愛は僕の手をそっと握った。
「忙しくても……
孝介のそばにいたい」
「俺もだよ」
二人の影が寄り添うように伸びていく。
部活という新しい日常が、
二人の関係をまた一歩前へ進めていく。




